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②
「…もしもし?」
数回コールした後久しぶりに聞く香織の母親の声が携帯から小さく聞こえた。
「あ、おばさん?俺です、俊介です!
昼間から香織さんと連絡が取れなくて心配で今寮の前に居るんですがやっぱりまだ帰っていないようで、ええと、その、あの…。」
この状況をどう説明すればよいのか分からずしどろもどろ説明をする俺の話を黙って聞いた後、母親が力なく答えた。
「私も俊…介君と連絡がとりたかっ…たの。
で…も携帯が変わった…のよね…宏紀は聞きそび…れたって……」
あれ、涙声になっている…?
「すみません、少し慌ててて…えと、俺に連絡って…?」
「俊介君、落ち着いて…聞いてちょうだいね。実はね、実は……香織が、事故にあったの。
歩道橋から飛び降りて……トラックに…。」
「な…!!」
香織の母親の言葉がうまく飲み込めなかった。
ただ日が沈んだ暗い夜道を無我夢中で原付を走らせ香織が運ばれたと言う総合病院へ向かった。




