第2話 ヒロインがピンチです
ぼやけた視界が、だんだん鮮明になってきた。
どうやら、森の中、時間は昼間だろうか。
――ボコォォ
「ウギャ!」
「ゴブゥゥゥ」
状況確認をしていると、いきなり後ろからどつかれた。
振り返るとそこには、こん棒を持ったゴブリンがいた。
――ボコォォ
ゴブリンの更なる攻撃が、振り返った俺の顔面を捉えた。
鼻血が出た、だがダメージはその程度だ。
はっはーん、いわゆるザコモンスターか、こん棒装備してこの程度だもんな。
「調子乗るなよ雑魚モンスター! 必殺右ストレェェェイトォォォ!」
――ポコン
あ、調子乗りましたマジすんません。
お願いしますので、俺の脇腹を殴打するのをやめていただけないでしょうか。
やめて、マジ止めて、意識とんじゃう、あっ! だんだん痛みさえ感じなくなってきた……。
あれ、痛みは無いのに意識は残ってる。
そうか! 痛みが減ったのは、ゴブリンの疲労が原因だな。
奴は連続攻撃で疲れ切っている、今こそ反撃のチャンス!
「今度こそくらえ! 必殺右ストレェェェイトォォォ!」
――ズゴォォォォォォン!
ゴブリンを倒した。
「…………ないわー」
何今の威力、50メートル走10秒越えの記録を持つ俺の身体能力とは思えない。
ならば、考えられることは1つ。
「なあんだ、女神様ちゃんと能力くれてたんじゃん、ありがたやありがたや」
恐らく能力の正体は、身体能力の強化。
その証拠にほら、こんなに早く走れる、オリンピックも夢じゃない。
……重力が、地球より弱いだけかも。
「ま、いっか、自分が強くなったことには変わりないし」
俺は、自分の身体能力を活かして、枝伝いに移動することにした。
敵がゴブリンだけとは限らない、死んだらどんな目に合うか分からない以上、安全は意識しないと。
きっと地面を歩くよりは、木の上の方が安全だろう(葉っぱで身を隠せるし)。
なんてことを考えていると、ゴブリンの大群を見つけた。
そして、ゴブリンに囲まれた女の子を発見した。
俺は地面に降りると、ゴブリンどもに攻撃を仕掛けた。
安全、何それおいしいの、安全よりもメインヒロインゲットの方が大事だろうがぁ!
「はっはっは、見ろゴブリンが塵のようだ」
――数分後――
「はぁはぁはぁ、危ない所でしたね、お嬢さん」
ゴブリンどもを全滅させた俺は、可能な限り紳士的に彼女と目を合わせた。
彼女は満面の笑みを浮かべながら、俺に駆け寄ってきた。
――メキャァ
そして、渾身の右ストレートが俺の顔面に突き刺さった。
「きゃは、この感触ぅぅ、やっぱりぶっ飛ばすなら人間じゃないとね」
訳が分からないまま、俺の意識はそこで途絶えた。




