第15話 ペンは剣より強し
「クエストは終了です、ゴブリンは全員逃げていきました」
勇者様の報告に、みんな大喜びだった。
「よっしゃー! これで違約金の話はなしだ」
「うう、これで怪我の治療ができる」
「ちゃんとした宿に泊まれる」
「うまい酒が飲めるゾー!」
しかも自分は使わないからと、大量の金貨を置いていった。
怪我人の治療に使ってくださいだって……俺のじゃないのか、ちっ。
あ~あ、初仕事で疲れたよ、寝よ。
――ゴチン
カンナさん? ご機嫌斜めですか?
「ねえ、今回の作戦結構無理があったでしょう!」
「うん、そうだね」
今回のゴブリン討伐作戦、その名も『人を雇おう作戦』。戦力が足らないなら足してしまおうという、至ってシンプルな作戦だ。
依頼料は、町の商人や行商人から集めた。ゴブリンを放置しておくと、商品の仕入れや、都市間の移動に多大なリスクが発生すると説明したら、割と簡単に集まったよ。
周りに冒険者は結構いたからな、仕入れ先や行商人達の移動ルートの情報収集は彼らに動いてもらった。違約金を払いたくない一心で、良く働いてくれたよ。
途中、自称勇者の協力を得られたり、ゴブリンの将軍が現れてゴブリンどもがパワーアップしたりして、集金作業がすべて無駄に終わったけどな。
「勇者とか将軍とか、俺達とは次元が違うしな、無理もあっただろう」
「その前の話よ、あんな大口叩いといて、失敗したらどうするの! もしみんなが協力してくれなかったら、もし有益な情報が集まらなかったら、もし誰もお金を出してくれなかったら!」
「え? 俺が倒すだけだけど」
「……勝てたの」
「あいつらの攻撃はドラゴンみたいに即死級のは無かったしな、痛いのを我慢すれば撤退と回復を繰り返して、あいつらが歯が立たないぐらい頑丈になってたさ」
とは言ったものの、結果として戦わずに済んだのは良かった。俺が勝てるのは、将軍が居なかったらの話だ。かっこつけて戦いに行ってたら、将軍の登場と共に、俺は死んでいただろう。
「ねえ、攻撃されて何で強くなるの?」
「何でって、そりゃあ……あ!」
俺の能力がカンナにばれたら、ボッコボコにされるに決まってる。
俺は、全力で逃げ出した。
22時にもう1話、投稿予定です。