⑤
そこには、若かりし頃の母親と見られる女性と白いワンピースを着た一人の少女が写っていた。
胸下までのストレートな黒髪。
透き通るほど白い肌、華奢な体。
屈託のない可愛らしい笑顔を向けるとても美しい少女。
歳は14、5歳くらいだろうか。
白いワンピース…長い、黒髪…?
「こ、この子は……」
「この子の名前は未央。母ちゃんの…娘よ。」
!!!!!
あまりの驚きに一瞬息が止まった。
「む、娘?!って事は俺の姉ちゃん、って事か?」
「えぇ…父親違いのね。」
「えぇぇぇえぇええぇ?!!」
思わず叫んで痛くなった喉を冷たいお茶を一気飲みで潤しひとまず落ち着かせる。
「…って事は母ちゃん、再婚してたのか?」
「そう。未央を産んだのはまだ18の頃だった。
この子が生まれてすぐ旦那が病気で亡くなったの。
しばらくはうちの実家で未央と世話になってたんだけど未央が小学3年生の頃母ちゃん、ある男性と交際を始めたの。
それが俊介、アンタの父親よ。当時、未央の担任の先生だったわ。」
……………。
小学校教諭と生徒の保護者のイケナイ関係かよ…
いや、そんなふざけて考えてる場合ではない。
口を開けっぱなしの俺の目を真っ直ぐ見ながら母親は話を続けた。
「すごく優しい人でね。片親の未央の事をよく気にかけてくれて母ちゃんの相談にも乗ってくれてたんだ。
家庭訪問だけじゃなく未央と一緒に食事や遊びにも誘ってくれて母ちゃんと関係を持つまで然程時間はかからなかった。
そしてお腹に俊介がいる事がわかってその人と結婚したの。アンタがお腹にいると知った時本当に嬉しかったのよ。また家族が出来る、ってね。」
しかし乾いたはずの母親の頬はまた涙で濡れ始める。




