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自らを縛りつける者たち 【6】

 地表から飛び立った二人が大穴の真上で激突した。藍色の光となったベベルの右腕から楔が空を覆い隠す蝗の大群となって飛翔し、ルーザーの生み出した暗黒の恒星が根こそぎ呑みこんで消滅させる。

 ルーザーは大きく振りかぶって暗黒の恒星を投擲。ベベルの楔が殺到していくが、隕石の前の羽虫のように虚しく搔き消されていくのみ。十二体の杭打機が重ねに重ねられて恒星を防御して、暴風のような衝撃波と轟音が発生。城塞すら破壊するはずの一撃は、しかし一体の杭打機も破壊できていない。

 葬星禁器は〝億人殺し〟と形容されるように、押し並べて未曽有の破壊性能を保持している。しかし反面、模造型や生物型は無論のこと、施設尺度である天災型や生産型ですら、防御面に関しては実はそれほど優れているわけでもない。それこそ〝千人殺し〟級で充分破壊できるほどに。

 だが、最初から破壊しあうことを前提に作り出された武装型は、五種の葬星禁器中でも随一の耐久性能を有しているのだ。

 暗黒の恒星は急速にしぼんでいき、そして消失。ルーザーは舌打ちを放ってベベルに突っこんでいくが、繰り出された手刀は中筒によって受け止められてしまう。

「お前の出力限界が近いことも見抜いている。サーペントとゼッペルとの連戦で、半分の力も残っていないのだろう?」

 優越を浮かべていたはずのベベルは、次の瞬間にはぎょっとしていた。ルーザーの手刀を覆っていた黒い光が高速で動き回り、腕自体が電鋸となって中筒に侵入。真っ二つにして破壊する。

 ルーザーが電鋸の手刀を横薙ぎし、ベベルが頭を伏せて回避。ベベルが杭打機と蹴りを突き出して、ルーザーが縫うような体捌きで回避し、肘鉄がベベルの胸部に叩きこまれた。ベベルは苦痛に顔を歪めながらもルーザーの体を蹴って脱出。一拍遅れて肘から光が放出され、ベベルの胸元を掠めていく。

 やはりルーザーは手強い。同じ《葬世者》の中でも自分は頭脳型であるのに対し、ルーザーは戦闘型。それもおそらくあの時代から転戦を続けてきて戦闘経験値に桁違いの差が開いている。

「それでも!」

 吼えたベベルが杭打機を突き出し、ルーザーは電鋸の手刀で杭打機の大筒を左右から挟み、しかし破壊することは叶わず表面で停止する。大筒は中筒よりも頑丈なのだろう。

 杭が射出され、爆発するような衝撃波がルーザーに叩きつけられた。ルーザーは全身の穴という穴から銀色の血を噴出させながらふっ飛ばされていき、縦回転して、地表に着地。上空に立つベベルの両手から楔が、杭打機が、追撃の戦車砲となって射出される。

 応じてルーザーも両手を突き出し、両足が地表に埋まって、黒い光が柱となって天を貫く。黒い柱は楔を破壊し、杭打機を呑みこんで、ベベルの鼻っ面を掠めてどこまでも伸びていき、そして雲をも切り裂いた。

「おおおおおおおおおおおおっ!」

 雄叫びを上げてルーザーが腕を振り下ろした。連動して光の柱も傾斜を始め、傾斜の先に位置するのは巨塔。ルーザーは天を貫く剣で巨塔を破壊しにかかる。

「させるかよおっ!」

 傾斜する柱の下に藍色が割りこんだ。ベベルが杭打機と両腕を交差して柱を受け止め、巨塔が破壊されるのを阻止する。ベベルを排除せんと柱からは棘のような突起が次々と突き出されていき、ベベルは杭打機を乱射して応戦。黒と藍の破片が撒き散らされ、強打の連続に耐えられず二体の中筒が木端微塵となる。

 杭打機が横一列となって柱に固定され、杭を射出。光の柱は半ばで折れ砕け、ベベルは柱の下を滑るようにルーザーへと接近。杭打機の大筒が突き出され、ルーザーの肘と膝が巨獣の大顎となって噛み止め、そして噛み砕いて破壊する。

 大筒の破壊に意識を割いたその一瞬が、ベベルをルーザーの懐に踏みこませる隙となった。ベベルの右拳が突き出され、ルーザーも拳を突き出して相殺。

 次の瞬間にはベベルの右腕が膨れ上がって爆発を起こしていた。右腕一本を犠牲にした自爆技だ。夥しく飛び散った楔がルーザーの全身に襲いかかり、食い破って、全身から血を噴き上げる。ルーザーはそれでも踏みとどまり、驚愕。自らの胸にベベルの左拳が突きこまれていた。

 眼前に立つベベルも全身に楔を浴びて夥しく血を流している。爆発の中心を突き破ってきたのだとしか思えない。ベベルが拳に力をこめ、ルーザーの口から血が溢れる。

「執念では私が上だ!」

 ルーザーの胸から引き抜かれたベベルの五指には、血に濡れて銀色に染まる拳大の塊が握られていた。知らぬ者には石ころにしか見えないそれこそが、《葬世者》と《葬星器》の動力器官だ。

 ルーザーの瞳から光が失われ、黒かった頭髪が一気に薄くなっていく。

「さようならだ、クソ兄貴」

 倒れていくルーザーに対してベベルは振り返りもしなかった。顔には寂寞こそあるものの涙は流していない。勝手な都合で兄弟に死を与える自分には涙を流す資格がないのだと、必死にこらえているようにも見えた。

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