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第37話 やればできる子は、やらないから結局できない

「ガードが甘い!」

「ゲフッ、こなくそっ!」

「ダメダメ、隙だらけじゃない! 【オーラガントレット】」

「ゴファァァ……あ……」


 今俺達は、ギルドの庭で組み手をしているところだ。特訓開始から15分経過、既にダウンの数も分かりません……ぐすん。

 誰だよカンナをひよっこだなんて呼んだ奴は! ひよっこどころか歴戦の勇者だよ! こんなカンナを叩きのめした、ゴンザレスの野郎はどんだけ強かったんだよ! 


「ご主人、はいおかゆ」

「サンキューりんごん、ゴクゴクって熱いわ!」

「ふふ、ねえご主人、そろそろスキルを振り直すでしょう」

「ああ、敗因は今までので分かった」


 戦闘スキルの中には、【剣技】や【弓術】といった特定の動作の効率を良くするスキルがあった。目には見えないが、カンナはきっと【格闘】のスキルと同じような技術を持っているんだろう。つまり俺も、【格闘】を取得すればカンナに勝てる!


「なあカンナ、オーラを使うと体力減るし、あまり特訓にならないと思うんだ。だから、今日の特訓は今からオーラなしにしてくれないか?」

「ええ、私もそうしようと思ってたわ」


 へへ、この勝負貰ったー!


 ――――負けました、カンナさんお強い。


「何で何で!? 何でご主人勝てないの?」

「レベルの差だな、カンナの【格闘】は俺よりレベルが高い」


 俺は、一番得意な【ヒール】のスキルレベルを、上げたり下げたりした。その動きに合わせて、回復力や消費魔力が変化した。カンナの【格闘】は、きっと俺の物より的確で効率がいいのだろう。

 それ以外にも、【判断力】や【予測力】といった、日常系スキルの存在が彼女を強くしていると思われる。


「ま、勝敗はいいや、特訓は強くなるのが目的だしな」

「ご主人、その水晶何?」

「ミケルから借りてきた記憶玉だ! これで組み手の映像を記録して、あとで確認するんだよ」


 ミケルはこのアイテムを暇なときに使って、記録した父親の技術を盗もうと頑張っているらしい。それを俺も真似して、特訓中の自分の映像を記録しようと考えたわけだ。りんごんの話だと、ポイントを使って手に入れた技は、練習次第で習得できるらしいので、うまくいけば俺は格闘家になれる!


「さあ、準備完了だ! どんどん打ち込んで来い!」

「シンク……あなた本物? 実は魔族が化けてるなんて言わないでね」

「失礼だな! 俺だって、やる気になるときぐらいあるさ!」


 そうだ俺だってな、【やる気強化】にポイントを振れば頑張れるんだよ!


「ご主人、やる気のポイントも格闘に振ったら勝てない?」

「勝てる! でも特訓がそこで終わるからやらない」

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