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「アンタが生まれてから私たちは家を買ったの。
小さくて少し古い家だったけど旦那と子供二人、ようやく『家族』ってものを築けたと思った。
とても幸せだったわ…でも母ちゃん、とんでもない事に気付いていなかった。
一緒に暮らし始めてから旦那は未央を今までより一層可愛がってた。
新しい洋服やアクセサリー、未央が好きな食べ物や雑貨を買ってあげたりね。
その時は未央も喜んでたし小学校の先生は本当に子供が好きなんだな、なんて呑気に考えて…でも、未央が中学にあがった頃から未央の下着がちょくちょく盗まれるようになったの。
近所でも同じような事件が起きていた。そしてある日、警察の捜査から一人の男が逮捕されたの。」
「ま、まさか…その男って…。」
「うん…そのまさか、よ。
最初は母ちゃんも何かの間違いだって主張してたんだ、あの人がそんな事するはずがないって。
でもこの事件を皮切りに旦那が勤めてた小学校で旦那から服を脱がされる体罰を受けただの、体を触られただの訴える女子児童やその保護者が相次いだわ。それも未央と同じような歳の高学年の女の子達ばかり。
結局盗まれた下着は家から一枚も出てこず、決定的な物的証拠がなかったからしばらくして釈放されたものの学校側からすれば児童・保護者からの訴えもこの事件も無視出来ずに旦那は懲戒免職、要するにクビになった。
…納得がいかなかったわ。あんな優しくて家族思いの人がそんな事件を起こすわけがない、って。
でも、今度は次第に未央の様子がおかしくなった。旦那を避けるように脅えたり母ちゃんや俊介のそばから全く離れなくなってね。どうしたのか理由を聞いても何も言わないの。
母ちゃんはそれまでまだ小さい俊介の事ばかり見てたから気が付かなかった…まさかと思って未央の体を見たら胸や腹、太股に多くのキスマークが付けられていたの…。
少しずつ大人になり始めていた未央の体を………」
母親は歯を軋ませながら悔しさに顔を歪め、固く握りしめた手に更に力を込めた。




