⑦
その固まりを取り出そうとビニールを引っ張ると簡単に破れてしまった。
細心の注意を払いながら中の固まりを直接手でほぐし固まりから離れかけた布をずるりと出してみる。
『それ』はボロボロになってワイヤーのような細い鉄が突き出ていたが、縁には女性らしいレースが施されていた。
「ちょっと、それ…!!」
驚いた母親は俺を押し退けて布の固まりを慎重にほぐしながらくしゃくしゃに型崩れした『それ』を次々と取り出していく。
これは……俺も何度かお目にかかった事があるものだ。
「これ、下着…だよな。ってか何枚出てくんだよ…」
積み上げられていくブラジャーやパンティなどの女性用下着。
ざっと30~40着くらいはありそうだ。
「あの時の…あの時の下着泥棒はやっぱり『あの人』が……こんな所に隠してたなんて。」
まだ収納庫の底で潰れたまま残っている下着達を眺めながら力なく呟いた母親にかける言葉など一言も見つからなかった。
ただ、長年抱いていた疑惑が確信へ変わった新たなショックで唖然とする母親と、くしゃくしゃの哀れな下着たちを見比べることしか出来ない。
「ごめん俊介、ちょっと一休みしよう。さすがに気分が悪い…。」
俺から顔を背け玄関へ向かった母親の後を黙って追った。




