第4話 死中に活を求める
時間があったので、もう1話書きました
「うぎゃー、く、苦しー」
「すや~」
時は夜。
俺は、洞窟の手前で、彼女の抱き枕にされていた。
絡みついた両腕が、アナコンダのごとく俺を締め上げていた。
背中に感じる、ぽよぽよとした感触。
安らかな吐息。
ほのかに感じる、甘酸っぱい香り。
締め上げられて呼吸ができないことを除けば、まるで天国のようだったろう。
あ……骨折れた。
途端に、呼吸が楽になったように感じた。
ああ、このまま死ぬのか俺。
――おーい、孫や迎えに来たぞーい。
「クソジジイがぁぁぁ! てめえのせえでこうなってんだぞ、帰れ! 地獄に帰れ!」
――……ぐすん。
じいさんは、涙を浮かべて地獄に戻った。
あんな奴と同じとこに、行ってたまるかってんだ!
「【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】! 魔力が尽きるか、体力が尽きるか、勝負だ! 絶対、朝日を拝んでやるからな【ヒール】【ヒール】――――」
そして、夜が明けた。
勝った、たぶん自分とか運命って奴に。
――プチュン
目玉をえぐられた、何も見えない。
「今から着替えるからー」
「口で言えよ! どうすんだよ、ドラゴンと戦うんだろうこれからさあ!」
「あんたを餌にすれば、私は無傷で済むじゃない。餌に、視力が必要なの?」
「てめえ何様だぁ! 人の命を何だと思ってんだ!」
「人間を特別扱いしないで! 牛や豚だって生きてるでしょう、友達じゃない生き物なんてみんな餌よ!」
「……それもそうだな、見ず知らずの奴が死のうが生きようがどうだっていいよな、俺もそう思うよ」
彼女への怒りが、スッと消えていくようだった。
ニュース番組で、誰々が死んだ、何々が殺されたとか激しくどうでもいい。
旅行先で人が困ってようが、俺の日常に関係ないから助ける必要もない。
彼女にとっては俺は他人だ、どうなろうと知ったこっちゃないはずだ。
異世界で美少女だからと、期待した俺がバカだったんだ。
「なあ、あんた、俺を餌にして本当にドラゴンに勝てるのか?」
「もち」
「本当にホントかぁ、予想より強かったら、数が多かったら、戦闘中に足が滑って動けなくなったら、その時はあんたもドラゴンの餌になるんだゼェィヒッヒ」
「確かに、絶対とは言えない……かも?」
よし、乗ってきた。
彼女は、俺を殺す気でいる。
だったらこっちも、全力で身を守らせてもらう。
作戦はこうだ。
彼女は俺を、囮にしか役に立たないと思っている。
だったら、俺を生かしておく利点をアピールすればいい。
「そうだ、絶対なんてない。だがチームで戦えば、アクシデントで死ぬ確率はずっと少なくなるはずだ。ライオンだって、1頭を群れで襲うだろう」
「でもあんた、全然弱いじゃない」
「そこで提案なんだが、あんたに俺を鍛えてほしい。昨日みたいにボッコボコにされまくれば、俺みたいなザコでもちょっとはましに――」
――グシャメキャァ
「ねえ今言ったよね、殴っていいって言ったよね。待ってて、望みどうり殴りまくってやるんだから」
作戦成功、これでドラゴンとの対決はしばらく後になるだろう。
ここで経験値を稼いで、俺もドラゴンと戦えるぐらいになれば大成功。
少なくとも、目玉を修復するぐらいの時間は稼げるはずだ。
彼女の攻撃にも段々慣れてきたし、ひょっとすると逃げ出す事もできるかもしれない。
――ブオン
耳慣れない、音が聞こえてきた。
それが【オーラナックル】と呼ばれる、攻撃力上昇系の技が発動した音だと判明したのは、俺の腹に風穴があいた後だった。
明日も、投稿します。




