①
…俊チャ…ン…
俺は捕まれた腕を無理矢理引き離し、まともに立てないまま部屋の中まで後退りした。
ぎこちなく、むっくりと起き上がった母親が徐々に月にうっすらと映される。
真っ赤に染まった腹部
乱れた髪
腫れ上がった顔は首元が大きく裂け左に傾いたまま固まっている
俺を見ているであろう瞳は焦点があっていない。
何が起きているのかすぐ理解出来るはずもなく、母親の姿にただただ脳が凍ってしまう程の衝撃を覚える。
「母ちゃ……」
いや…母親では、ない。
…私ノ、俊チャン…
“彼女”は足元をもたつかせながら縁側に手をついてゆっくりと部屋に入ってきた。
「未央姉…ちゃんか…?」
ウフフ…俊チャン、大好キ
願イハ叶ウ…ヤット願イガ叶ウ…
メリッ…!!
「…あっ!」
後退りする足が腐った床に落ち、尻餅をついた俺に母親の姿を借りた姉貴は
カックン、カックン、カックン…
少しずつ少しずつ近付いてくる。
そして固まって動けずにいる俺の前にたどり着くと冷たい手のひらを俺の頬へ伸ばした。
ぺた…
ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた




