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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔剣編 SIDE.D
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57話:新たなる騒動へ

 あたしは、修学旅行のことを話し合うロングホームルームの時間に暇をしていていたわ。例の一件、銀髪子の目的を果たしてから2日。今日は木曜日。修学旅行前最後のロングホームルームよ。


 銀髪子、本名は知らないけど、不知火が作った戸籍での名前は占夏(せんげ)瑠吏花(るりか)。十月の親戚でハーフという設定になっているらしいわ。あの子の件で色々苦労したあたしが聞いたのは、不知火から齎された情報だった。


 ことは昨日に遡るのだけれど……。

 水曜日の放課後、《古代文明研究部》の部室にて、不知火は、あたしが部室に入ってくるなり、こんなことを言ったのよ。


「実は、修学旅行の宿泊先の部屋割りが変更になるかもしれない」


 と、そんなことを急に言ったの。そんなことを急に言われても、ねぇ?部屋割り振ったし……。


「何でそんなことになんのよ?」


 あたしの言葉に、不知火が「うむ」と腕組みをして、偉そうにあたしに向かって言うのよ。


「すまないが、力不足、としか言えない」


 力不足ねぇ……。そんなこと言ったって、確か宿泊先は不知火が決めて、費用も不知火が出すって言ってたはずじゃない?


楽盛館(らくせいかん)は、かなり財団や財閥の間で有名な場所でな。どうやら、時期がこの間の、6月初旬にあった台風で、延期した学校にいた生徒の親が何人か有力者だったのだろう。私一人ではどうしようもないさ」


 金の力で無理を利かせたのね。まあ、部屋割りが変更ってことは、同じ旅館には泊まれるんでしょうけど。


「それで、あたしらは7階から13階だったけど、何階に変更になるのよ」


 楽盛館(らくせいかん)は13階建てのホテルで、高級旅館って感じらしいわ。テレビで取り上げられることも何度かあったらしいし。


「1階から6階だ。まあ、京都の町並みに見晴らしも何もないのだが……。すまないな」


 不知火は謝った。どうやら上層と下層で部屋の大きさ自体も異なるようで、それにより部屋割りも変更になるのだろう。ちなみに、1階はほとんど客室がないので、実質、2階から6階。部屋数は上層よりも多いけど、その分狭いので、なんとも言えないわね。


「まあ、いいんだけど……」


 というような会話があったため、今日のロングホームルームは急遽、部屋割りを組みなおすことになったのよ。

 ちなみにあたしは、606号室で、はやてと同室よ。シャワー、トイレ完備でベッドもあるらしいから充分だと思うけどね。

 606号室の最初の6は6階。06は6番目の部屋を指しているわ。6階は612まであるわね。

 606号室は図を見る限り階段の目の前で移動は楽よね。


「それにしたって、席なり部屋なり決めるのは面倒ね」


 班割りは決まっていたので、それを使ってるけど。1班4人。ちなみにあたしの班は、あたし、はやて、友則、鷹月の4人よ。


「ねぇ、はやてぇ」


 あたしははやてに呼びかける。はやては、あたしの方を見て、声をかけてきたわ。


「なぁに、暗音ちゃん」


 間延びした声。いつものはやての声だが、どこか少し浮かれているように感じるのは、修学旅行前だからでしょうね。


「はやては、修学旅行、楽しみ?」


 あたしは、答えが分かっていながらも尋ねてみたわ。まあ、なんとなく、としかいいようがないけれど。


「うん、楽しみだよぉ~」


 そんな答えが返ってきた。予想通りの当たり前の答え。されどあたしは、少し複雑な気持ちになっていたわ。

 それは、不知火に聞かされた話が原因よ。


「ねぇ、もし、旅行中にトラブルが起こって中止、なんてなったら、悲しい?」


 これまた答えが分かっている質問よ。そりゃ悲しいに決まってるじゃない。楽しみにしてたのに、途中で中止とか。


「う~ん、悲しいかな?でも」


 答えは予想通りだったけれど、さらに言葉が続いたことには驚いたわ。


「でも、何?」


 あたしは「でも」の続きが聞きたくて、言うように促したわ。はやてが予想外のことを言うのが意外だからかしら?


「でも、そのトラブルが、誰かが倒れちゃったとかって言うんだったら、私は別に悲しくないかな。その子がかわいそうだもの」


 あ~、ね。はやてはそんな感じのことを言うと思ってたわ。思ってなかったけど。まあ、はやてははやてで優しい子だからね。


「でも何でそんなことを聞くの?」


 まあ、そういう質問が来るのはわからないでもないわ。急にそんなことを聞かれたんだもの。


 ぶっちゃけ、この話も不知火が発端だったりするんだけど。今現在、京都は旧家が色々と大変なことになってるらしいって話でね。


 えっと、不知火から聞いた話を簡単にまとめていくと……。

 京都は、古くから日本の中枢とも言える場所であり、かつての陰陽師たち然り、不思議なが集まりやすい場所となっているらしいわね。

 こういった場所は世界に大量にあるらしく、その一つに、あたしの住む三鷹丘市、現在はそれが拡大したのか流れ込んだのか、学校のある鷹之町市も含まれているようね。

 不思議な力が溜まりやすい場所には、不思議な力を持ったものが生まれやすい、ってのは、事実かも知んなく、京都や青森の恐山(おそれざん)、三鷹丘などでは、実際、結構な《古具》使いが確認されているらしいわよ。

 あと、それと、《古具》使いの子供は《古具》使いになる、って説もあるらしいけど、それは、実際に、《古具》使いの子は《古具》使いになりやすいって性質も有るけど、《古具》使いが生まれたのが不思議な力が溜まりやすい場所だったら、そこでまた子供が生まれるわけだから、結論的に言えば、不思議な力が溜まりやすい場所で生まれたから、とも言えるわよね。


 そんな話はどうでもよく、その不思議な力が溜まりやすい京都には、旧家が八つあり、それを京都司中八家と呼ぶらしいわ。京都を司る中の八家という意味で、かつては、今はこの辺にある天龍寺家もその司中八家に入っていたそうよ。


 【呪憑き】の天姫谷家。


 【退魔】の市原家。


 【古武術】の明津灘家。


 【日舞】の雪白家。


 【我流】の支蔵家。


 【殲滅】の冥院寺家。


 【仏光】の天城寺家。


 【天狐】の稲荷家。


 この8家が今の司中八家。昔は、【日舞】の雪白家の代わりに【夜空】の天龍寺家が入っていたらしいわ。


 その八家が徐々に権力を失いつつあり、他の地から無理やり《古具》使いを引っ張ってきているらしいのよ。まあ、天姫谷螢馬(けいま)と天姫谷龍馬(りゅうま)もそうだし。他にも、紳司の知り合いの律姫ちゃん、鷹月の知り合いの明津灘紫炎なんかがその国的でこっちに来ているらしい。


「あれ、そういや、鷹月」


 あたしが声をかけると鷹月がこっちを見た。そして、近寄ってきた。コイツも意外と礼儀正しいタイプの人間よね。育ちがいいってか、なんてゆーか。


「なんですか?」


 あたしは、鷹月に何気なく気になったことを聞いてみることにしたわ。


「紫炎って子とは最近連絡取ってんの?」


 鷹月は、何でそんなことを聞くのか分からないって顔をしつつも、素直にあたしの質問に答えてくれる。


「ええ、まあ。そういえば、パートナーが見つかったって言ってましたけど」


 へぇ~、見つかったのね。良かったじゃない。まあ、そこはかとなく嫌な予感がするけどね。


「ふぅん、まあ、そんなもんかしら」


 それにしてもパートナー探しって大変なのかとも思ったけど、そうでもないみたいね。まあ、話が大分逸れてるし、本筋に戻そうかしら。

 それでトラブルが起こるってのは、市原家に関係が有るのよ。


 市原家。退魔を専門にした一族だとか何とか。ぶっちゃけ、何が「魔」なのかはわかんないけどね。そんで、その市原家は、現在、家を出た次女、市原(いちはら)裕音(ゆのん)が唯一の《古具》使いで、現当主の亡くなった妻と亡くなった分家の少年が《古具》使いだったが、家の騒動が原因で死んでいるらしいわ。それにより、《人工古具(オーパーツ)》を開発して、それで《古具》使いを倒し、《古具》なしでも家を継ぐにふさわしい事を証明しようとしているらしい。


 それにより、旅行で行った《古具》使いが狙われることも少なくないらしい。だからあたしや鷹月が狙われることも考えておいたほうがいいらしいのよ。去年は不知火と十月が襲われているっぽいし。


 だから、襲われてトラブルが起こらないとも限らないのよね、特に鷹月は。あたしは大丈夫にしてもねぇ……。


「そういえば、暗音ちゃん、聞いた?」


 何の脈絡もなくはやてが言い出したので、あたしは、はやての方を見た。はやてはなんかわくわくしていた。


「何をよ?主語を入れなさいな」


 あたしの言葉に、「えへへ」と笑いながらはやてが言う。


「三鷹丘にいる友達に聞いたんだけど、三鷹丘学園も同じ日に修学旅行らしいんだよぉ~。6月の前半の台風で延期になって、偶然同じ日なんだって」


 あたしは、一瞬ポカンとした。確かに紳司には来週修学旅行とは聞いていたけど、流石に同じ日、とまでは聞いてないわよ。


「え、マジ?」


 あたしの言葉に、はやては頷いた。


「マジだよぉ」


 ……、え?ホントに言ってんの?ちょっ、


「紳司に確認しなきゃ」


 即行電話して確認したわよ。それで、……、ものの見事に被ってたわね。まあ、いざとなったらあたしと紳司、2人で敵をぶっ潰せってことよね?

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