体育にて
女子の黄色い悲鳴と、男子の掛け声。
ツン、と汗臭いユニフォーム。軋む足首。
「ほら、紫苑、ボールそっち行ったぞ」
「おーおー、千草君、かなり人使い荒いんちゃうかー?」
そんな、ザ・青春のど真ん中にいるのは、千草と紫苑である。
「ふたりとも・・・げんき・・・だね・・・。」
「ああ。まったくだ。バスケットボールなど・・・こんな無意味な運動に、何でそんなに打ち込むのか、甚だ疑問なのだが・・・。」
二人を遠くから見守っているのは、長袖長ズボン、所謂長ジャー姿の梓杏と浅葱。ダンダンと体育館が揺れるたびに、二人の体もまた、右へ左へ揺れていた。
「おい、梓杏に浅葱、お前らAチームだろ、んな隅にいないで、コートに立て」
同じくAチームの千草が叫ぶ。
「いや・・・おれらはいいから。いけめんは、じょしに、かこまれてればいいよ・・・・。」
「そうだ、そうだ、美男子は女子に注目されていればいいのだ。」
「お前ら・・・・・。」
そうこうしているうちに、相手が攻撃をしかけてくる。
「ちょ、待てって」
その攻撃をもスマートに受け止める
「うわー、さすが、イケメン、やんね」
紫苑がにやにやと笑みを浮かべているが、気にしない。気にし・・・。
「ひゅーひゅーいけめんー」
ガゴッ
ボールが顔に当たっただけとは思えない強烈な音が、体育館に、響いた。
「ったぁぁああぁ・・・」
紫苑が、顔を抑えてしゃがみこむ。
「それは無いで、千草君・・・。」
「うっせ、お前が騒ぐからだろ。」
「僕が騒ぐ→千草君イラッ→ボール吹っ飛ぶ、ってことか。あまりにも一瞬過ぎて、頭追いつかんかったわ。」
試合中にもかかわらず、駄弁っていると、ヒュンッ、音を立てて、オレンジ色の影が、二人の間を飛び抜けた。
「・・・・は?」
音の正体は、相手チームが投げたボール。
「あ・・・ヤバ・・・。」
紫苑、並びに梓杏、浅葱の頬を冷や汗が伝う。
そうなのだ。あの男――千草は、負けるのが大嫌いなのだ。
相手に一点でも点を取られれば、即、ブッ潰しルート。
よって、悲鳴と叫び声で、今日の体育は幕を閉じた。
◇
「千草君、えげつなぁ・・・。」
結果は31対1で、Aチームの勝利。相手チームに点を許したのは、先ほどの1回のみであった。
「えげつない、ちぐさ」
「うむ、えげつないな。」
「えげつない、えげつない言うな、これが勝負だろ。」
「さすが、もとやんは、いうことが、ちが―」
言いかけた浅葱の口を、千草が抑える。
「どうしたん、千草君。」
幸いにも、紫苑も梓杏も、浅葱の声が小さくて聞き取れなかった。
「そろそろ予鈴がなる。もう教室に向かわねば。」
「あ、ああ、そうだな。」
浅葱の口をふさいだまま、千草がそう答えると、紫苑が「二人はまだ着替え終わってないっぽいから、先行くな」とひらひら手を振りながら、梓杏と更衣室を後にした。
ドアが閉まるのを見届けて、浅葱が、千草の手から脱出する。
「あの・・・、ごめん、ちーちゃん・・・。」
「二度と・・・」
「え?」
「二度と・・・あの時の事を言うな。」
千草の冷たい物言いに、浅葱は頷くだけだった。
少しばかりの言い訳のため、後書きを書かせていただきます。
まず一点目。
大幅に次話投稿が遅れてしまい、申しわけございません。
中学生という身分上、テストや塾、受験など、やらなければいけないことが多く、これからも遅れてしまうことがあります。ご了承下さい。
二点目。
まだ経験が浅いということもありますが、非常に文章構成が拙いです。
自分で確認して投稿するのですが、それでも至らないところもあります。
基本、小説では使わない記号(→やじるし等)は、極力避けているのですが、私の語力不足のため、今回の話でつかってしまいました。申しわけございません。
だらだらと長文を書いてしまいましたが、これからも、どうぞよろしくお願いします。