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《神》の古具使い  作者: 桃姫
魔剣編 SIDE.D
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51話:金髪の狂剣士

 さて、とそんなこんなで下着選びを終えたあたし達。あたしが黒の薔薇模様があしらわれたやつ。母さんの勝負下着に似てるけどそれよりも抑え目のやつね。はやては白のレースのやつと店員お勧めの紫のやつ。紫の方は超スケスケでヤバイやつ。まあ、はやては店員から勧められたら断れないタイプの人間だから。


 そんなことがありながらも生理用品も買いそろえ……ちなみにはやてはタンポン派だったわ……、まあ、それで、あたしは家に帰ってきたわけよ。


「ただいま~」


 すっかり遅くなったから紳司も母さんもいるだろうなぁ~と思って靴を見ると、見知らぬローファーが一足。サイズから見て女子かな?


 紳司の彼女かしら?だったら虐めに行くんだけど。どっちをって言ってもどっちも、いじめるでしょうね。紳司も彼女も。


「あら、暗音さんお帰りなさい」


 母さんが出てきた。どうやらどこかに出かけていたらしい。帰ってきたばかりみたいね。まあ、おおかた、紳司と連れてきた女の子に気を遣って用もなくあれこれ買いに行ってたんでしょうけど。


「何?紳司が女でも連れ込んできたの?」


 あたしの問いかけに母さんはニマニマと笑った。気味悪っ。てか、キモッ。この間の、紳司が後輩と食事デートに行ったときと同じね……。


「そうなんですよ!もう、可愛い子連れてきて、本当に……。金髪で、胸も大きくて……」


 金髪巨乳?!それ、何かの詐欺か……、整形美人?それともデリヘ、いえ、なんでもないわ。ともかくおかしなのに騙されたんじゃないでしょうね?


「大丈夫なの、それ?おかしな勧誘とかに引っかかったりとか、結婚詐欺とかじゃ」


 すると、母さんはニヤニヤしながらあたしを見ていた。ウザイ。ランジェリーショップの店員並みにウザイ。


「あら、暗音さん、ヤキモチですか?」


 ニヤニヤがウザイに飽き足らず、言葉もウザかった。こと、母さんの恋愛話に対する反応は本当にウザイ。


「違うわよ」


 あたしが否定してるのにニヤニヤしつづける母さん。


「大丈夫ですよ。三鷹丘学園生徒会副会長なら身分もしっかりしているでしょうし、それに何より、《古具》使いであるはずですからね」


 《古具》使いであるはず、ね。まあ、そうなんでしょうけど。そういえば、あまり母さんが《古具》使いであることに対するエピソードを聞いたことがないわね。


「母さんも《古具》使いだったんでしょ?だったら、どんな戦いとかがあったのよ?」


 話の脱線というか、何の脈絡もない話だけど、まあ、あたしも紳司も父さんもこういうところがあるので母さんはなれてるんでしょう。普通に応対したわ。


「どんな……と言われましても。《聖盾(せいじゅん)》使いと戦った……らしい?こととか、あとは、お義父(とう)さんとも戦いましたっけ?それから……、あら、そういえば、わたしが学生時代に戦ったのって、これとあと深蘭(みら)さんくらいですね。ほとんど青葉君……お父さんが戦ってくれていたんですよ。まあ、学生時代の戦いは、お父さんに聞いてくださいね」


 母さん全然戦ってないじゃん!あたしですらすでに二度ほど戦闘っぽいのに巻き込まれてんのに?


「なるほど、父さんが戦闘担当だったのね?」


 だからこそ母さんは数回しか戦ってない。


「う~ん、そうですね……。お父さんと、その相棒が、基本的な戦闘担当でしたかね……」


 相棒?その相棒というのは、まあ、戦闘に参加しているなら男なのかしらね?


「相棒ってのは?」


 あたしの問いかけに母さんは、非常に難しい顔をしたわ。何よ、そんなにいいにくいの?ってかまたこのパターン?グラムとも似たようなやり取りした気がするけど。普段はペラペラと喋るのに……みたいな話ね。


「なんと言えばいいんでしょうね。そうですね……。一言で言うなら天使でしょうか?」


 その言葉で思い出す。そういえば、《古具》に目覚めるちょっと前に紳司が「紅と蒼を孕んだ矛盾の天使って知ってるか?」と聞いていたときのこと、その会話の後に「サンダルフォン」、「相棒」という言葉が出てたのを。


「なるほど、サンダルフォン、ね」


 その言葉に、母さんは驚いた様な顔をしていたわ。いえ、実際に驚いたのかもしれないわね。


「そうよ、【断罪の銀剣(サンダルフォン)】のサルディア・スィリブローさん。青葉君の中に幼い頃からずっといたパートナーです。青葉君の持つ二つの力の一つを共有する方ですよ」


 何か急に凄いのが出てきたんだけど、ちょっと待って。父さんは天使をその身に宿してるってことなの?それって凄くない?


「青葉の子は代々、色々背負っているみたいですよ?

 そう、例えば……。

 お義父(とう)さんが《覇》の古具と《聖》の剣を背負っていた様に。

 義叔母(おば)さんが《滅びの龍》を持って生まれて神の曲に目醒めた様に。

 青葉君が《勝利の大剣(フラガラッハ)》と【断罪の銀剣(サンダルフォン)】を背負っていた様に。

 貴方達も青葉の血族なら、背負ってしまっているはずです。他の《古具》使いとは異なる特異なそれが」


 それは分かる。あたしの中のグラムファリオや、紳司みたく幾多の神の力を持つ、なんてのは、知っている他の《古具》を考えても異質よ。


「例え、そうだとして、それがなによ。あたしは、その背負ってるものを全てぶっ飛ばして進むだけ」


 そう言ってあたしは、階段を上る。紳司の連れ込んだ女を見るために。神を背負った弟が連れてきた女を見るために。







 結論から言って、ドアを開けて、すぐに閉めたわ。うん、そう、閉めたの。だって、ねえ。


 えっと、ちょっと、見間違いかも知れなかったから、もう一回開けてみるわよ?ガチャリ、と。


 ……。うん。見間違いじゃないわね。何よ、これ。


 ふむ、まあ、あれね、どうせそこまでエッチなことはしてないでしょうから驚かすためにノックせずに開けちゃお、なんて思ったことがダメだったのね。


 あたしの目の前の光景を懇切丁寧に描写していきましょうじゃないの。ええ、もう、しっかりと。


 まず、部屋の中。いつもの紳司の部屋。ラノベとか妙な魔術教本とか、そう言ったものが乱雑に積み上げられた部屋。しかし、机の上に異物を発見!


 まず上からショーツ、ブラ、スカート、ブラウス。つまりブラウスを脱いで、スカートを脱ぎ、ブラを外して、ショーツを脱いだ。ということになる。誰が?紳司なわけないのだから、連れ込んだ女でしょう。


 次の異物。アロマキャンドルかしら?もう火は消えてるし、匂わない……いえ、微かに匂うけど特に何も感じないアロマキャンドルが。


 そして、ベッドの上。激しいキスを紳司にしてる金髪の女と虚ろ気にボーっとベッドでされるがままになっている紳司。


 ……。あ、あれぇ……。


 ふむ、あの金髪、錯乱してるわよねぇ?そもそも、元から頭がおかしいのかもしれないけれど、まあ、ほぼ放心状態の紳司をめちゃめちゃにしてるってことは、まあ、きっと錯乱状態だと思う。てか、思いたい。


「シンジくぅ~ん」


 舌を絡ませながら、ほぼ無理やりキスしてる……。ああ、ファーストキスとかだったら絶望物だけど、安心ね。なんたって紳司のファーストキスの相手はあたしだから!


 まあ、きっと、あのアロマキャンドルにエロくなる効果でもあってこうなったってところかしら?なんて危ないモン持ってんのよ、この金髪。


「お~い、聞こえるぅ?聞こえますぅ?」


 あたしは呼びかけてみるけど、金髪は紳司に夢中で気づかないようだ。あたしのイライラはかなりキテる。


「あぁん?聞こえてんのかって聞いてんだろ、金髪」


 あたしが怒鳴ると、金髪は、トローンとした虚ろなヤバイ目であたしを見ていた。いやいや、いくらなんでもヤバすぎでしょ?!


「あたしと……あたしとシンジ君の邪魔をっ、邪魔をするなぁ~!」


 ボフッという炎が出る音とともに、金髪の手には剣が握られている。てか、ヤバイ。あれは、ヤバイ。


「《黒刃の死神(ブラック・エッジ)》!」


 瞬時に漆黒のフリルドレスへと転身するあたし。普段からドレスは着ないけど、戦闘時は着るのよ!悪い?!


「ハッ」


 金髪が剣を振る。あたしは、その剣の切っ先に靴のつま先をぶつける。正確には、つま先で形成した黒刃で受け流してるんだけどね。


「セイッ!」


 またも剣が振るわれた。あたしの眼前へと迫る剣をあたしは蹴り返す。あたしは、今、全身、いえ、あたしの一挙手一投足がそれ即ち黒刃(こくじん)と化すのだから。


「悪いけど、気を失いなさい」


 そして、金髪の鳩尾(みぞおち)に黒のシルクの手袋で覆われたあたしの拳がめり込んで、勝負はついたわ。

 女だからあとが残らないように手加減したはずよ。一応、相手も全裸だったから、服で軽減とか出来そうになかったけど、どうにか痣にもならない、と思うわ。


「ったく、今のは、何よ?《聖剣》だとでも言うのかしら?」


 そんな風にぼやきながら、あたしは部屋をでた。


「あっ、服着せるの忘れてた……けど、まっ、いいか」

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