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《神》の古具使い  作者: 桃姫
古具編 SIDE.GOD
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06話:姉弟の交流

 俺は、脱衣所で服を脱ぎながら姉さんと話を続ける。え?何で脱いでるのかって?そりゃ、シャワーを浴びるために決まってる。


「まあ、変な部活だけど、面白い部活ではあるわよ。たぶん」


 たぶん、って。断言しろ。なんて部活だったっけ?変な名前だったことは覚えてんだけど。


「なんて部活だっけ?」


 俺が部の名称を聞くと、姉さんは、「え~と」と少し悩むように頬に手を当てた。その際に、胸が大きく揺れた。が、特に気にしない。見はしたが気になってなんかない。


「んと、古研(こけん)


「え?股間(こかん)


 俺は、思わず姉さんの股間を見た。瞬間、姉さんの細柔(ほそやわ)い足、もとい、脚が俺目掛けて蹴り上げられていた。


「ごふっ」


 脚が(あご)に直撃した。慌てて軽く後ろに避けていたからよかったものの、あと数秒遅かったら脳が大きく揺さぶられて脳震盪(のうしんとう)になっていたかも知れん……。


「古研だっちゅーの!」


 古研ね。こけん。


古代文明研究部こだいぶんめいけんきゅうぶの略称」


 そう、これだ。変な名前の部活ってやつ。古代文明研究部とやらは、その名の通り古代文明を研究するのだろうか?姉さんに似合わない真面目な部活だな。

 古代文明というとマヤとかメソポタミアとかだろうか。


「何か、超能力研究をやってるみたいなのよね」


 どの辺が古代文明研究部なのだろうか。それはむしろオカルト研究部や超能力研究部に改名したほうが良いのでは?

 そんな話をしながら俺たちは風呂場に入った。ウチの風呂場は、さほど広くないが、2人で入れる程度の広さはある。


「それで、何でそんな部活に入ったんだ?姉さん、ずっと帰宅部だったじゃん」


 俺は、当たり(さわ)りない会話を続けた。姉さんが部活に入った理由が少し気になったので聞いてみたのだ。


十月(とつき)ってクラスメイトに誘われたのよ。人数少なくて廃部危機だから入ってくれって」


 とつき……?どういう字を書くんだ?


「ああ、十月(じゅうがつ)って書いて『とつき』よ。(うらな)(なつ)占夏(せんげ)占夏(せんげ)十月(とつき)よ」


 ふぅん、変わった名前だな。しかし、気になることがある。


「何で姉さんを誘ったんだ?」


 姉さんを誘った理由が見えない。友達だったってんなら一年のときにとっくに誘ってただろう。「一緒に部活やらないか」って。


「あぁ……、なんか、はやてとか友則(とものり)とかにも声かけてたけど断られて、そんで、特段仲が良いわけじゃないけどそれなりに話すあたしに声がかかったのよ」


 そう言ってから、姉さんは補足する。


「あっ、はやてってのは篠宮(しのみや)はやてって子であたしとも仲がいい女子。友則は小暮(こぐれ)友則(とものり)っつって、本人達は否定してるけどラブラブのカップルよ」


 別に聞いてないんだが、姉さんの友達の友達から入部の誘いを受けたって解釈(かいしゃく)で良いのか?


「そういや、あんたも今日から生徒会なんだっけ?」


 姉さんが俺に聞いてきた。まさか、姉さんほどの鳥頭(とりあたま)がきちんと覚えていたとは……。


「あんた、今、失礼なこと考えなかった?」


 無駄に鋭い姉さんがそんなことを言い出した。俺は、話を()らすために、先ほどの質問の方に答える。


「確かに俺は、今日から生徒会だ。生徒会の顧問に誘われてな……」


 などと少々何か理由があるような雰囲気(ふんいき)(かも)し出しながら言ってみた。


「へぇ、どうせ生徒会に美人でもいるんでしょ」


 ばれていた。バレバレだった。姉さんには隠し事は出来ないようだった。姉さんがさっとシャワーを浴びて、髪をシャンプーで泡塗れにしている間に、俺はささっと全身をシャワーで濡らす。


「あ、紳司、かけて」


 かけて、とはお湯をかけて、と言う意味だろう。俺は、一声かける。


「かけるぞ」


「うい~」


 シャワーで姉さんの頭にお湯をかける。このときに水なんてかけようものなら後で俺が水風呂に沈められていただろう。


「ん~」


 姉さんの茶髪を泡が(くだ)るように流れていく。満遍(まんべん)なく、すべての泡を流し落とすように、俺はお湯をかける。


 (したた)り落ちる水滴(すいてき)と泡。落ちた泡は、姉さんの体にところどころ付いたままになっている。よくあるギリギリセーフな感じの絵面(えづら)になってるな。


「リンスもする?」


 俺は一応、聞いてみた。答えは、たぶん「する」だろう。そう思って、すでにリンスのボトルとタオルを取っている。


「ん~、する~」


 俺は、まずタオルで、軽く髪を拭いて、水分を少し少なくしてから、リンスを手に出して、髪全体になじむように、両の手で髪を一束(ひとたば)ずつ包むようにして浸透(しんとう)させていく。


「流して~」


「まだだ」


 流せと言う姉さんに対して待ったをかけた。


「もう少し浸透させないと、まだ全体にいきわたってない」


 リンスは全体にいきわたらせないと意味がない、と俺は思っている。


「さて、流すぞ~」


「ん~」


 シャワーで軽く流していく。リンスのときは、あまり髪を強く()くと枝毛(えだげ)になりかねないので、シャワーを当てながら軽く()でるようにリンスを落としてく。


「んひゃっ」


 くすぐったそうな声を上げる姉さん。意外と可愛らしい声を出す。しかしからかおうものなら俺は20倍からかわれることが目に見えているので、何も言わない。


「さて、と」


 姉さんの髪を流し終えると、シャワーを止め、いつもの位置に戻してから風呂場を出た。


 再び脱衣所で、俺と姉さんは、身体を拭き始める。姉さんは、……何と言うか雑だ。髪をさっと(ぬぐ)う程度で放っておくのだ。ドライヤーを使え、とまでは言わないが、せめてタオルを巻いて水気(みずけ)を吸うようにしてほしい。


「姉さん!」


 俺は、語調(ごちょう)を強めて、姉さんに言う。


「ほら、髪、濡れたままだって。タオル巻くからじっとして」


 姉さんの髪を束ねて、さらにその上にタオルを巻く。


「んもぉ~」


 うっとうしそうに思うのだろう、姉さんが声を漏らした。しかし、髪が(いた)まないようにするためには仕方がないことだ。


「紳司って(みょう)にあたしの髪に(こだわ)るわよね」


 そう言って、パンツ……、この場合のパンツとはズボンの意であるパンツではなく、パンティーと言う意のパンツだが、パンツを穿()く。フリルがあしらわれた可愛い系のパンツだ。小さなリボンが付いているあたり可愛い系だとよく分かる。


「ちょっと、人のパンツじろじろみないでよ」


 そんなことを言われた。俺、そんなに見てたか?俺は、そんな風に考えながらパンツとシャツをささっと穿いて、着て、そして、制服に(そで)を通しはじめる。


 その頃、姉さんはブラをつけていた。ストラップ……肩紐(かたひも)みたいな部分のことだ、を肩にかけて、前かがみになって、ブラを胸にあわせてからホックを()めた。それで終わりじゃなくて、そのままの姿勢で、ブラと言うかストラップを浮かせて胸を詰め込むようにして、片方ずつ中央に寄せるようにしていた。詰め終わると、前かがみの状態から身体を元に戻してストラップの長さを整えている。


 女って大変だよな。いや、まあ、ブラもフロントホックだったりノーワイヤーだったり、ストラップも普通のだったりクリスクロス……後ろで交差してる奴だったり、それぞれで()け方変わってくるんだから。


「姉さんは、服着ないの?」


 着ないのが分かっているが聞いてみた。いや、学校には流石に制服で行っているけれど、普段、家では、ほぼ全裸か下着姿だ。


「ん~、着ない」


 そういって、脱衣所のドアを開ける。俺と姉さんは、脱衣所を出た。そして、動きが止まる。


「あら……」


 母さんが通りかかったのだ。偶然にも、このタイミングで。何もこのタイミングじゃなくても良いじゃないか、と思うぐらい()(わる)


「おはようございます、紳司君、暗音さん」


 母さんが何事もないように普通に挨拶(あいさつ)をした。そ、そうだよな、やましいことがあるわけでもあるまいし、普通にすれば、何もないよな。


「今日は珍しく二人とも早いんですね……」


 母さんが頬に手を当てながら、のほほんと言った。俺と姉さんが脱衣所にいたのは特に気にしてないらしい。いや、顔を洗っただけだと思ったのかもしれない。


「それに……、あら?ここ、お風呂場ですよね?」


 そして、母さんは俺たちの火照った風呂上り、と言うよりシャワーを浴びて(ほの)かに濡れた全身を見た。


「……」


 そして、黙り込む母さん。何があったのか考えているのだろう。長考(ちょうこう)している。


「…………、紳司君、暗音さん、いくら仲がいいからと言って、その……劣情(れつじょう)(もよお)して、きょ、姉弟(きょうだい)でするのは、その、どうかと思いますよ?」


 酷い勘違いだった。

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