⑤
「香織はそんな事するヤツじゃない…絶対にそんな事するはずねぇんだよ!昨日電話した時はいつもと変わらない様子だったんだ!
俺の誕生日を祝う約束もしてくれて…なのに、なのに…どうしてぇ!!」
堪えられなかった悲しみが暴走するように大声で泣き叫び始めた俺に、周囲が一斉に注目する。
「俊介くん…!」
俺よりもずっと憔悴しきっているはずの宏紀が我に返ったように飛んできて俺の背中をさすってくれた。
「すまない!すまない俊介、宏紀…。」
慌てて謝罪する直哉はまともに立てない俺の肩を抱き近くの椅子に座らせた。
ただ、親友の顔を見て何かの糸が切れた俺の目からは止めどなく熱いものが溢れどこへぶつけることも出来ない悔しさが嗚咽となり漏れ続ける。
「落ち着け俊介…本当にすまなかった。な、落ち着こう。」
優しく宥めるように俺の手を握った直哉の手と背中をさする宏紀の手を乱暴に振りほどいた俺は椅子から立ち上がった直後膝から崩れ落ち、そのまま額と拳を何度も冷たい床に打ち付けた。
「香織ぃぃ…死んじまったなんて嘘だろ?
何で…何でぇ!!香織ぃ!香織いぃぃ!!!」
香織を想えば想う程激しく取り乱してしまう。
コントロールを失った俺は、直哉と宏紀に両肩を支えられ控え室へと運ばれた。
すれ違い様に香織の親族や同級生達が何やら小声で話していたが、俺には何も聞こえる状態ではなかった。
「…ねぇ、さっき香織の親族の人が言ってたの聞いちゃったんだけど。」
「え?何?」
「香織を轢いてしまったトラックの運転手が言ってたんだって。歩道橋から落ちてきたのは香織だけでなく女の子二人だった、って…。」




