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⑤
次第に息苦しい程黒に似た赤い世界が俺を包み込んでいく
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
ぐにゃぐにゃと怪しく歪み続ける赤い闇の中で
微かに聞こえる荒い息遣い
ハァ…ハァ…ウ…ゥ…ハァ…
感覚が掴めない空間を声が聞こえる方向へ進む
その声がはっきりとより大きく俺の耳へ届いてくる度に歪んだ世界は徐々に形を現していく
太く、大きな柱
花瓶に入ったままの、萎れてうなだれる花
古く、大きい壁掛け時計
ウゥ…ハァッ…ハァ…ハゥ…
耳を済ますと啜り泣くようなか細い声も聞こえる
何だろう、あの影
ゆらゆら揺れて……?
!!!
それぞれの声の主を見つけた途端心臓が止まりそうになった




