71話:夕食SIDE.GOD
俺は、静巴を連れて夕食の会場になっている地下1階にある宴会場1に来ていた。なお、宴会場2が隣接していて、そっちが姉さんのいる鷹之町第二高等学校の生徒達の食事の場所だと思われる。
俺達が部屋に入ると、既に座席にご飯が並んでいた。夕食のメニューは、以下の様なラインナップになっている。
ステーキ。なお鉄板が熱くなっているのでご注意ください。
サラダ。京野菜ときのこのサラダ。ドレッシングはテーブル中央の物よりお好きなものを選んでご使用ください。
ご飯。おかわり自由なので、おかわりが欲しい場合、近くにいる女中に申しつけください。
スープ。オニオンスープ。おかわり自由なので、おかわりが欲しい場合、近くにいる女中に申しつけください。
などと言った感じだ。しかし、ステーキか……。そんなことを考えていると、「お花を摘みに」行っていた静巴がハンカチで手を拭いながら、女の子座りでペターンと俺の横の座敷についた。
「どうやら、向こうの学校は焼き魚をメインにした和食みたいですね」
まあ、と言うかお座敷で西洋料理の方が場に合わないのだから向こうの方が正しい気がするが、きっと秋世が無理を言ったに違いない。大抵、こういったことは秋世の私情が絡んでいる。
「と言うか、向こうは和食なのか……」
姉さんは……あー、こう言っちゃなんだが、お察しの通り肉が好みだ。豪快にかぶりつく感じの。そして、魚と野菜はあまり好きではない。嫌いじゃないけど、好きでもないってのが一番しっくりくる表現だろう。
「なぁ、静巴。静巴ってさ、料理できるの?」
俺は興味本位で聞いてみた。なんとなく、聞きたい気分だったのだ。静葉は料理はテンでダメだったから静巴はどうなのかって気になった。
「一通りは出来ますよ。和食を中心に洋食も中華料理も。家庭料理も得意ですから、今度、学校お弁当を作ってきましょうか?」
おお、手作り弁当!コレは憧れの学園生活シーンの中の1つじゃないか。ものすごくありがたい。
「マジで?凄ぇ、嬉しい」
俺は素直に喜んだ。なるほど、静巴は家庭的なのか。いや、ある意味、料理できなくてもそれはそれでベタだからよかったんだが。
「ええ、青葉君が言ってくれればいつでも作りますよ?」
へぇ、そいつは嬉しいな……。ふむ……。
「俺は、こういう家庭的な人と結婚したいな」
そう、姉さんや秋世みたいなのではなく、きちんと料理や洗濯などの家事ができる人じゃないと。
「ふぇ?」
俺が呟いた言葉を聞いていたのか、静巴が妙な声を漏らした。しまった変に思われたか?なんて思ったのだがそんなことはなかったようで、むしろ、俺の方を凝視していた。
ついでだから俺は聞きたいことを聞いておこう。
「静巴は、料理できるんだったら、洗濯とか掃除とかもできるの?」
俺の問いかけに、静巴は、一瞬呆けた顔をしてから、頬に少し赤みを帯びさせつつ答えた。
「は、はぁ……、まあ、花嫁修業に、炊事、洗濯、掃除、華道、茶道などは学んでいますが」
へぇ、炊事、洗濯、掃除の他にも華道、茶道もやっているのか。理想のお嫁さんって感じじゃないか。
「でも、そこまで花嫁修業とかやらされてるってことは許婚とかいるのか?」
思わず思ったことが口に出ていた。ふむ、静巴の家は、大グループである花月グループの一人娘だしな。
「い、いえいえ、わたしなんて全然。親にも好きな人と結婚していいと言われていますし」
好きな人、のところでチラチラと俺のことを見てきたんだが……。ふむ、好意的な意図で受け取っていいものか。
「あら、まだ、食べてなかったの、2人とも」
そんなとき秋世が近寄ってきた。気がつけば、周りの生徒達は、もう食事に手をつけていた。早い奴は、もう食べ終わっている。
「はぁ、秋世はいつもいつも」
静巴はブツブツと呟きだす。さて、俺はどうするか。まあ、食べることぐらいしか選択肢はないわけだが。
「あっ、そうだ。秋世。夕食をステーキにさせたのお前だろ」
俺がそう言うと、秋世が目を丸くした。ついでに、静巴がなんだか面白くなさそうな顔をしていた。
「えっ、何で分かったのよ?」
まあ、座敷だから基本が和食なのは想定していたからな。それが無理やりステーキに変わってたら何かしたのはこいつくらいだろう。
「な、何よ。悪い?アメリカで暮らしてたときにステーキとかの方が食べなれてたから、和食よりもこっちの方がいいのよ」
そういえば、アメリカで暮らしてたことが有るとかないとか。そういえば、日本で言う京都や恐山、三鷹丘、イギリスで言うストーンヘンジやロンドン、と言った《古具》の生まれやすい場所がアメリカにも有るらしい。有名なのがエリア51とかワシントンD.C.とからしいがな。
「いや、悪くないが。そういえばお前は料理ってできるのか?」
静巴は出来るようだが秋世はどうなのだろうか。例えば、同じくずぼらな姉さんだが、料理はかなり得意なのだ。だから秋世も料理が出来る可能性がある。
「はぁ?何よ。一通りは出来るわよ?でも、面倒だから外で済ませるか買ってくるほうが多いわね。私、忙しいし。
昔、ルラさんの面倒を見ていたときは、時々料理作ってあげてたけど。あ、ルラさんってのはあんた等の先輩で20年くらい前の私が受け持ってた生徒よ」
へぇ、昔受け持ってた生徒ね?それに俺等の先輩ってことは三鷹丘学園高等部出身の生徒か。
「秋世、その生徒ってウチの両親とも面識があったのか?そのくらい前だったらウチの両親も通っていたころだろ?」
俺の言葉に、秋世はくすくすと笑う。静巴は、その様子にどうしたのかとぎょっとしていた。
「いえ、そうね。ルラさんも王司君も同じクラスで私が受け持った生徒だったわ。他にも篠宮さんや月丘君なんかが一緒によくいたわね。で、貴方のお母さんである七峰さんは、その一学年上だったわ。懐かしいわね」
ババアが思い出に浸っていた。しかし、父さんと母さんか。見た目がほとんど若いままだから年とか気にしてなかったが、母さんの方が1個上だったのか。
「そういや、秋世はじいちゃんの代から知ってるんだっけ?」
俺がそう問いかけると、秋世は、「ええ、そうよ」と笑った。そして、秋世は続けて言う。
「清二さんや美園さん、彼方お姉さま、真琴さん何かとは面識があったわね。あと粟木さんや……ってあげるとキリがないんだけど」
どうやら、流石にじいちゃんよりは年下だからか、じいちゃんは「さん」付けで呼んでいるようだ。
「ふぅん。てか、秋世は食わないのか?冷めるぞ」
ちゃっかり秋世の話を聞きながらステーキを口に運んでいた俺と静巴。その様子に秋世が暫し呆けた。
「ちょ、人が話してあげてるのに、食べないでよ!てか、私も食べるわよ!」
秋世が慌てて、座敷に正座してナイフとフォークで手際よくステーキを一口だいに切り、上品に口へ運ぶ。
「ん~、おいしっ」
秋世も秋世で名家の出身だからか、ところどころに上品さがにじみ出るよな。……ふむ、一応、教員らしくスーツを着ている秋世だが、短めのスカートでしかも正座をしているため、ストッキングで包まれた脚がよく見えるのだ。
艶と言うか光沢のある何ともいえないムッチリ感を醸し出すストッキングは男の心にグッと来るものがある。
ちなみにだが、ストッキングとタイツの違いと言うのは、線密度や繊維の太さなどを表すデニールの単位によって変わるらしい。30デニール以上がタイツで30デニール未満がストッキングと言うらしい。簡単にストッキングかタイツかを見分けるには、タイツは濃くて地肌がほぼ見えないけど、ストッキングは地肌が透けて見える、くらいだろうか。コレも明確な基準ではないんだが……。それに会社によって違ってくるし。
まあ、今日は不覚にも秋世の脚に見とれてしまったのだ。スラッと長く、それでいてムッチリしている脚に。
正直に言うが、この脚にだったら踏まれても構わないと思っている。
「青葉君、鼻の下を伸ばしてないでご飯を食べましょう。冷めますよ」
どこなく冷めた視線の静巴にそんな風に言われてしまった。何か機嫌を損ねるようなことをしただろうか?
「あ、ああ」
俺は秋世の脚に見とれながらステーキを口に運ぶ。
ちなみに、足ではなく脚だ。足、つまり足首から先ではなく、脚、つまり太ももから下の方のことだ。ここはかなり重要なところなので勘違いしないように。
なお、パンティストッキングでは絶対領域が生まれることはないが、しかし、これはこれでありだ。まあ、絶対領域の生まれるストッキングやタイツも捨てがたい。
「青葉君は脚が好きなんですか?」
突如、静巴が俺にそんなことを小声で聞いてきた。俺はビックリしてフォークを落としかけた。
「な、なんのことだよ」
俺は、完全に秋世の脚を見ながらだったので、静巴はジトーっとした目でこっちを見てきていた。なお秋世は食事に夢中で全く気づいていない。
「う~ん、脚が好きと言うわけではなく、綺麗な脚が好きなんだよ。そう言った意味では、静巴の脚は綺麗だよな。凄く好みだよ」
俺は何を言っているんだ?錯乱しているとしか思えないことを口走った気がするが、気にしたら負けか。
しかし、静巴の脚。素足だ。靴下もストッキングも履いていない素足。すね気が生えていない綺麗な脚。ぷにぷにムッチリしていそうな脚は、頬擦りしたいくらいにいい脚だ。……言っていることが変態にしか見えないのだが、俺は決して変態ではなくノーマルだ。
そんな会話とともに、おいしい夕食の時間が過ぎていく。部屋に帰ったらシャワーを浴びるとしますか。
え~、また一日空けてしまいました。もうポケモン買って厳選しまくっていたら結果がこのザマですよ。
え~、何とか努力して一日一話を目指します。