第11話 黒ずくめ眼帯男が、悪人とは限らない(教訓その2)
ううう、あああ、死ぬ、殺される。
ドラゴンの報酬を受け取り、怪我の治療を終えた俺達は、再びギルドを訪れた。
ギルドの最高責任者、ギルドマスターに呼び出されたからだ。
そのおっさんが、怖いのなんの。
剣も鎧も全身黒一色、全身の傷跡からにじみ出る強者のオーラ。
そして何よりも恐ろしいのが、右目に付けた眼帯だ。
絶対善人じゃない……悪の親玉だよこの人……。
出来る事なら、向かい合ったこのテーブルを蹴り倒して、今すぐ立ち去りたい。
「カンナ、話は聞いてる……この男に助けられたんだってな」
「はい」
ひぃ! いきなり話題を振るなよ!
「オレの仲間を守ってくれてありがとう、心から感謝する」
マスターは、深々と頭を下げた。
頭を上げたとたん、強者のオーラは跡形もなく消え去った。
「にしても、陛下も酷い事しやがるぜ。カンナに、ドラゴン退治を命ずるなんてよ。こいつはギルドの中じゃひよっこだぞ、実質死刑宣告じゃねえか」
「そうよそうよ、ちょっと300人ほど殴り飛ばしただけなのに!」
「え? 300? そいつぁオレ様もドン引きだぜ」
このおっさん、急に雰囲気変わったな~。
そうか! 俺に頭下げるまで緊張してたんだな、きっとそうだ。
「でだ、魔物への防衛戦力が足りていない現状、ドラゴンの討伐に成功したカンナは、国の厄介者から貴重な戦力へとランクアップしたわけだ。無駄死にするような命令は、下されなくなるはずだ」
「ふぅ、これでまた、安心して人を殴れるわね」
「魔物をいっつも殴ってるだろう!」
「人間の方が殴り心地いいのよ! あの感触がたまらないのよ!」
うわー、話進まねー。
「とにかくだ! 戦力になったとはいえ、まだまだひよっこ、また無茶な命令が下る可能性はゼロじゃない。だからお前は、もっともっと手柄を立てるべきだとオレは考える」
マスターは、俺の方に顔を向けた。
「そこでだ少年よ、英雄になりたくはないか「無いです」、何でダァー!」
マスターのアッパーにより、俺は天井に突き刺さった。