⑥
クローバーを握りしめる腫れた右手に更に力を込めた母親は泣きながら懇願した。
ア゛ア゛ア゛ア゛…ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛!!
誰…ニモ邪魔…サセナ…イ……
少女もより激しく抵抗を見せる。
その弾みで母親が持っていたシロツメグサの冠がぽとりと地面に落ちた。
「やめろよ、母ちゃん…。」
少女と母親の足元に落ちた冠を拾い、立ち上がると目の前の少女は待ちわびたように、逃がさぬように、俺の首に冷たい手を伸ばす。
「姉ちゃんはずっと待ってたんだ…俺が約束を果たす日を。」
母親が俺の代わりに逝くなんて絶対にさせない。
今まで俺を必死に守ってきてくれた母親。
俺を愛して死んだ姉貴。
もうこれ以上俺のせいで傷つけたくない。
がっちりと首を掴んだ手には再び強い力が込められていく。
「…やめてぇぇ!未央!!!」
ぽすっ
俺は少女に微笑みかけながら少女の頭に萎れた冠をのせる。
「今は…俺……よりも…姉ちゃん…の方が、よく似…合う……とても…」
どうかこの想いよ届いて
俊介を連れていかないで
お願い、お願い…!
「未央ォ!…俊介ェェ!!!」
ア゛ア゛ア゛ア゛…ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛…
-ママ、ママー!みてみて!
みおね、よつばのクローバーみつけちゃった!
クローバーはねがいをかなえてくれるんだよね!
なにをおねがいしよう?
みおね、た~っくさんあるのおねがいごと!
誰…ニモ邪魔…サセナ…イ……
-この白い花、小さくて可愛いね
わぁ!ママ、そのお花の冠どうやって作ったの?
すごく素敵、お姫さまみたい!
私にも教えて?
約束ヲ…約束ヲ…
-ママ、お疲れさま
すごく元気な赤ちゃんね
ウフフ、今日は何とママにプレゼントがあるの
この日のために一生懸命探したんだ
可愛い弟を産んでくれてありがとう
私…ダケノ…俊チャン………
-ねぇママ
ママは何をお願いする?
どうか、俊介を守って




