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宿業 【6】

 積み重なって山となった瓦礫の半ばに金属の球体が埋まっていた。球体の表面に隙間が走り、隙間は繫ぎ目となって分解され、球体の内部からレッチェルが姿を現した。

 保護形態となって主を守っていた手甲が球体から腕の形へと戻されていく。崩落に巻きこまれてさすがに無傷とはいかず、酷くひしゃげて歪んでいた。

「ここは……どこ?」

 瓦礫の山から足を踏み出したレッチェルはきょろきょろと周囲を見回す。ビルと地表の崩落に巻きこまれたことまでは覚えている。ということは、ここは地下だろうか?

「……あれは?」

 レッチェルは怪訝に呟いた。前方の地面が仄青く光っている。いや違う。

「地底湖?」

 どうやらここは地下水の浸食によって作られた地下空洞、ということらしい。不純物の混じらない水は青く神秘的に輝いている。鉱物は星のように輝いて、まるで宇宙に立っているかのようだ。魂が吸い寄せられてしまうような幻想的な光景だった。

 水音がした。地底湖の上に立つ人影がある。人影から落ちた赤い滴が湖面に波紋と不純を広げていく。

 地底湖を澄んだ青とするなら、目の前に立つ男の両目は深海の濁った青だ。レックの両腕は力なくだらりと垂れ下がり、特に左腕は血色の塊となってぴくりとも動かない。

 ざぶざぶと水面を蹴り分けて、レックがレッチェルに向けて前進を始めた。すでに剣を持ち上げる力もないのか両腕は体の左右にぶら下げたままだ。構えもなにもない。

「レぇックぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 レッチェルも水面を蹴立てて前進しつつ、手甲から一斉に銃弾を撃ち放った。レックには避ける力もなく、弾丸の嵐に呑みこまれて、後方に血の雨が土砂降られる。

 そしてついに弾丸はレックの顔面を捉えた。レックの顔が上体ごと後方に跳ね上がり、レッチェルは思わず銃撃の手を止めてしまう。

 そして水面が爆発するように踏み締められた。レックの上体が振り戻され、悪魔のように剝き出しにされた歯が弾丸を噛み止めていた。レックの上体が弧を描き、口に銜えた弾丸を投げ返す。弾丸は一瞬で空を駆け抜けてレッチェルの腹部を貫き、背中から血と内臓の破片を飛び散らせた。

 レッチェルが怯んだのは僅かに数秒だ。その数秒の間にレックは間合いを詰めていた。必殺の剣が突き出され、

「まだ、倒れられるかあっ!」

 しかし下から跳ね上がったレッチェルの手甲が剣を弾き上げていた。レックの手から離れた剣が円を描いて宙を舞う。手甲の後部から火が噴き出して加速し、鋭い爪がレックの心臓目がけて突き出された。

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