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第38話 ドワーフと始めるエンチャント講座

「おおシンク様、どうか我らにお慈悲を!」

「あ、しばらく店はお休みです、よろしく」

「そんな! シンク様」


 午前中の特訓を終え一息つこうとした俺の所に、怪我をした集団が現れた。

 怪我といっても、かすり傷程度のもので、命に係わるわけでも生活に支障が出るわけでもない。そのぐらいの傷なら、俺が治すより包帯でも巻いた方が安上がりだろうに、そうか、みんなめんどくさいのか!

 

 しかしあれを放っておくと、あとでよくない噂が立ちそうだし……そういえば装備品の中には、特殊な効果、例えば【火炎属性付与】とか【毒無効】とかがあったな、だったら【回復力強化】とかもあるかもしれない。俺は武器屋に向かうことにした。



 ――結論から言うと無かった。

 やはりどの分野でも、傷を癒すというのは高等技術なようで、殆ど店に並ばない、並んだとしても頭痛がしてくるぐらいの値段になるらしい。

 

「ちなみに、魔道具の作り方とかってわかりますか?」

「適当なアイテムに、魔石を使って古代文字で使いたい効果を刻めばできるよ」

「俺にも出来ますか?」

「はっはっは、君がドワーフの天才なら、すぐに出来るだろうね」


 ドワーフかぁ、そんな都合よく見つかるわけないよなぁ。そうだ! ミケルの家は鍛冶屋のはずだし、ドワーフの知り合いとかいるかも、ドワーフといえば鍛冶屋だしな。


「ドワーフでありますか? 父上はドワーフでありますよ、ちなみに母上はヴァンパイアであります」


 ミケルに相談したところ、こんな回答が返ってきた。そうだよな、ちっちゃくて力が強くて鍛冶屋、まさにドワーフそのものじゃないか。


「もしかして、ミドラさん……だよな、ミケルの父親って魔道具とか作れるか? もしできるなら1つ頼みがあるんだけど」

「父上は魔道具については、からっきしであります。自分もまだまだ未熟者で、武器に効果を付与しようとすると、削りすぎて武器の強度を落としてしまうのであります……」

「え? なに? ミケル魔道具作れるの?」

「いえいえ、まだまだ実用に耐えうる段階ではないであります!」


 つまり、実用的でないレベルの物なら作れると。彼女の言う実用的でない、というのがどの程度のレベルかは知らないが、もしそれが俺の考える実用レベルより上だったとしたら、さっきの怪我人達の望みと、俺の能力アップを同時にこなせるかもしれない。


「ミケル! お前のすべてを俺に見せてくれ!」


 俺達は、ミケルの実家に向かって歩き出した。

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