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地下錯綜 【3】

 双剣を構え、眼帯男はじりじりと移動していく。レックとルーザーも肩を並べて眼帯男に相対する。

 先に仕かけたのは眼帯男だ。双剣を猛牛の角のように突き出しながら突進してくる。生まれたのは火花。双剣の切っ先はルーザーの裏拳によって受け止められ、そして渾身の力によって左右に開かれた。ルーザーが身を屈め、背後から出現したレックが横一閃。剣が大槍へと変化し、長剣の間合いの外から巨大な弧を描いて振り抜かれる。

 けたたましい激突音が鳴り響いて大槍が停止した。大槍を受け止めたのは長剣ではなく大剣だ。眼帯男は長剣を腰の懸架帯に戻し、新たに翠色の大剣を引き抜いて、レックの大槍を迎え撃ったのだ。

 腰の懸架帯には長剣や大剣だけではなく五、六種類、十つ程度の武具がおさめられていた。それら全てで一体の葬星器なのだろう。

 葬星禁器の一つに、七つの武具で一体として数えられるものがある。それと同じ分類というわけだ。

 組み合った二人の間でルーザーが回し蹴りを放ち、眼帯男は跳躍して回避。さらにルーザーの蹴り脚を踏み台にして再跳躍。上下逆様となって天井に着地する。

 眼帯男は新たに取り出した長槍を天井から突き下ろし、床からレックが突き上げた大槍と激突! 衝撃に耐えられなかったのは足場だ。床と天井がそれぞれに崩壊し、レックは下へ、眼帯男は上へと突き飛ばされた。

 落下の最中にありながら、レックは眼帯男目がけて発砲。空中にいる眼帯男に避けようはない。眼帯男は階上の床を長槍で突いて急速軌道転換、光弾を回避して床に着地。それから数歩ばかり後退する。

 目の前を轟音と閃光が通りすぎたのは直後だ。眼帯男を見失ってなお、レックは当てずっぽうで銃を撃ってくる。次は左、そして後ろだ。眼帯男を仕留めるべく床から次々と光弾が飛び出しては天井へと抜けていく。逆様の流星群によって崩壊していく世界の中を、眼帯男は隼となって駆けていく。

(それでも狙いを大きく外してこないのはさすがだな)

 何度めかの轟音が耳を劈く。そこで初めて眼帯男の顔に驚愕が生まれた。予想外の事態に直面したように、取り乱した顔で天井を見上げる。音は階下のレックからではなく階上から聞こえていた。

「もう一人の黒づくめか? なにをしている?」

 その後も階上からの轟音は途絶えない。眼帯男は怪訝と焦燥の入り混じった顔で天井を見続ける。

 この時点で眼帯男は余裕をなくしていたのだろう。階下からの銃撃が止まっていることに気付いたのは、少しばかり時間が経ってからだった。

「そういうことかっ!」

 二人の意図を理解するや否や、眼帯男が速度を上げる。眼帯男は瞬く間に階層の端へと到達。外壁はなく、吹き晒しからゴルタギアの夜景が見えた。人工の灯りに彩られた宝石箱のような夜景の中へ眼帯男が身を躍らせる。

 僅かばかりの浮遊感と、直後に訪れる落下。吹き荒ぶ風が火照った体に心地いい。

 一拍遅れて背後でビルの崩壊する轟音が聞こえてきた。背中に粉塵と烈風が叩きつけられる。レックが階下を、ルーザーが階上をそれぞれに破壊して、眼帯男をビルの倒壊に巻きこもうとしたのだ。そして、

 眼帯男の視線が地上へ向けられた。地上に立つレックが担ぐのは棺桶のように巨大な大砲だ。大砲から伸びた管の繫がる眼鏡には様々な観測情報が表示されていた。

「やはり退路を誘導されていたか……っ!」

「感知系の葬星器を持ってるのは、お前だけじゃないんだよ!」

 レックの怒号を搔き消すように砲口から光が溢れ、迸った光の濁流が眼帯男に食らいついた。眼帯男は大剣で防御するが、そんなものはお構いなしに濁流へ呑みこまれてしまう。

 やがて砲口からの光は徐々に細くなっていき、奔流から小川へ、そして糸となって消えた。大砲の後方から円筒形が飛び出して地面に落下。円筒形は自らが持つあまりの熱量に形を保てず熔け崩れ、剝き出しの地面を焦がしていく。熱量を集めた部位を切り離して排熱したのだ。

 本来は拠点攻略用の形態だ。直撃を受けて生身の人間が生きていられるはずがない。

 天空を見上げながら勝利を待ち望むレックの目の前に眼帯男が着地した。レックは目だけを下げて息を呑み、眼帯男は間一髪の深呼吸。

 眼帯男は軽い火傷を負っているものの重症ではない。絶体絶命の窮地からどうやって脱出したというのだ?

「活路は罠を食い破った先にしか存在しない!」

 眼帯男が大剣を一閃。レックの胸が裂けて大量の血飛沫が夜空に舞った。

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