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いつか見た嵐のように 【7】

「な……んだ? なにが起きた……?」

 ゼッペルの呆然とした言葉が地面に落ちた。

 黒い棘たちは中心点に向かって穂先を伸ばしていく。ゼッペルの分身体を巻きこみながらねじり合わさり、天空に伸びる塔になると先端に紡錘形を形成。可憐な美姫の唇のような蕾が開かれ、花となって咲き、内部からルーザーが出現した。

 自然界には存在しない黒一色の花の中心に立つルーザーは周囲を一瞥。くいと顎を動かすと、瓦礫の中から円盤が舞い上がった。切断された左腕が高速回転しながらルーザーの元へと舞い戻り、切断面が合わさって一秒もせずに接続。五指を動かして感触を確かめる。

「まだ生きていたか救世主っ!」

 激昂したゼッペルは巨竜の口から〝閃光の息吹〟を吐き出した。空中に描かれた光の濁流が一直線でルーザーへと向かう。

 黒い花の巨大容積が一瞬でルーザーの右腕に収束。ルーザーが右腕を突き出し、螺旋を描く拳が〝閃光の息吹〟を突き破って巨竜の右肩を消し飛ばした。粉々となった肉片が飛び散り、しかしそれすらも黒い光に触れて跡形もなく消失する。

 黒い光は触れたもの全てを消し去る消滅の力だ。

「なんだこの力は? なんなんだその光は⁉」

「星の光は命の光。命の光は太陽の光。救世主が太陽如き身に宿せなくてどうする」

 全身に〝明星の輝き〟をまとったルーザーが、ゼッペル目がけて突っこんだ。

「馬鹿な。馬鹿な! 馬鹿なあっ! 私と貴様は同じ人造人間! そしてこちらには葬星禁器と三千体の〝万人殺し〟があるのだ! それなのに、なのにどうしてっ!」

 巨竜が右腕を突き出し、応じてルーザーも腕を突き出す。ルーザーの腕が黒い光をまとい、黒い光は瞬く間に肥大化して、巨竜のそれよりも巨大な腕となった。

 黒い腕は巨竜の腕を摑んでねじり上げ、肩口から無造作にもぎ取った。ルーザーが腕を振り、連動して黒い腕が振り抜かれ、巨竜の腕で巨竜の本体を殴打する。巨竜に超衝撃が叩きこまれ、体勢を崩して左に傾いた。

 隼のように空中から降り立ったのはファルマン。巨竜の左肩を足場に踏み出すと、手にした大剣を水平に繰り出す。

 そして巨竜の右肩には弾丸のように着地したレックの姿があった。こちらも黄金の剣を大剣に変じさせて水平に繰り出している。

「私に合わせろ」

「俺に合わせろ」

 ファルマンとレックの顔は不機嫌さに歪められた。憎い相手を前にしているかのように眉が吊り上がる。

「「知ったことかあっ!」」

 二人の大剣が巨竜の首筋に叩きこまれ、皮膚を切り裂き肉を断って頚骨に到達。そこで相手の大剣と激突して火花を散らし、一瞬の交錯を終えて再び肉から皮膚へと疾走。

 二人はそのまま巨竜の肩を駆け抜けて空中に跳躍。一拍遅れて根元から切断された巨竜の首が轟音を上げて大地へと落下していく。

 レックは荒れ果てた舗装路に着地していた。即座に追撃の銃撃を行おうとして、その動きが止まる。

「なんだ?」

 レックの鼻に乗せられた眼鏡がこれまでにない反応を見せていた。鈴の音のような、警告音のような、涼やかでいながら悪寒を覚える音が耳元で鳴り響いている。

「違う。共鳴だ」

 レックが視線を巡らせて、硬直。

 遠いビルの屋上に男が座っていた。銀河を束ねたような銀髪が風になびき、銀嶺のような鼻梁には理知的な眼鏡が飾られている。

 男の手が無言で拳銃を伸ばし、引き金。吐き出された弾丸は空中で千にも万にも増殖し、流星雨となって巨竜の左膝に殺到。強固な皮膚を、厚い筋肉を、硬い骨をことごとく穿ち、抉り、食い破って、巨竜の左膝を完全破壊。巨竜の左足が本体から切り離され、巨竜は左膝のささくれた断面から地面に落ちた。

「どうしてだ? なぜだっ⁉」

 ゼッペルは巨竜の左腕を振り下ろすが、腕は突如として弾き返された。瓦礫のゴルタギアに立ち、拳を突き上げているのは紅玉の鴉鎧だ。鴉鎧が拳を連打し、衝撃波の流星群が巨竜の右腿に殺到して破壊。巨竜の右脚がありえない方向にねじ曲げられ、巨竜は腰から大地に落下する。

「どうして人造人間である私が、葬星禁器が、たかが数人の人間ごときに……っ?」

「残るは」「お前だけだ」

 巨竜の胸元で呆然自失となったゼッペルの目の前に、フィフニとレックが飛び出してきた。ゼッペルは咄嗟に巨竜の左腕を繰り出している。二人は互いの体を蹴り合って上下に回避し、巨竜の腕が虚空を素通りする。そしてゼッペルの目が見開かれた。

 二人の背後にはルーザーの姿。ルーザーは前方に伸ばした脚に黒い光をまとい、風を裂く超速度でゼッペルへと突っこんできた。フィフニとレックは自らの体でルーザーの接近を隠し、同時に最後の攻撃手段を空振りさせて必殺の瞬間を作り出したのだ。

 ゼッペルの両腕が巨竜から抜け出して体の前で交差された直後、ルーザーの蹴りがゼッペルに叩きこまれた。

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」

「ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!」

 ルーザーとゼッペルの咆哮が響き渡り、巨大な槍となったルーザーが巨竜の体に埋没。巨竜の背中が膨れ上がり、ルーザーとゼッペルが飛び出した。

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