第22話 俺のチートの源が可愛すぎる件について
明日から、第2章開始です。
「見て見て、団長のザキルウェル様よ。凄い、前より身長伸びてる!」
「マジかよ! 明らかに2メートル超えてんのに」
俺とカンナは今、王宮内のコロシアムに来ている。何故ならここで、ゴンザレスの処刑が執り行われるからだ。
どうやら彼は指名手配犯だったらしく、顔と声を変えてこの国まで逃げていたらしい。なんでも、自分は正義の執行人だと叫びながら、罪もない人々を殺しまわっていたとか。
まあそのおかげで、大量の懸賞金が手に入り、怪我の治療とカンナの新しい服が買えたんだけどな。
『んん、ああ、いえ~い、みんな人生に退屈してるかい? そんな日常に、エキサイティングな催しをご提供だぁぁぁ! え? 前置きはいいから始めろって? OKOK、それでは選手の入場だぁぁ!』
無駄にテンションが高いアナウンスと共に、ゴンザレスの処刑が始まった。
まあ処刑を見たくて来たわけじゃなくて、カンナが騎士団を近くで見たいと言い出したから、こんなどうでもいいイベントに足を運んだわけだ。
というわけでおやすみ……へぶ! バトルに興奮したカンナが、俺を袋叩きにしている。あ、【自動回復】時間経過で傷がふさがる技を覚えたぞ。わーい、これでもっと殴ってもらえる……はぁ。
あ、ゴンザレス死んだ、あっけない最期だったな、帰るか。
「ねえ見て見て、騎士団の人にサイン貰っちゃった~」
「サインより先に自分を売り込めよ、将来騎士になるんだろ」
「……何で知ってるの、まだ話してないのに。そうだ思い出した、この前はなんで逃げ出したの、答えなさいよ」
ちくしょー! このままうやむやに出来ると思ったのに、余計な一言を……落ち着け、俺、練習したじゃないか、そのとおりに話せば怪しまれずに済む。
「な~んてね、あなたには2度も助けてもらったんだもの、秘密にしたい事の1つや2つ聞かないで上げる。そうだ、助けてもらったお礼に、あなたの名前を決めさせて頂戴」
「名前? なんかいい名前見つかったのか!」
「ええ、最高の名前よ」
そう行ってカンナは、フロアにデカデカと配置された騎士の像を見上げた。騎士の名は、オルステッド=シング・セイヴァー、幾多の魔族を屠った大英雄だ。
「名字や称号は、平民には名乗ることが許されてないけど、彼のシングという名前には様々な神の加護が宿っているとされているわ」
う~ん、あまり目立つ名前だと、不利になる場面があるだろうし、個人的には太郎とか花子みたいないかにもな名前がいいんだよな~、せっかくだけど。
「あ、ごめんなさい。シングは、男性に付ける名前ランキング3位だったわ。せっかくだし、珍しい名前の方が「いいねえシング、それにしよう!」」
ちなみに1位は絶倫丸、2位は白濁丸だそうだ、すごく元気になるらしい。
こうして俺達は、教会に居る命名氏のもとに向かう事になった。
教会の隅で占い師のようにたたずむ女性に声をかけ、俺の命名式が執り行われた。命名式は何事もなく順調に――。
「あっ……」
「お姉さん、あってなんですか、あって」
「間違えちゃいました、名前……シングじゃなくてシンクになってます」
すっごーい! 受けるダメージと与えるダメージが1.5倍になるんだって。しかも、状態異常の効果をダメージとして肩代わりできるおまけつき、更に更に名前を奪う悪魔対策に名前を変えられない結界魔法が常時働いてるんだって――って、ふざけるなぁぁ!
――ズゴーン
カ、カンナ、痛いから、本当に1.5倍で痛いから、やるならもっと手加減――。
――メキャァ
「はあはあはあ、君、じぁなくてシンク。その苦痛に歪んで、血の気を失った顔を今すぐやめなさい……でないと私、わ・た・し、自分が――――抑えられなくなっちゃう~~」
可愛いな~やっぱり。いつの日か、この笑顔を殴られるとき以外に見る事が出来るんだろうか。もし、そんなカンナとそばにいられるのなら、それはきっと幸せな事だろう。
おお神よ、500円までなら払うので俺の願いを叶えたまえ。




