表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日の約束  作者: ウチダカツヤ
白イ花
21/75

「どうした?顔色悪いぞお前。」


「い、いやなんでもない。お前よりマシだよ。」


不自然に笑ってみせた直哉は俺から目をそらしキッチンへ行きカップ麺を取り出そうとしたが明らかに動揺した様子で数回カップ麺を床に落としている。

もしかして、さっきの…電話……


「おい、直…」

「何でもない、何でもないよ!」





ガタッ

ガタガタ!ガタガタガタッ…!





「何だ?!地震か?!!」

急に床が大きく揺れた。直哉愛用のギターや少々マニアックなフィギュアがバタバタ倒れ始める。


「うわぁっ…!」

突然、直哉目掛けて揺れにぐらついた本棚が倒れてきた。


「危ない!!」


…ガターーーン!!!!!



俺は咄嗟に直哉の腕を掴んで思い切り引っ張りギリギリでかわすことが出来た。しかし部屋の物全体が今にも倒れそうに大きく揺らぐ。


「外だ、外へ出ろ!!」

俺達は急いで玄関の外へ飛び出した拍子に倒れこんだ。



…!!


「な…んで……?」

「…どういうことだ?」

立ち上がった俺たちは呆然と外の景色を見渡す。


地震、ではないのか?あれだけ激しく揺れていたのに外は平然として静かだ。遠くで車の走り去る音さえ聞こえる。


「お、おい、俊介…見ろ!」

直哉はたった今飛び出したばかりのドアの奥を指差した。

そこに見えたもの…

それは歪むように大きく揺れ、次第に緩やかになって静止した“直哉の部屋”だった。

信じがたいが、直哉の部屋だけが揺れていたのだ。


「こ…こんなことって……」


口が塞がらない様子の直哉に(すが)るように問う。


「なぁ直哉、お前にかかってきたさっきの電話もしかして…。」


直哉は再び俺から目をそらし下を向いたまま動かない。


「さっきの電話は何だったんだよ?!」


予想を裏切る答えを待つ俺に、直哉は消え入りそうな声で答えた。


「…お前の名前をひたすら呼ぶんだ、『俊ちゃん、俊ちゃん』 って。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ