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Invisible Blue  作者: 成日
3/4

下校にて

紫苑が生徒会長だったという驚きの事実を何とか受け止め、夕日が差す道を4人で歩く。

「あ・・・」

そう呟くように言って立ち止まる浅葱は、電柱の横にそっとしゃがんだ。

「どうしたんだ、浅葱。」

同じく横にしゃがみながら、梓杏が(たず)ねた。

「おはな・・・」

「花?」

浅葱と同じ方向に目を向けた梓杏は、ああ、と何か納得するように頷いた。

「これは面白い。」

口角をあげた梓杏が浅葱に向かって口を開いた。

「これは藤の花だ。藤とは落葉低木で、普通は山野に自生するんだが・・・。その花がこれだよ。紫色の蝶の形の花弁が特徴的なんだ。」

「ふじ・・・。おれ(藤浅葱)とおなじだ・・・。」

嬉しそうに目を細める浅葱を見た梓杏は、ふっと笑みを浮かべる。

「なあなあ、お二人さん。千草君があっち行ったで。」

千草と二人でいたはずの紫苑が、動かない二人を見かねて、そう言った。

「しょうがない奴だな。さて、我々も行くとするか、浅葱。」

「・・・うん。」

千草は数十m先の駄菓子屋にいた。

「おい、何も言わずにどこか行くな、千草・・・ん?」

説教を始めようとする梓杏の目に留まったのは、千草が持つ氷菓子(アイスバー)

「ごめん、久し振りにガリ○リ君を見つけたからよ。」

何故かテンションがあがっている千草。

「懐かしいなぁ、ガ○ガリ君・・・。」

感慨深くそれを見つめる紫苑。

「ふむ。がりがりくん・・・とな。」

「え、しあんくん、しらないの・・・?こくみんてき、あいす・・・。」

「いや、耳にしたことはあるのだが、口に入れたことは無いな。」

顎に人差し指を当て、不思議そうに見つめる。

「じゃあさ、梓杏君のためにも、○リガリ君を買おうやないか!」

名案とばかりに顔を輝かせる紫苑を置いて、千草は3本、無雑作(むぞうさ)氷菓子(アイスバー)の袋を掴む。

「おばちゃん、これお願い。」

はいよ、と皺々(しわしわ)の手で受け取ると、昔ながらのソロバンで器用に代金を計算していく。

何枚か小銭を差し出すと、これまた何枚かおつりが返ってきた

「あ、紫苑は自腹で。」

出てくるなり、思い出したようにそう告げる。

「ケチやなぁ・・・。」

ふて腐れたように、紫苑は言って、駄菓子屋に入っていった。

「ん、梓杏のと、浅葱の。」

「ありがと、ちーちゃん。」

「すまない、この分の金銭は今度返す。」

「いいよ、そんなかかってないし。」

「・・・・。」

梓杏は不服そうだが、たかが数十円。返されるほうが気まずいので、丁重に断っておく。

「んなことより、食ってみろって。」

氷菓子(アイスバー)アイスバーを包むプラスチックを縦にまっすぐ裂いて、中の青くつめたいそれを、梓杏の口に押し付ける。

「ん・・・。自分で食べられるぞ。」

「いいから。」

有無を言わせず、押し込む。

「冷たっ・・・」

歯で、侵入しようとしてくる異物を押し返そうとするが、しぶとく抵抗するそれに諦めがついたのか、梓杏は素直に口を開いた。

「せめて一人で食べさせてくれ。」

そんな梓杏の要求を受け入れた千草は、持っていた棒から手を離す。

「うん、つめたくて、うまかった。」

千草と梓杏の攻防をよそに、一人、氷菓子(アイスバー)を食べていた浅葱が、そう感想を残した。

「それは良かった。」

「ひさしぶりにたべたから、やっぱりあたま、キーンとした・・・」

こめかみ辺りを押さえる浅葱。それを見た千草が、軽く浅葱の髪を撫でてやる。

「・・・水に無機塩類を溶かし、炭酸ガスを圧入した清涼飲料水・・・の味。」

「お前、ソーダっての知らないのか。」

「もちろん知っている。炭酸ナトリウムの事だろう。」

「そっちじゃなくて、ソーダすいのこと・・・」

「そーだ、すい・・・?」

不思議そうに浅葱を見つめる梓杏。

「何や、梓杏君、知らへんの?」

「いや、水に無機塩類を溶かし・・・以下略称の味を知っていて、何故ソーダ水を知らないんだ。」

「謎やなぁ。」

梓杏の謎が深まったところで、浅葱が(たず)ねた。

「で、おいしかった?ガリガ○くん。」

(みな)が一斉に梓杏の顔をのぞく。

しばらく、考えるような素振りを見せたあと、(みな)に注目されて照れたのか、頬を赤く染め、呟くように、「美味かった。」と言葉にした。


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