①
通夜翌日に行われた香織の葬儀から約1週間が経った。
ピピピピピ…
ピピピピピ…
「もしもし…直哉か?」
「おう。お前大丈夫か?学校にも来てねぇしバイト先にもいねぇから。もちろん、気持ちも分かるけど…。久々に遊びに行かねぇ?無理にとは言わないけどさ。」
励まそうとする直哉の気持ちは嬉しかったが、俺はとても遊びにいけるような心境ではなかった。
ぐるぐる巻きになった香織の姿が頭から離れずまともに飯も食えない状態が続いている。
「すまん…しばらくは一人になりたいんだ。」
「そうか…元気出せよ、何かあったらいつでも遠慮せず連絡しろよ!」
「ああ、ありがとう。じゃ。」
通話終了のボタンを押した後深いため息をついた。
俺は香織の死から妙な夢を見るようになった。
夢を見る、と言っても目を閉じれば変わり果てた香織の姿が浮かび上がり、恐ろしくて悲しくて眠りにつくことは出来ない。
『気を失って』見るものがそれだ、と言う方がきっと正しいだろう。
初めて見たのはたしか濃い霧がかかったような世界をふらふらとさ迷っている真っ白な夢だった。
右も左も、きちんと前に進んでいるかもわからない、何もなく誰もいない夢。
それがその夢を見る度に少しずつ情景が鮮明になり今では誰かが囁く声が聞こえるまでに変わってきている。
しかしその声はまるで聞き取れない。
ただ、誰かが子供をあやすような声。
時折聞こえる楽しそうな声。
いったい誰なんだろう…ひどく懐かしい感じがする。
だけど思い出そうとするとそれを拒否するように鈍い頭痛が襲う。
オ モ イ ダ シ テ ハ イ ケ ナ イ




