①
俺は二週間後、とうとう二十歳になる。
これと言って夢もないまま大学へ進んで2年目を迎えたが勉強もバイトもそこそこに遊んでばかりの毎日を送っている。
勿論、漠然とした将来への不安はあるが、ただ実感が湧かない
…と言うか危機感がない。
少なくとも、俺の周りにいるほとんどの奴らは俺と同じだと思う。
そのくらい俺はどこにでもいる普通の学生だ。
しかしそんな俺でも二十歳の誕生日を迎えるとなるとワクワクするし、気も引き締まるってもんだな。でも……
「どうした俊介、何うかない顔してるんだよ?」
直哉は俺と同じ大学に通う高校時代からの親友だ。
根っからの友達思いでそれなりに顔も良い
…と俺は思うが、どうも女の子の評価は違うらしく半年ほど彼女がいない。
性格や価値観は俺とそっくりで本当に付き合いやすい奴だ。
「…うーん、そりゃうかない顔にもなるさ。
二十歳の誕生日ってのになーんも予定がないなんて。寒いよなぁ…俺。」
そう答える俺に直哉は同情するように、しかし半笑いで俺の肩を叩いた。
「まぁ仕方ないよな。香織ちゃんも就職活動で忙しそうだしお前と遊ぶ暇もないんだろ?
あーあ、それに比べて何てヒマな大学生。
かーわいそっ!」
「うっせーなぁ、これでも結構凹んでんだぜ
俺ちゃんも。」
リアルに凹み気味なのをからかわれ、直哉を軽く睨みながら溜め息混じりに言い返す。
そう、今年の誕生日は香織の都合がつかないので一人で過ごすこととなった。