54話:人探し
はぁ~、今度は何かおかしな回想やらなんやらが入った気がするわね……。あたしの出番はいつもこんなんなの?まあ、いいけど。月曜日、朝起きて紳司と金髪巨乳ちゃんの様子をチラリと見たけど相変わらず裸で抱き合ったままだったわ、というか、金髪巨乳ちゃんが覆いかぶさっていたんだけど、流石に動いていたのかしら、普通に一緒に寝てたみたいになってるわね。まあ、昨日服を着せ忘れたあたしにも責任は有るんでしょうけど……、まあ、いいかしら?どうせ紳司もこの子に手を出していないみたいだし、彼女にはしないんじゃないかしら?
まあ、紳司の心を読んでいるわけではないし、金髪にも巨乳にも弱い紳司のことだから流されて付き合っちゃうことも有るかもしれないけどね。
と、朝、そんなことがあったことをはやてと話すことにしたのよ。
「はやてぇ~。聞いてよ」
あたしが声をかけると、てくてくとはやてが寄ってきたわ。ついでに呼んでもない友則も寄ってきた。
「何?どうしたの、暗音ちゃん」
はやてを見て、ふと気になった。そういえば、昨日流れで店員に勧められて買った紫のブラとパンツはどうしたのかしら?
よく目を凝らすと制服のシャツの奥に薄っすら紫色が浮かんでいるのが分かる。あれ、今日つけてんの?修学旅行用に買ったのに?
「てか、はやて、それ修学旅行用じゃなかったの?」
あたしの指摘に、しばし、何のことか、とポカンとするはやてだけど、言ってることが分かったらしくあわあわ慌てだした。
「ち、違うの!べ、別にトモ君に見せたいから今日つけてるわけじゃないの、ぐ、偶然なの。ちょっと試してみたかったの」
なるほど、友則に見せるために今日つけてきたのね。いえ、学校で見せるわけじゃないから今日つけてる、が正しいのかしら。
「つけてるって何が?」
一方、友則は何も分かってないみたいだった。まあ、コイツはこんな奴よね……、何ではやてはコイツのことがすきなのかしら?
「まあ、そんな話はどうでもいいのよ」
あたしの言葉にはやてが「どうでもいいって……、そんな……」といじけたが、それでもあたしの話を聞いてくれるらしい。
「それで?何を聞いて欲しいの?」
そこで、あたしは、本筋に戻ることにする。まあ、あたしの話で話が逸れるのは良くあることだから。
「そう、はやて。昨日さ、色々あってさ、家に帰ったじゃない?」
あたしの言葉に、はやてはこくりと頷いた。
「ん?昨日どっかに言ってたのか?」
友則がそんなことを言っているけど無視して話を進めることにしましょう。コイツはどうでもいいから。
「それでさ、家に帰ったら、知らない靴があったのよ」
あたしの言葉に、はやてがきょとんとした。友則は「何の話だよ。てかどっか言ってたのか?」ってうるさい。
「靴って、靴でしょ?それがどうかしたのぉ?」
はやては何も察していないようね。知らない靴があったのよ、知らない靴が。誰か来てるって思うじゃない。
「いえ、ね、あたしは誰か来てるのかなぁーって思ったのよ」
あたしの言葉にやっとはやては理解したらしい。なるほど、って手を打ったわ。ちなみに友則は、ぶーたれていた。
「それで、誰か来てたのぉ?」
はやてが一番重要なところを聞いてきた。あたしは人差し指をピンと立てて注目を集めつつ言うの。
「金髪巨乳が弟を襲っていたのよ」
あたしの言葉に、ぶーたれていた友則が急な反応を見せたわ。てか、他の男子も同様に反応したけれど。
「お、襲ってたって、そりゃ、……。一つ教えてください!物理的に襲う方ですか、性的に襲う方ですか!」
あたしは、ニヤリと笑って答える。その笑みは、酷いものだったかもしれない、と思うけど。
「性的に、よ」
男子達にどよめきが走った。どうやら、男を襲う金髪巨乳に興味津々らしい。まあ、あたしもどこの誰だか知らないから説明できないんだけど。
「それは、みゅらー・でぃ・ふぁるふぁむだとよちした」
いつの間にかあたしの背後にいた十月がそんなことを言った。前髪がさっぱりして超絶美少女全開の十月よ。
「ミュラー……、ああ、三鷹丘の生徒会副会長ね」
あたしは紳司から話を聞いていたから名前を聞けば、ああ、なるほどと思うわね。確かに聞いていた見た目と一致していた。
いえ、紳司のことだから何割か盛っていると思っていたから、すぐにピンと来なかったのよね。
「三鷹丘の生徒会副会長……って、あの噂のかよ」
友則がそんな風に呟いたのが聞こえたわ。どうやら向こうの生徒会副会長は噂になっているらしいわね。
「あっ、私も聞いたことあるよぉ。三鷹丘には暗音ちゃんと同じくらい綺麗な女生徒がいるって。会長さんとか副会長さんとか水泳部部長さんとかがそうだって言ってたよぉ」
なるほどね。あたしに匹敵ねぇ……。あたしってそこまで美女じゃないんだけどねぇ。まあ、平均より上っては思ってるけど。
そもそも最近は、科学技術も発達して花月グループとかがダイエットや食生活管理なんかのサポートシステムまで手がけ始めたおかげで肥満や肌荒れが減りつつあるから特にこれと言ったブスって滅多にいないのよねぇ。
「まあ、いいけど、その美女副会長さんがあたしの弟を襲ってて、しかも全裸で。マジ巨乳だったわ」
そう言うと、再び男子にどよめきが走った。そして、代表するかのように友則が叫んだわ。
「やっぱりパッドじゃないって噂が真実だったか!上は露出が少ないのはパッドだからとか言ってた奴らざまぁ見ろ!」
そして、はやてがキレた。ガシッと片手で友則の頭を鷲掴みにすると、そのまま友則の体を持ち上げた。
「痛い痛い、痛いっす!ちょ、ちょっ!は、はやてさん、メシメシいってる!ヤバイってマジヤバイって!は、放してくださぁああああああああああああ!」
途中から断末魔になったのは友則が廊下まで引き摺り攫われたからである。はやてが怒った、というか嫉妬ね。
「あちゃ……」
その後、妙にすっきりした様子のはやてと妙にゲッソリした様子の友則が2限の途中に帰ってきたのだった。
というわけで、朝の会話から時間を置き放課後。あたしは《古代文明研究部》の部室にいた。部室には部員が全員と、銀髪の少女が一人、という状況。
ゆるふわロングの銀髪の少女。先日、《存在しない剣》を用いて襲ってきた少女だ。しかし、先日と違う点もある。それは、髪が綺麗な透き通る銀髪になっていることだ。先日は穢れた薄汚れた銀髪だったのに。
「このこ、かみ、かぴかぴになってた。きっとじごにふろにはいってなかった」
なるほど……。まあ、外人は性に対しておおらかって言うしね。そんなものかも……ってそんなわけあるかっつーの。まあ、おそらく、あれね、拉致されてあんなことやこんなことをされてさせあれてたってとこかしら?
「それで、改めて探して欲しい人ってどんな人なのよ」
先日も聞いて、探していたのだが、もう一度確認をするために、あたしは問いかけた。すると鷹月が答える。
「俺達が探しているのは、『明日咲現水』の家族です。それが兄弟なのか、姉妹なのか、両親なのか、祖父母なのかはまったく分かりませんが、鷹之町にいるようです。また『明日咲現水』は、『鷹之町第四中学校』に通っていたそうですが、『鷹之町第四中学校』に問い合わせたところ、家族の現住所は不明だが対して大距離の引越しはしてないだろう、とのことでした」
つまり、この辺のどっかにいる確率は高いわね。四中は、北町にあるから、東町のこの辺にある可能性はあるわね。
「不知火の力でどうにかなんないの?」
あたしの問いかけに不知火は苦笑した。どうやらしようとしたがどうにもならなかったらしい。
「いや、市役所を頼ろうにもこの子の戸籍を先に無理に作らせてしまったので、私は連続で無理を押し付けられるほどの立場ではないのだよ」
戸籍を作らせたって、そっちの方が大事よね。てか、そんなこと出来るのね……。さすがは大財閥不知火家。
「じゃあ、地道に探すっきゃないわね」
あたしはそう言って地道に捜索を始めた。
結果として月曜日には見つからなかった。そして、火曜日の放課後も同様に探し始めようとしていた。
しかし、あたしはそれじゃ埒があかないと思った。だからこそ、不知火は誰にも口外するな、と言ったが一つ頼みの連絡をすることにした。
無論、相手は紳司だ。
「『明日咲現水』って子の家族を探してるんだけど知らない?ロシアで行方不明になった子らしいんだけど、その子死んでて、それを伝えるためにやってきた子がいて、その子にあわせたいんだけど」
文章を打ち終え、送信した。するとすぐに返信があった。
『了解。待ち合わせは今から言うカフェ。その伝えるためにやってきた子を連れてきて。俺は心当たりの人を連れて行くから』
なんとも頼もしい限りなのかしら。どうやら紳司は「明日咲現水」の家族を知っているらしい。
まあ、なんにせよ連れてきてくれるならありがたいわ。
「ちょっと銀髪っ子。あたしについてきて。今日はあたしと探索よ」
そう言って、銀髪の少女を紳司から指示のあった喫茶店へと導くことにしたわ。
さぁて、これで今回の事件は解決かしらね。