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《神》の古具使い  作者: 桃姫
京都編
80/385

80話:陰としてSIDE.GOD

 俺と大地の戦いは終わった。俺の勝ちだ。ちなみにだが、俺は戦いの最中奥義をこれだけ連発していて、それでまだ奥伝なのか、と言うことについて説明させてもらおう。

 【天冥神閻(てんめいしんえん)流剣術】における奥義は一式から特式まで数多くあるが、俺は二式と六式、特式()、十式其之八を習得していないが故に、奥伝なのである。

 【天冥神閻(てんめいしんえん)流剣術】。天界も冥界も、神も閻魔も、全てを斬る剣術、故に【天冥神閻(てんめいしんえん)流剣術】。





 さて、俺は、【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】を鞘へと収め、大地にこう言った。


「確かにお前は鬼才かも知れない。努力をしつづけているかもしれない。ただ、それを上回る天才ってのはどこにでもいる。

 まあ、そんなときは、さ。武器変えるとか、いろいろ別方向の努力もいるってことは忘れんなよ?まあ、アンタなら大丈夫そうだけど。

 まあ、新しい武器、刀だったら困らないだろうしな」


 俺は豪児氏のコレクションを思い出しながらそう言った。すると大地は、俺に向かって質問した。


「では、お前は天才なのか?」


 なるほど、そういや、俺が勝ったら俺が天才って話になっちまうのか?まあ、違うんだが……。


「いや、俺はただの凡人さ。ただ、この刀は天才のために造った物だし、剣技は天才から教わった」


 故に、この俺は、凡人でありながら、鬼才の大地に勝つことが出来たんだ。まあ、その凡人であったのも六花(りっか)信司(しんじ)であって、俺、青葉紳司ではないんだがな。

 俺と大地が話をしていると、そこへ紫炎がやってきた。静かに戸を開け、俺と大地が話している様子に驚愕して固まった。


「し、紳司君、どうだったの?」


 紫炎が恐る恐ると言った表情で聞いてきた。俺は、紫炎に笑って答える。


「ああ、勝ったさ」


 それを聞いた紫炎は顔を綻ばせた。








 もう夜も遅いから泊まっていけ、と言う話になった。しかし、夜にはせめて旅館の自室にいないといろいろと危うい気がするんだが。


「まあ、どうにかなるんじゃないかな?」


 紫炎がそう笑っていたので、泊まっていくことにした。静巴とも顔があわせづらい状況だし丁度いいと言えば丁度いいか。


「あら、全員揃ってなんのパーティです?」


 そこに、女性がやってきた。茶髪をサイドポニーにした優しそうな美人だった。耳につけている赤紫色のイヤリングが印象的だ。俺は、その女性を見て違和感を覚える。どことなくおかしいような、そんな感じ。


守劔(するぎ)、帰ってきていたのか?」


 大地がそう言った。守劔(するぎ)……?って確か大地の奥さんだよな!マジか……。こんな美人と結婚してるのか、この男。


「ええ、ついさっき」


 そう言った彼女からにじみ出る気配に妙な胸騒ぎを感じる。複数の気配と言うか、複数の何かが彼女の中で蠢いているようだ。


「……蒼刃の子がいるんですね?」


 そして、彼女は、さきほどよりも低いトーンで俺の方を見てそう言った。大地が疑問そうな顔で俺と守劔(するぎ)を見た。


「知っているのか?……蒼刃?六花(りっか)信司(しんじ)と名乗っていたが」


 ああ、そういえば大地には俺の本名、てか今の名前である青葉紳司ってのを伝えてなかったな。


六花(りっか)信司(しんじ)はかつての名前だ。今は青葉(あおば)紳司(しんじ)と言う。……で、そういうアンタこそ、なんだ?気配が複数蠢いているが……」


 気味が悪いな……。それに、どこか不思議な気配。かつて味わったことのある殺気の塊の様な……。


六花(りっか)……。アルレリアスの……?いえ、この場合は……。

 天才鍛冶師の六花(りっか)信司(しんじ)ですか。……確か、彼は、あの地で命を落としていたはず。

 と、言うことは、転生体ですか。

 これは失礼しました。わたしは、明津灘守劔(するぎ)。旧姓を烏ヶ崎(からすがさき)守劔(するぎ)。【神代(しんだい)大日本(だいにほん)護国(ごこく)組織(そしき)】第一師団・『八咫鴉(やたがらす)』の一員です。神代(かみよ)と書いて神代(しんだい)ですのでお気をつけを」


 また訳の分からない組織が出てきたな。しかも大日本護国組織ときたもんだ。日本を守るってことだろう?訳がわからんなっ!


「青葉紳司君……と言いましたか?では、あのチーム三鷹丘の青葉王司殿のご子息でしたよね。わたしの伯母の婚約者の友人が青葉王司殿でしてね」


 また父さんの関係者かっ!いい加減にしろ!俺の周りには秋世といい聖騎士王といい、どうしてことあるごとに父さんの関係者が出張って来るんだよ。


「なるほど、妙な繋がりがあるものだ。それよりも守劔さんや、今回はどこへ行っておったんや?」


 豪児氏が守劔(するぎ)に尋ねた。すると守劔(するぎ)は、暫し考えるようなそぶりを見せてから言った。


「はい。少々実家の近くに《終焉の少女》が出た、と言う情報があったので向かったのですが、既に姿がなかったので戻ってきました」


 《終焉の少女》……。それって、


「マリア・ルーンヘクサ、か」


 俺は思わず呟いた。この修学旅行に行くのに関して、コイツの名前はよく出てくるな。七星佳奈といい、守劔(するぎ)といい。


「《終焉の少女》をご存知ですか?」


 守劔(するぎ)が俺に聞いてきた。無論、それなりには知っているが、そこまで詳しいことは姉さんじゃないとな。


「いや、名前程度だ。詳しい話は姉さんの方が知っているだろうな。直接の面識もあるくらいだから」


 そう、こういった超常現象系は姉さんの方が圧倒的に知っている。裏系のことは、どうやら姉さんの方に集中しているらしいから。


「姉さん?王司殿は娘さんもいたのですか?」


 あらら、どうやら父さんと母さんの子が双子って認識はないらしい。……そういえば、秋世も聖騎士王も俺に姉さんのことは聞いてこなかったっけ。


「ああ、いるけど?青葉暗音姉さん」


 俺は当然の如く、そう言った。だっているのは事実だし。しかし、さっき言ったように姉さんに裏系のことが集まるように、父さんやら何やらの方は俺に集まっているらしい。


「そうですか……。って、そういえば何故ここにいるんですか?」


 え、ええ……今更?


「紫炎の《陰》になるって約束で、その試練を受けに、ね」


 俺がそう言うと、守劔(するぎ)は、驚いたように目を見開いた。何がそんなに驚きなんだろうか。


「へぇ、ウチに入るんですか?紫炎ちゃんよかったですねぇ……」


 そうのほほんと言った。その瞬間、その中の蠢きが強まった。思わず鳥肌が立つ。そして、【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】すら声を漏らした。


『貴方は、【赤紫色の仲介者(ナドレ)】のヴェーダ・ルムバヨンですか?』


 【神刀(しんとう)桜砕(おうさい)】の呼びかけに、軽く目を見開いてから、肩を竦めて守劔(するぎ)が口を開く。


終極神装(ラグナロク)


 彼女のイヤリングが眩い赤紫の光を放つ。それが全身へと伝い、髪や瞳が変色していく。常軌を逸した現象に、俺はただ見ていることしかできなかった。


「わたしとそして、生涯の契約を結んだ天使、【赤紫色の仲介者(ナドレ)】のヴェーダ・ルムバヨンさんです」


 ナドレ……?ルムバヨンはマレーシア語で赤紫って意味だよな?


「『八咫鴉(やたがらす)』に所属していたヴェーダさんがわたしと契約を結んでくれたんですよ」


 守劔(するぎ)がそういうと同時に、別の声が脳に響くように聞こえてきた。


『まあ、サルディアが契約結んでんのに、あたしだけ結ばないのはムカつくのでな。あいつときたら、姉のメルティアに「あらあら、お姉さまは未だに誰とも契約なされてないんですかぁ?」って挑発しまくってたからな。いずれその矛先があたしらに来るんじゃないかってひやひやものだった』


 どこか男っぽい口調の女性の声。これが、天使ヴェーダ・ルムバヨン……。天使ってもっと神々しいものを想像してたけど、どこの世界でも一緒みたいだな。主に人間関係と個性が。


「おっと、そろそろ用事があるから失礼するよぉ~」


 そう言って、魔法少女合法ロリ人妻こと明津灘偉鶴が出て行く。それに付き添うように木硫も付いていった。

 さて、そろそろ寝たいところだな。俺は紫炎を見ながら聞く。


「そろそろ寝ないか?」


 明日は朝早いんだし。しかし、俺がそう言うと、紫炎は頬を紅く染めてしまった。何でだ?


「ほぉ、親の前で堂々と。その心意気、実にいい」


 豪児氏がそんな風に言う……のだが、意味は分からない。まったく訳が分からんなっ!


「さあ、向こうの部屋に用意はしてある。無論、夜の間は邪魔が入らないように言いつけてあるから、存分にするといい」


 するって、寝ることをするってことか?まあ、どうでもいいか。


「さあ、紫炎、とっと連れて行くんだ」


 俺は紫炎に引っ張られて部屋へと向かったのだった。

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