①
半開きのままだった玄関からようやく外の世界へ出る。
薄暗い家の中で目が慣れてしまったため暗い印象だった家の周りでさえ眩しく見え、目を細めた。
母親は怒りで興奮してしまったのだろうか、少し息が上がっているようで大きく深呼吸している。
誰でもあんなものを見つければショックだし同じ女性であれば当人を軽蔑せざるを得ない。
しかしその当人が自分の元旦那で大切な娘を奪ったに等しい憎き相手となれば母親の憎悪、落胆は計り知れないだろう…
俺は先程見つけたものの事にはもう触れないでおこうと決めそして一つ提案をする。
「母ちゃん、少し寄りたいところがあるんだけど…すぐそばにあるあの公園。いいかな?」
母親は黙って頷き、また俺の前を歩き出した。
公園までは本当に近い。
ゆっくり歩いても2分程で着いてしまう。
然程大きくはないこの公園は入り口に立てば全ての遊具が見渡すことが出来、親子連れが数組遊んでいるのが見えた。
気が付くと母親は既に緑の絨毯の上で白い花を摘んでいる。
一緒に持ってきた花の冠を手首に掛けて。
同じ冠を作るつもりなのだろうか…?
俺は公園内をぐるりと一周まわってみる。
懐かしい…
記憶は断片的にしか残っていなかったのに遊具一つ一つから記憶が蘇るようにその時の情景が浮かんでくる。
そういえば、このゾウの滑り台が大好きでよく逆からも登って遊んでたな
バネの遊具はライオンよりもパンダが好きで
いつもパンダしか乗ってなかった気がする
赤いブランコを片手で漕ごうとしたら落ちて大泣きしたっけ
タイヤのブランコは押してもらうのが楽しくて嬉しくて大好きだった
黄色いシーソーも二人で乗って…
俊 ち ゃ ん
そう、俺はいつも二人で遊んでいたんだ。




