③
バサァッ
…ヴゥゥ?!
俺は【それ】を姉貴の顔面に投げつけた。
母親が教えてくれた『清めの塩』を。
姉貴は顔を抑え、呻きながらよろめく。
その時、重く熱い身体がふっと軽くなった。
…今だ!
部屋の三方には母親が用意した盛塩が置かれたままになっている。
俺は昼間蹴飛ばした一皿の周りに飛び散った塩を急いで盛り直し残りの一角に設置した。
…シュ…ンチャ……
足元から崩れ落ちるように倒れた母親の体を即座に抱き止める。
ぐったりと動かなくなった母親を静かに床へ横たえると部屋の外から、地から響くような恨めしく狂おしい唸り声が聞こえてきた。
庭を見ると長い髪の少女が縁側に張り付いたままこちらを睨んでいる。
少女の顔も酷く腫れ上がり身に纏っている服はボロボロだ。
「未央姉ちゃん…」
少女は部屋に入るギリギリのところで動かない。
どうやらこの部屋には入ってこられないようだ。
あの時母親はこの塩を部屋の四隅に置いて、俗に言う〔結界〕を作っていたのか…
…俊チャン、イケナイ子…
約束シタノニアノ時モ……
険しく歪めた表情のまま俺から目を逸らさない少女。
俺も少女の赤く染まっていく瞳から目を離せない。




