自らを縛りつける者たち 【2】
「かつて一つの問いがあった。〝強さとはなにか?〟という問いだ」
ルーザーと対峙するベベルの口からは、滔々と言葉が流れ出ていた。
「ある者は『天変地異にも等しい破壊の力』だと言った。ある者は『生み、増えること』だと、またある者は『戦い続けられること』だと言った。私の答えは『得体が知れないこと』だった。だが、あいつの答えは我々とは違っていた。あいつは、『強さとは引き金を引く心の強さ』だと言った」
虚空に向けられたベベルの視線は、懐かしむようにかつての日々を見つめていた。
「当時はあいつの言葉を馬鹿にしたものだが、実際にあの時代、最も多くの人間を殺した葬星禁器はあいつが作り出した武装型だった。私自身、今になってようやく、あいつの言葉の一端を理解できた気がする」
ベベルの顔は青ざめていた。明らかに不調をかかえている。
「眩暈がするし、吐き気もする。これから人間を滅ぼそうとしているだけで、こんなにも気分が悪くなってくる」
「それは君が人間になったからだ」
まるで悲鳴じみたベベルの吐露に、ルーザーは優しく語りかけた。
「同族に手を下すということは、理屈ではなく気分が悪くなるものだ」
「……あんたも、こんな心境をかかえながら私たちと戦っていたのか?」
血を吐くようなベベルの問いに、ルーザーは一度だけ顎を引いた。
ルーザーの視線がベベルから離れて巨塔へと向けられる。塔から発せられる唸り声が一段と高くなっていた。ベベルがルーザーの前で足を止めていることからして、すでにゼッペルは組みこまれたあとなのだ。
だが、そもそもが極地地震を起こすための兵器だ。一撃に要する動力量も莫大であり、充填にも相応の時間がかかるはずである。
「だったら、まだ止める手立てはある」
「それを私がさせると思うか?」
ベベルは静かに歩き始めた。いまだ顔色は悪いが、それでもルーザーに向かってくる。ベベルの表情には冬の湖のような、波一つない穏やかな覚悟があった。
「ここから先へは行かせない。少し、昔話に付き合ってもらおうか」




