第18話 嵐の前の惨めさ
明日も投稿します
「ロゼッタさん、これすっごく綺麗ですね」
「おじさん、このソースのかかったの2本追加で」
「……惨めだ」
東地区では大勢の行商人達が、商売に精を出していた。
甘いお菓子や、小物の店が多くまるで祭りでもやっているかのようだった。
よし2人とも俺が奢ってやろう、500円までな! なんて考えてた数分前の俺が恨めしい。デートで女の子に奢って、ちやほやされようなんて、考えた俺が馬鹿だった。
俺、無一文じゃん。かっこつけて財布出したら中身空っぽで、逆にエミリアに奢られるはめになるし、ガラの悪いおっさんに絡まれてロゼッタに助けられるし、もう溶けてなくなりたい……。
「はい、わたあめです、向こうで作らせてもらいました」
「え? これを……俺に……」
ありがとう神様、エミリアの手料理? いただきます。
――ちゅどーん
俺が歯を立てたとたん、わたあめが爆発した。
「す、すみません! わたしお料理が苦手で、いつも爆発させてしまうんです」
「俺もよく鍋とか焦がすし、たいした事じゃないよ、ははは」
「あ! かき氷、あれならきっと!」
――ちゅどーん
…………呪いだ、あの子はきっと料理ができない呪いにかかってるんだ。
「おーい、そこの兄ちゃん、いい品あるぜい」
「あ、お金ないのでいりません」
「安くしとくよ~」
「無一文です」
これ以上、女子に奢られて、守られて、甘やかされ……はいいとして。こんな場所にいられるか! 俺は、カンナ探しに戻るぞ。
「え!? うそ! で、場所は、分かった合流する」
「ロゼッタさん、何かあったんすか?」
ロゼッタさんが、指輪に話しかけていた。おそらくあれは通信機で、仲間と連絡を取りあっているのだろう。
「カンナちゃんが、大男に襲われてるって! うちの勇者様が、先に向かったみたい」
「……カンナ!! あっちか、クソッ!」
俺は筋力だけでなく、聴力まで強化されているようだ。
……カンナの叫び声が聞こえた。
右腕を切り落とされても、叫び声をあげなかったカンナだ。よほど例の大男は、ヤバい奴に違いない。どうかただの思い違いであってくれ、実は○○でした、てへぺろ、みたいな展開であってくれ!