③
嗚咽を繰り返し声を出して泣く俺を母親は不思議そうに、心配そうに見ていた。
そしてあるものに気が付き顔色が変わる。
「俊介…どうしたの?コレ…」
母親が手にしたものは少し萎れてはいるがしなやかに複雑に編み上げられた小さなあの白い花の冠。
「この編み方、母ちゃんが小さい頃お母さんに教えてもらったものとまるで同じ…こんな複雑な編み方アンタに教えたことないわよね?」
俺はただ泣きながら母親の言葉を聞いていた。
「こんなもの、どこで…?だってこれを作ることが出来るのはあの子しか…」
あの子………?
俺は流れ続ける涙をTシャツの裾で拭って乱れる息を無理やり落ち着かせながら聞いた。
「母ちゃん…あの子って言うのは誰なんだ?」
「え……………あ…」
母親の顔がみるみる強張っていく。
「なぁ母ちゃん、俺にはこんな複雑なものを作ることは出来ない。でも母ちゃんはこの冠を作る事が出来る奴を知ってるんだな?」
「…さぁ…知らないわ。」
そう言う母親の瞳からも一筋、二筋と涙がこぼれ始めていた。
しばし沈黙が訪れる。
母親は、確実に何かを知っているはずだ。
しかしこれは母親にとって泣くほど辛い話なのだろうか…俺は言葉に気を付けながら慎重に沈黙を破った。
「俺さ、最近妙な夢を見るんだ。話を、聞いてくれるか?」




