第24話 無傷の勝利が、戦いの基本!
あ~辛いわ~、痛みが倍増する呪いがつらいわ~。こんな状態じゃあ働くなんて、夢のまた夢だわ~。カンナの尻を枕にして、昼寝するぐらいしかやること無いわ~
「ねえ、いつまでこんなこと続けるつもり? 怪我したって治せばいいじゃない、クエスト受けに行きましょう」
「甘い! ダメージが増えるって事は、治療費も増えるって事なんだぞ! 最悪、報酬より治療費が高くなって赤字になるんだ。結論、俺は戦わない方がいい」
このギルドに来てしばらく。ただ飯を食いながら、冒険者達を観察するだけの毎日が続いている。クエストが終わるたびに、各パーティー同士でこんなダンジョンを攻略したとか、こんなモンスターを倒したとか、武勇伝を語り合っていた。
全員、傷だらけの状態でな。
結局彼らは、武器の修理と怪我の治療でクエストの報酬を使い果たしたようで……お、噂をすれば。彼らがゴブリン狩りから帰ってきた、ちゃんと無傷で、お疲れ様です明日も頑張ってね~。
睨まれた気がしたので、窓から顔をひっこめた。
「じゃあカンナ、毎日のストレス発散を我慢してくれるか? そうしてくれたら、【ヒール】をクエストの為に使えるようになるんだが」
「無理ね。そんな事したら、今度は私が戦えなくなるわ」
「だろう、あと数日で何とかなるから、その間1人で頑張ってくれ」
ああ本当に辛い、カンナを1人で戦わせる事が、ボロボロの冒険者に気を使って部屋の隅で飯を食う事が、何よりギルドマスターに追い出されやしないかとひやひやしてるんだ。
でも分かってほしい、今の俺は被弾するたびにギルドの財産を食いつぶす金食い虫だ。よく言うじゃないか、無能な働き者より無能な怠け者の方がましだって。
「おい小僧……話がある」
部屋を訪れたマスターの声に、俺は心臓を吐き出しそうになった。
頼む、追い出さないでくれ! 俺は、毎日カンナに鍛えられてる。もうじき魔力が成長して、【ヒール】の使用回数が増えるから! だからもう少し猶予を……。
「実はな、今1組ゴブリン狩りから戻ってきた奴らがいるんだが、そいつらの弓使いがスランプらしいんだ。オレは弓はからっきしでな、なんかアドバイスはしてやれねえか?」
よがっだぁぁぁよぉぉぉ、追い出さないでぐれでありがどぉぉぉ。
「弓は俺もですけど、1つ心当たりがあります。その人達、下にいますよね」
俺は、買ったばかりの健康サンダルに足を食いこませながら、階段を駆け足気味で降りて行った。
「ん? あんたがマスターの言ってた人か?」
「あ! 初めまして、エルルです、アーチャーです」
エルフだ……エルフの美女……。
スランプのアーチャーは、金髪のエルフでした。




