④
俺は早速携帯ショップへ行き、なけなしのバイト代はたいて機種変更と共に番号とメールアドレスも変えた。
これでもうあのイタ電はかかってこなくなるだろう。
学生の俺にとってこの出費は痛かったが気になっていた最新機種を手に入れたと思えば嬉しくも思えるし気分も変わる。
よし、まずは香織に番号を教えておかなきゃいけねぇな、電話してみるか。
トゥルルルル…
トゥルルルル…
トゥ…
「はーいもしもし?」
少しの間を置いて、携帯から若干幼く可愛らしい香織の声が聞こえた。
「あ、香織?オレオレ、俊介。」
「あれ、俊くん。番号変えたん?って言うか学校は?もしかしてまたさぼってるー?」
いつもの明るい香織の声。
質問攻めはいつものことだが可愛い声と柔らかい言い方が俺にとっては癒し。
付き合って三年目に突入したにも関わらず俺は香織は"ぞっこん"なのだ。重複するが、まさしく"ぞっこんLOVE"なのだ。
「ああ、かくかくしかじかあって携帯変えたくなっちゃったからさぼっちゃった。香織に新しい番号教えようと思って電話したんだ。」
「…ったくもう、気楽でいいわね大学生は。」
呆れたように香織が笑った。
「あはは、大学生のうちが花!俺ちゃん今遊び盛りだしね。ってか、かけといて今更だけど香織、電話大丈夫だった?」
「うん、今一人だし移動中だから大丈夫よ。
私も俊くんに話したいことあるんだ。」
「ん、良い話?ヤな話?」
少しでも長く香織の声が聞きたくて茶化す俺にたぶん良い話だと思うけど?と香織が続ける。
「もうすぐ俊くん誕生日じゃない?ちょうど二週間後!私ね、俊くんの誕生日お祝いしに行こっかなーとか思ってさ。」
「…え!えーーーーマジで!?」
思わぬ朗報に大声をあげてしまった俺の横をベビーカーを引いた女性が少し驚いた様子で足早に去っていくのに気付き、慌てて声のトーンを下げる。