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Invisible Blue  作者: 成日
1/4

屋上にて

「あ。」

空を見上げる。

「青い。」

どこまでも澄み渡る青に、一本孤立してのびた飛行機雲がよく映える。

学校の屋上で寝転がりながら、どこまでも広がる空に、ほぅとため息をついた。コンクリートの熱が薄手の制服を通して背中にまで届く。

「あのさ、桔梗口梓杏(ききょうぐちしあん) 。俺たち何で屋上にいるのかな。」

隣で寝そべる男が、そう口にした。

「何かな、縹田千草(はなだちぐさ)君。私に【何故屋上にいるのか】と問うたのか。」

「ああ、はいはい。問うました問うました。」

さも面倒くさそうに、千草は頭をかきながら答える。すると、梓杏は眉尻を上げて言った。

「はて、【問うました】とは日本語になっていないのだが。」

流れる沈黙。

「だあああああああ!!面倒くさいよ梓杏!」

そう言いながら、上半身を起こす。

「うるさい・・・」

二人とは違う声がそう囁いた。

「おひるで・・・あたたかいんだから・・・」

だんだん怠くなってきたのか、語尾が小さくなってくる。

「うむ、ようやく起きたか、藤浅葱ふじあさぎ。」

「ん、おはよう、しあんく・・・」

何かを言いかけたまま寝てしまった。

「器用なやつ・・」

そして千草は元のように寝そべる。

空を見上げた。

ずっと屋上に居たからか、不思議と夏独特の暑さは感じられない。心なしか心地よくもある。

「ていうか」

千草がゆったりとした口調で語りかけた。

「本当に、何で俺ら、屋上にいるの?」

「ねむたいから・・・」

ボソリと浅葱が呟く。

「惜しいな。それもあるが、今は昼休みだから、だ。」

彼には眠気というものは無いのか、いつもと変わらぬハキハキとした口調で、梓杏は返答した。

「あー・・・そっか。」

それ以上追及するまいと、千草は口を閉ざす。

しんと静まり返った辺りは、校庭で遊ぶ生徒の声と、風の音以外響かない。

刺すような夏の日光を全身で受け止めながら、何人かの寝息が重なる。

「いやぁ・・・青春、やねぇ・・・」

「お前いたのか、菫紫苑すみれしおん。」

「いや、教室にみんながおらんから、どうせ屋上だろうと思うてな。」

「つまりあれか、音もなく現れるとは、影が薄いのか。」

「ひどいやーん」

それきり、言葉を発する者はいなくなった。

何分か経つうちに、意識が朦朧としてきて、目を開けられなくなるまでに、睡魔が4人を襲った。



「ん・・・・。」

肌寒くなってきた。

先ほどまでの明るさはなく、暗い。

「・・・暗い!?おい、起きろ・・・っていない!?」

後ろでドアを開く音がした。

急いで振り返る。

「やっと起きたか千草。」

「もう・・げこう・・・」

「お前、結構バカやんなぁ」

「お、お前ら・・・・・」

夏の夕暮れに、千草の怒声が響いた。

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