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《神》の古具使い  作者: 桃姫
京都編
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98話:激戦SIDE.GOD

 俺は静巴に言い訳するだけ無駄だと悟り説明することにした……のだが、説明のしようがないので、一応、無理に説明することにする。


「いや、秋世には昨日、迎えに来てもらったんだよ。昨日はちょっと冥院寺家のいざこざに首を突っ込んでてな。そんで迎えに来た秋世が俺をホテルに連れ込んだんだよ。もちろん何もなかったぞ?」


 今の説明は概ね事実だ。嘘は一切言っていない。すると静巴は、俺の顔を見て、言っていることが本当だと分かったのか、頷いた。


「嘘はついていないようですね。まあ、信じます。ですが、その、なるべく迷惑をかけないようにしてくださいね?」


 それは誰に迷惑をかけないように、と言うことなのだろうか。立場的なことから学校側に迷惑をかけるな、と言っているようにも聞こえるが、「わたしに迷惑をかけないでください、心配したんですよ」と言っているようにも思える。おそらく後者だろう。てか、後者であってほしい。


「ああ、迷惑をかけないようにするさ。お前を困らせたくないからな」


 そう言って微笑みかけた。すると、静巴は見る見るうちに頬を真っ赤に染めて茹蛸のようになった。可愛いなぁ。


「うぅ……。わ、分かったならいいんですよ」


 小声でそう言った静巴。相変わらず、と言った感じだ。俺は、受け取った【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】を腰に()げながら、列に戻っていく静巴の背中を見送った。


 ――そのとき、俺の聴覚が何を捕らえた。


「きゃあっ!」


 ……悲鳴?それもただの悲鳴ではない。女の子の……おそらく先ほどのディスターヌと言う少女だろう。


「ディスターヌ!」


 辰也と言う青年の声も聞こえた。


 何があったんだ?!


 俺は焦る気持ちを抑えながら、どうするか考えた。どうやら生徒の多くも聞こえたようで、ざわついていた。


「ちょっと、何で、あんた等がここにいんのよ!」


 そんな女の子の声もする。あの声はカノンちゃんだ。しかし、今のあんた等は、ディスターヌや辰也のことを指しているのではないと思われる。……つまり、悲鳴の原因と言うことになるのか?


「チッ」


 俺は厄介ごとの予感を抱えながら、周囲の気配をたどる。生徒達の気配の所為で少々乱れているが、少し離れているディスターヌや辰也、カノンちゃんの気配は分かった。それともう5つくらいの気配が向こうにある。つまり5人の敵がいるってことか?


「秋世、俺は向こうを見てくる。念のためにここで桜麻先生と待機していてくれ!」


 そう秋世に言い放った。そして、流石に1人では不安か……。誰かを連れて行くべきだ。静巴か、紫炎か、守劔か……。いいや……


「七星佳奈さん、俺についてきてください」


 あえて誰でもなく、七星佳奈を選んだ。この中で異世界に対する耐性が一番高いのは七星佳奈だ。ディスターヌや辰也に対する説明にさらに異世界に対する説明をする手間がかかるのは面倒すぎる。


「紫炎、警戒はしておけ。お前のは一番バレにくい力だから」


 紫炎の《古具》である《本能の覚醒サバイバル・インスティンクト》は、パッと見では瞳の色が変わることぐらいしか見た目の変化がない。だからこそ人前で使ってもばれ難いと言う利点がある。それゆえに紫炎をこの場に残していくのだ。


「いざとなったら人前で使ってもらう。信じてるぞ」


 あえて、ここで信じているという信頼の言葉を言う。そう、紫炎は京都に行くのに俺を頼ってきた。その逆をやっていることで恩を返さなくちゃ、と言う紫炎の心理を突いたものだ。まあ、紫炎の場合はそんなことをしなくてもお願いするだけで聞いてくれそうだけどな。


「はぁ……。私の出番、ですか?面倒ごとは避けたいのですが」


 七星佳奈はまったく乗り気ではないが、しかたないじゃないか。我慢してもらおう。この場は彼女を頼ったほうが早く片がつく。


「仕方ありませんね」


 渋々、と言う表情で七星佳奈は俺の後ろをついてくる。いまがどういう状況か分からない以上、七星佳奈は凄く頼りになるのだが……。







 奈良公園の敷地内の一角で事件は起きていた。どうやら状況から察するに、5人の男がディスターヌと辰也を取り押さえているようだ。カノンちゃんは少し離れたところに立っている。そして、どう考えても、押さえている5人の方が敵っぽい。こっちをガンガンに睨んできているしな。


 俺は【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】を抜刀し構える。【天冥神閻流】の構えだ。


 七星佳奈も同様に呼び出した禍々しい異形の斧を構えている。これはもしかして……《死古具ダリオス・アーティファクト》ってやつか。


「オメェは、青葉紳司だな。昨日はマコトが世話になったようだな」


 マコト……真呼十のことか。と言うことは天城寺家の人間か。なるほど、それならカノンちゃんの「あんた等」と言う言葉も得心がいく。同じ司中八家の人間なら面識があってもおかしくないからな。


「天城寺家の人間か?」


 俺の問いかけに男の1人が笑い声を上げながら愉快そうに、こちらに言ってくる。何がそんなにおかしいんだ?


「ハッハッハ。お前のおかげで俺達にもチャンスってのが出来たんだよ!感謝するぜぇ?」


 チャンスだ?どういう意味かは全く分からん。ちゃんと理解できるように言って欲しいんだがな。


「マコトの野郎が、俺等の序列1位だったんだよ。もう次期当主はあいつに決まりだなって時に、あいつがお前の所為でしくじりやがった。それで、お前を殺した奴が次の当主だってジジイが言い出したんだ。マジ感謝するよ」


 なるほどな。それで、俺を殺すチャンスをうかがっていたら、同じく俺にしつこく仕掛けに来たカノンちゃんや、偶然この場にいたディスターヌと辰也が巻き込まれたってことか。


「なるほど、俺を殺せば、ねぇ。冥院寺家と明津灘家、チーム三鷹丘に喧嘩でも吹っかける気なんか?」


 俺が冥院寺家と繋がっているのは知っていただろうし、調べれば明津灘家やチーム三鷹丘との繋がりは簡単に出てくると思うんだが。


「はぁ?何言ってやがる?わけわかんねぇこと言ってねぇでとっとと殺してやるよ」


 あ、こいつ馬鹿なのか。と、思ったら5人とも馬鹿みたいだ。何なんだよ、こいつ等……。


「あ~、無駄よ。こいつ等の家はウチよりも古いから。外のことに一切興味がないから……。名前くらいは調べたんでしょうけど後の繋がりはどこにもコネがないからどうにも成らなかったんじゃない?

 【仏光】の名前の通り、仏教のことしか頭にない連中が親玉で、あとの連中もそれにしたがって頭が固いのなんのって。そして自己中心的で、自分が凄く強いと思っているのよ」


 カノンちゃんがそう説明してくれた。なるほどな。ようするに仏教第一、他の事なんてどうでもいい、跡を継ぎたきゃウチの看板にドロ塗った奴を殺して来い!ってことか。それ、仏教じゃねぇよ。


「ああ、居ますよね、ああいう連中。ドルガッソ教のドルガッソ教国の連中なんかは酷かったですから。鎖国とか言って、しかも鎖国の前にその国に入った異教徒は皆殺しとか言うので私と海魔騎士(ラハム)で国ごと潰しましたが」


 国ごと潰したのか……ナナホシ=カナならやりかねない、と思ってしまえるあたり、俺の常識とやらは既に世間の常識からかなりかけ離れているらしいな。


「全く持って面倒だ。七星佳奈さん、俺が5人と戦っている間に、囚われている2人を救出していただけませんか?」


 俺のお願いに、七星佳奈はやれやれと肩を竦めると、手に持っていた斧を消した。


「分かりました。では、あの雑魚たちの相手は任せます」


 雑魚と言われた5人が「ざっ」と何か言いたげな顔をしていたが、言う前に俺が、刀の構えを変えたからその言葉は止まった。


「さて、と。奥義……十式其之一(そのいち)華炎(かえん)》」


 【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】の桜色の刀身が炎を纏う。


「さあ、かかって来いよ」


 俺の言葉を合図にするように3人が俺に襲い掛かってくる。2人はディスターヌと辰也を押さえている。


「ハッ、死ねぇ!」


 襲ってくる男を炎で牽制するように放つ。とぐろを巻く様に炎が男を包む。そして、その隙に刀の峰で男を倒す。


無劔(むつるぎ)


 そして、その後ろの男を手刀で倒す。さらにもう1人を【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】でねじ伏せた。


「くっ、この!」


 残りの2人が、ディスターヌと辰也を放して、俺に襲い掛かってくる。その隙を見て、七星佳奈が2人を救出した。


「《神王の雷霆(ゼウス・ケラウノス)》!」


 ここで俺は雷で体を覆い、全ての攻撃をカウンターで返す。そして、襲い掛かってきた男の拳が雷に触れた瞬間にカウンターと天罰により崩れ落ちた。もう1人も同様だった。


「あっけないな」


 あっさりと全員を潰すことが出来た。俺は刀を鞘に収める。収めるときに纏っていた炎がフッと消えた。


 こんなものだろうか。


 と油断していた辺り、俺は少々抜けている。最初に倒した男が地を這うように駆け出した。


「チッ、なら、あいつ等を人質にぃっ!」


 ダメなら人質をとればいいって?


 ああ、まあ、確かに有効な作戦なのかも知れない。だが、相手が悪すぎる。俺は、《神王の雷霆(ゼウス・ケラウノス)》を解いて、その場から少し距離を取り、カノンちゃんのところへ移動する。


 何故かって?巻き込まれるからに決まってるだろ。


「鬱陶しいですね」


 《死古具ダリオス・アーティファクト》、《殲滅の斧ジェノサイド・ラブリュス》を手にした七星佳奈へ攻撃を仕掛けた馬鹿の巻き添えはゴメンだ。


――ザァアアアアン!


 甲高い音共に辺りが薙ぎ払われ、その余波で体が吹き飛びそうになった。おそらく、今のはほとんど本気なんて出していないのだろう。

 しかし、男達は吹き飛び、木々も強い風で葉っぱが結構落ちてしまっている。まあ、折れていないだけましだろう。


「まったく、結局私が始末をしているじゃないですか」


 そんな文句をいいながら七星佳奈は《殲滅の斧ジェノサイド・ラブリュス》をしまった。そして、ディスターヌたちの方を見る。


「いやぁ、助かりましたよ。僕等の力って制限が効かないから……危うく押さえている人を殺しちゃうところでしたよ」


 などとあっけらかんという辰也。殺しちゃうところって……。まあ、それほど強力な力ゆえに対抗しなかったんだろう。ディスターヌもおそらく同じだろう。


「全くデス。弱そうデシタからオウジさんの言葉を守って攻撃しませんデシタ」


 なるほど、父さんの言いつけを守ったんか……。


「と、とりあえずよくわかんないけど、今日は邪魔が入ったわね。つ、次こそはあんたを倒すから覚悟しておきなさい!」


 カノンちゃんがそう言って走り去っていった。……なんだったんだ?まあ、走り去るときに揺れたおっぱいが眼福だった。


「ったく、2人とも早く戻ったほうがいいよ。七星佳奈さん、彼等の詳しい説明は向こうに戻りながらしますので」


 そういうと、七星佳奈は肩を竦めながらも俺の後を追うように歩いてくれた。さて、簡単に説明するとしますか。

 え~、ネットの繋がらない田舎に帰省するため予約投稿で投稿しました。きちんと予約投稿が機能していれば12/31の18:00に投稿されている予定です。……投稿されていますよね?


 これが今年最後の更新になります。来年もどうかご愛読いただけたらと思います。

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