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《神》の古具使い  作者: 桃姫
聖剣編 SIDE.GOD
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41話:聖剣使い

 構え槍が黒色のオーラを纏った。そのオーラはドス黒く触れたものを全て飲み込みそうなほど気味が悪かった。しかし、俺は、それをトリスタンに向ける。それに反応するようにトリスタンが《慈悲の剣(カーテナ)》を振るった。俺は、それを槍で受け止めた。


――ズゥン!


 その瞬間に、《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》に触れた《慈悲の剣(カーテナ)》が、弾き飛んだ。まるで跳ね返されたかのようにトリスタンの遥か後方へと飛んでいったのだ。


「何っ?!」


 トリスタンが驚きの声を上げるが、間を空けずに後方へ跳び、間にガウェインが飛び込んできた。その手には刀身の右半分が銀色で刀身の左半分は金色の荘厳な剣が握られていた。


「《煌陽の剣(ガラティーン)》」


 ガラティーン。アーサー王が持つことで有名なエクスカリバー、その姉妹剣であると言われている。日の位置によってその力が増減し、夜にはその力が衰える。


「チッ、時間帯的に分が悪いなっ!」


 俺は、槍の柄で切っ先を弾いた。しかし、すぐに態勢を立て直し、俺目掛けて《煌陽の剣(ガラティーン)》を振るう。


 その間にトリスタンは《慈悲の剣(カーテナ)》を回収していた。そして、俺がトリスタンに眼をやっている隙を突くように《煌陽の剣(ガラティーン)》が俺へと突き出される。


「ハッ!」


 それを紫炎がガウェインの腕に打撃を叩き込み逸らした。そして、さらにそのまま紫炎はガウェインへ攻撃を続ける。


「セイッ、ヤァ!ハッ!」


 腕への打撃で体の重心が打たれて押された方に傾いている隙に体重がかかっている足に蹴りを入れた。次いで、倒れるガウェインの顎に掌底を食らわせ、最後に踵落とし。えげつなさ過ぎる……。


明津灘(あきつなだ)流古武術《春乱華(しゅんらんか)》です」


 ふむ、近接格闘か……。そういえば、母さんが子供の頃に教えてくれた技があったっけか?あんなもん人間業じゃ無理って思ってたが、いけるか?


「はぁっ!」


 俺は、《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》をまっすぐに投擲する。トリスタンは避けたが、《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》が地面に刺さった瞬間、周囲が弾けとんだ。


「グッ」


 トリスタンが爆風で軽く浮いて態勢が完全に崩れた。俺は、その隙を逃さず近寄った。そして、母さんに教わった技を試してみる。


 トリスタンの腕を掴み片足でトリスタンの足を跳ね上げる、いわゆる巴投げみたいなものだ。さらに投げ飛ばされた相手に掌底と踵落としを入れる。さっきの紫炎の技をもっとえげつなくした感じ技だ。


「今の、雪美流忍術・秘伝《椋落(むくお)とし》ですか?!」


 紫炎が反応した。確かにこの技は《椋落(むくお)とし》だ。母さんが学生の頃に見た技を見様見真似で再現したものらしい。


「忍術?」


 俺が首をかしげながらも、トリスタンを見る。まだまだ、戦意は喪失していないようだ。タフだな。


「クッ。流石だね」


 トリスタンは、片膝をついて立ち上がる。それなりにダメージは通っていたようだ。しかし、すぐに《慈悲の剣(カーテナ)》を持って立ち上がった。


「こりゃ、また、面倒だな……」


 俺は、別の武器を出すことにした。《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》は威力が高いが、非常に使いにくいことが数回振るって分かっている。せいぜい、投擲して周囲破壊で敵の隙を作ることにしか使えないだろう。


「チッ、《破壊神の煌々矢(シヴァ・ピナカ)》!」


 頭に流れ込むイメージとともに、弓が左手に現れた。「Siva.Pinaka」。どうやら、シヴァのトリシューラの別称とされることもあるピナカだ。


 弓はあれど矢はない。そう思ったが、違う。俺が視線を弓に向けると光の矢が出来上がっていた。なるほど、眼からでる光と矢、ね。シヴァの伝承の一部を模倣する形らしい。


「弓っ?!」


 トリスタンが驚くが、俺は、即座に光の矢を放った。光の矢は、気がつけば、トリスタンの頬を掠めていた。


 文字通り、光速で飛翔したのだろう。俺はもう一本撃とうと目線で矢を(つが)えた。しかし、紫炎が叫んだ。


「ちょぉお!青葉君?!流石にそんなもの連発されたら、私連携とれないどころか巻き添えくらいます!」


 武道の達人なら光を超えた速度動け!と言いたいが、流石に女の子に、それもスカートでそれをさせるのは酷だ。まあ、中身は競泳水着だけど。しかし、スカートの裾から見える競泳水着もまた一興である。


「大丈夫だ、当てはしない!」


 そう、紫炎に当てはしないさ!たぶん。今の状況だと、俺の正面に紫炎とガウェイン。その後ろにトリスタンという状況だ。女子2人が戦いながら、俺とトリスタンの間に割り入ってきたのだ。


「今だ!」


 俺は、紫炎がガウェインに蹴りを入れる瞬間を見計らって脚の隙間を縫うように光の矢を放った。


「っ!」


 またもトリスタンを掠る。今度は、脇腹だ。しかし、紫炎も、また、声を上げた。


「熱っ?!」


 悲鳴だった。どうやら光の矢が少しだけ掠めたようだ。すまない、紫炎。


「無事か?」


 一応声をかけてみた。すると紫炎は内股になって、ガウェインの攻撃をかわしながら言う。


「身体はなんともありませんが、ものの見事に水着のクロッチ部分に穴が開きました!熱にやられました!それもおそらく、光が擦ったときの空気抵抗で生じた熱が原因なのでものの見事に大穴です!スースーします!」


 恥ずかしいことを叫ぶな。街外れとは言え、誰かが通ったらどうする!俺たちのバトルは劇で片付くかもしれんが、流石にそれは擁護できんわ!


「流石に上だったらシャツ貸してやれるが下はフォローが無理だな」


 そう言いつつ、もう一本番える。そして、光速で矢が残光で線を描き駆けぬけた。さながら、一直線のビームが出ているかのようにも見える。


「ほぐっ」


 トリスタンの右肩の上を矢が掠める。いや、抉り抜ける。コレでしばらくは剣を振るえないはずだ。


「クッ!」


 紫炎が上体を反らしてガウェインの剣舞をかわす。どうやら、さっきの俺の一撃のせいで足技が使えなくなってしまったらしい。


「《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》!」


 紫炎のサポートとして、ガウェインの後方に《破壊神の三又槍(シヴァ・トリシューラ)》を投擲し、足元を崩す。ガウェインは、後ろに倒れる。

 その隙を見逃さずに紫炎が拳を叩き込む。


「ハァッ!」


 強烈な一撃がガウェインに当たる、かと思いきや、寸でのところで《煌陽の剣(ガラティーン)》で受け止めた。その瞬間、紫炎に苦痛の色が見えた。


「っ?!」


 紫炎が後方に跳躍して、距離をとった。どういうことだ……。


「アーティファクターが《聖剣》に触るのは、あまりお勧めできないな……」


 トリスタンが口を開いた。どうやら、何か知っているらしい。一体、何があるというのだろうか。


「アーティファクターが《聖剣》に触ると激しい痛みが身体を駆け巡るらしい。もちろん、相性にもよるけどね。今までだって、数人、その例外に当たる人物はいたからね。ミソノ・アオバなんかがその際たる例、かな?」


 ばあちゃん、か。ばあちゃんも《聖剣》を持っていたのか……、それも《古具》使いで。そして、じいちゃんも、おそらく……。


「《刀工の龍滅刀スミス・ドラゴンキラー》。《刀工の剣製スミス・ブレードメイク》の亜種だよ。他にも亜種としていくつか確認されているね。

 まあ、この龍を滅する力と共鳴したのか、《龍滅の剣(アスカロン)》のみ、ミソノ・アオバは触っても平気な様だ」


 なるほど、「Smith.Dragon killer」ね。おそらく《刀工の呪魔剣スミス・カースブレード》も同じように《刀工の剣製スミス・ブレードメイク》の亜種なのだろう。天姫谷も「亜種だ」と言っていたし。


「なるほどな。紫炎、大丈夫か……?」


 俺は、紫炎に声をかけた。紫炎は、腕を押さえながら俺の言葉に答えた。


「何とか大丈夫です」


 どうやら無事だったらしい。俺は、安心しながらも、弓を構えた。《聖剣》に直接触れられない以上、弓で遠距離から攻撃するのが望ましいだろうからだ。


「あ、青葉君!」


 紫炎が声を上げたときには遅かった。もう、ガウェインが俺の眼前まで迫っていた。光の矢は弓を見なくては番えられない。つまり、完全接近されると、弓を射る時間は皆無ということになる。


「チッ!《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》!」


 《聖剣》で貫かれる前に、即座に《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》を出していなす。《聖剣》に触れられないのは厄介すぎる。掠めただけで大惨事じゃないか……。


「ハッ」


 俺が《無敵の鬼神剣(アスラ・アパラージタ)》を振る。その隙を突かれた。まずい。ガウェインの《煌陽の剣(ガラティーン)》が、俺の肩先を掠めた。


 ……全然痛くない。いや、切られたからには痛いのだが、思ったほどではなかった。紫炎は何故あんなに痛がっていたんだ?

 俺は、後方跳躍でガウェインと距離をとる。全然ダメージはない。


「効いてない?」


 ガウェインの疑問そうな拙い日本語。しかし、それをさえぎるように、俺とガウェインの中間に銀朱の光が舞った。


「痛ったた~」


 軽い落下でお尻を打ったらしくお尻を摩る金髪碧眼の美少女と、その横に立つ黒髪の美少女。

 その二人は、紛うことなき、市原ユノン先輩とミュラー・ディ・ファルファム先輩であった。おそらく、秋世の《銀朱の時ヴァーミリオン・タイム》でやってきたのだろう。

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