第13話 ゴブリンの強さはピンからキリまで(教訓その3)
「今日はこれから、仕事を探そうと思ってる」
――パチコーン
カンナの、平手打ちが飛んできた。
「目を覚ましなさい、仕事なんてしたらゴロゴロできなくなるのよ!」
「俺の心臓は、所持金の減少に耐えられるほどでかくねえんだよ!」
ダラダラするにもカネはかかる。マンガやゲームや菓子も用意せずただ寝転がるだけなんて、そんなの知的生命体のする事じゃない。
「なら、ギルドでクエストを受けましょう。今ちょうどゴブリン討伐の依頼が出てるわよ」
「仕事探して回るのも面倒だし、それにしようか」
ゴブリンなら、楽に倒せるだろう。そう考えて俺達は、目的が同じ冒険者と共に壁の外に出た。そして、しばらく戦った後門の中に戻った。
「数多すぎ! しかも剣とか弓とか魔法とか、それでもゴブリンかよ!」
「人数を集めるために、わざと情報を載せなかったのね」
ギルドの依頼には、こんな詐欺の様な依頼もよくあるらしい。
依頼人だって人間だ、依頼料をケチれるならケチりたいと考える奴だっている。
おいしいクエストに見せかけて人数を集め、クエストに失敗したら違約金を支払わせる、そんな悪徳依頼人に騙されないようにするのも冒険者の技術の1つ――。
て、ふざけんなよ! 情報削ったのはそっちだろ、どうせ依頼書が原因で人が死んでも知らぬ存ぜぬだろう! 大体何でそんな悪徳依頼人を、ぶっ殺さねえんだよこの国の王様は! 今確定したぞ、この国の王はケチで無能な独裁者だ、やーいやーい、お前の母ちゃん……差別表現は控えよう。
「おーい、誰か、薬草持ってねえか!」
「回復魔法! ヒーラーの人、誰か―」
「カネなら払う……毒消しを……頼」
他の冒険者達も、続々と壁の中に戻ってきた。
彼らの様子から、俺達の撤退の判断は正しかったことが証明されたようだ。
彼らは、これからどうなってしまうのか。怪我の治療でカネをとられ、違約金としてカネをとられ、怪我の後遺症で仕事ができなくなったりしたら、もう生きてけないだろうね(鼻ホジー)。
「ねえ、あなた何でそんなに余裕なの? 私達だって違約金払うはめになるのに」
「払う必要なんてないだろう? ゴブリンはちゃんと倒すんだから」
「まさか……君は勇者なのかい?」
「聞いたかおい、あの兄ちゃんがゴブリン倒すってよ」
「奴らはこっちの10倍近くいるのよ、勝てっこないわ」
周りの冒険者達の、視線が俺に集まってきた。
「俺1人ではさすがに無理です」
「けっ、期待させやがっ「でも!」」
「1人でないのなら……皆さんの協力があれば確実に勝てます!」
俺の言葉を耳にして、冒険者達の瞳に輝きが戻った。
悪徳依頼人め、てめえなんかに誰が違約金なんか払ってやるか。ゴブリンどもを全滅させて、てめえの悪だくみなんかうち砕いてやる。
「とにかくみんなで飯を食おう、これから走り回ることになるからな」
こうして俺達のランチタイム兼、作戦会議が始まった。