遭難者で来訪者でサバイバー 2nd
●:そういう訳で二話目なんだそうだ。
○:『なんだそうだ』って他人事みたいに。
●:実際俺ら登場して無いし、十分他人事だろ。
○:そりゃまぁそうか。
注:投稿後しばらくは細かい改変が為されるので、数日後に読まれると話が変わっている場合があります。
【ここはどこ? 私はクロボシ】
★:私の名はクロボシ・ハズム。かつては国立宇宙航空研究所に勤める腕利きの試験操縦士であり、過酷な日常と戦い続ける精鋭中の精鋭であった。
@:……おい。
★:だが、あの日、『パイオニアⅢ』のコックピットから目撃したあの衝撃の光景が私の運命を大きく変えてしまった。
@:……おいってば。
★:あの『管理者』と名乗る存在によりコックピットからいきなり『引きずり出されて』『跳ばされた』その日から、私の世界はまるっきり変わってしまったのだ。
★:地球と似た町、地球と似た店舗、地球と似た公園。微妙に似ているその違和感。路上を行き来する車に違和感、通りすがりの住居から聞こえてくる音楽に違和感、軽食屋の屋台であわただしく食事をする人の姿に違和感。
★:微妙に違う、その微妙な違いが私の精神を責め苛み、蝕んで行く。
★:この町で、いやこの世界で私だけが異邦人として存在し、あの懐かしい世界へは還れなくなってしまったのだ。
@:おい、またそんな妙なこと言ってんのかよ? シロボシ?
★:そうなのだ。私はあの『管理者』と名乗る存在に『跳ばされた』世界ではタルーム・シロボシと言う人間に『成っていた』。
★:周囲の人間も私のことはシロボシとして扱い、何の疑問もなく私をシロボシとして遇してくれている。
★:だが、誰が何と言おうと私はクロボシなのだ! クロボシ・ハズムなのだ!
@:あ~……こりゃダメだわ。医師!、医師!
★:うわなにするこらやめ……(がくっ)
@:ったく、どうなってんだシロボシの野郎、まぁ、あの『実験』とやらの生存者は皆コイツみたいにアタマをヤられて『別世界から来た人間だ』言うてるらしいんだが。
@:軍の連中も酷いことするよなぁ、彼方此方からエキスパート集めといて『新型機』とやらの実験やって、失敗したら『実験? そんなのやったかなぁ?』『あれは通常任務遂行中の事故でした』『実験なんてやってないって言うてるだろうが!』
@:その内幕僚幹部で責任者とかいうヤツが『失踪』して『彼が勝手にやってたことで何もわからなくなりました』でチョン。
@:ったく、フザケンナってんだ。で、実験に参加した生存者は元の職場に戻して『面倒見ろ、補償金は出す』。『上』は軍には逆らえないから引き取る。
@:同僚だったからって世話押し付けられた俺らはいい迷惑だっつ~のっ!
★:……わ…わたしは…クロボ…シ……クロボシ……ハズ…ム……
@:はいはいわかったわかりましたって、クロボシハズムさん。部屋に戻りましょうね。
@:ってなぁ、かつては天才生体技工士として知られたタルーム・シロボシがこんなんなっちゃったって。まったくなんてことしてくれるんだ軍の連中は。
(続く……かな?)
●:ところで、クロボシ・ハズムって名前なんだがな。
○:うん。
●:漢字で書いたら『黒星 弾』になるんだ。
○:それってモロボ…
●:それは禁則事項。
●:ついでにタルーム・シロボシの『タルーム』はだな。
●:弾む→弾性の反対語で塑性、で塑性に似た感じの言葉は『たるむ』が近いかな? ってんでそのまま『タルーム』になったんだと。
○:言葉遊びが過ぎるな。
●:同感だ。