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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終語編
365/385

365話:暗黒王討伐伝 終わりの物語

※え~、本日2話目です

 ――キィン


 甲高い金属音が響く。俺、ナーシェ・ナルナーゼは、相対する暗黒王に持てる全ての力をぶつけて戦っている!


 暗黒王、クレイマル聖国の聖王を裏から操り邪悪な国に変えた諸悪の根源にして、数百年以上前に剣士と刀鍛冶が命と引き換えに封印したという最強最悪の存在だ。俺は、剣帝王国(アルレリアス)の王に、まあ、母とのつながりがどうとかで、この暗黒王を倒すように命を受けて、長い旅の末に、仲間を作りここまで来たんだ。


 暗黒王が生み出した四天王、天魔夜(てんまや)炎夜叉(えんやしゃ)夜堕骸(やたがい)夜々夜(ややや)。それぞれに対し、俺の4人の仲間が戦っている。つまり、俺は単身で暗黒王に挑んでいた。


「ぐっはっは、貴様程度の貧弱な刃、俺に通ると思っていたのか?」


 暗黒王の前に、俺の磨き上げてきた剣技は露ほども通じない。刃は届きすらもしないんだ。


「この程度か?あの時の女の方が、数十倍楽しめたぞ」


 あの時の……ああ、封印したっていう剣士のことか。どれだけ強かったんだよ、しかも女っていうし……。


「ぐっ、舐めるなぁああっ!」


 俺の気合を入れた一撃……それすらも、暗黒王の前には通じなかった。暗黒王の放つ黒い闘気で剣が阻まれて、本体まで届かないのだ。


「どうした、そんなものか?」


 このままじゃ、負ける……。こんな相手に、太刀打ちもできず、負ける……。


「ナーシェ!いったん離れてっ!」


 この声っ、仲間だ!剣士の俺のほかに、魔法使い、聖女、戦士、狙撃手がいる。その聖女の声だ。


「分かった!」


 跳躍して、暗黒王から距離を取った瞬間に、上空から無数の炎が降り注ぐ。こんな技、今までに見たことがないが……新技か?聖女の力は、神に祈りをささげることによる口上が必要なはずだけど、それも省略しているみたいだし。


「やはり、炎だけでは弱いわね……。なら、……」


 炎が消え、今度は、地面に不思議な模様が浮かび、辺り一帯が光に満ち溢れる。また、前口上無しの技……。聖女の祈りじゃないのか?


「ぐおっ、これは……、白天の魔法かっ……」


 暗黒王の悲痛の声。効いてる……のか?しかし、魔法……?聖女は祈りのみで、魔の法である魔法は使えないって聞いていたんだが、暗黒王が適当なことを言ってるだけか?


「ナーシェ、貴方ならば……貴方ならばきっと、勝てる。そう信じてるからっ!」


 ああ、分かってるよ。だから、俺は、気合を入れる。


「うおおおおおおおおおっ!」


 その時、俺の身体を蒼い光が包んだ。いや、違う、これは、俺の中から湧き上がってきている……のか?なんだろう、身体が、軽い。それに力が湧いてくる。これなら戦える。行けるッ、行けるぞッ!


「これで、終わりだッ!」


 最大限に力を込めた一撃、その斬撃には蒼色の力が秘められていた。まるで、全てを呑みこむかのように、大きな斬撃となって暗黒王を喰らった。


「ぐあああああああああああっ」


 終わった、のか?蒼と銀の光に導かれるように暗黒王は消えていく。何とかなったようだけど、この蒼いのは一体何だろうか。そう言えば、母さんが、剣帝が本気を出すとき蒼くなるとか言っていたような気がしなくもないが、剣帝と俺には関係がないしな。母さんは元宮廷魔導師顧問だったらしく、その流れで俺がこんな任務を請け負ったのだ。魔導師と剣帝は関係が無いにもほどがあるだろう。


「ナーシェっ!大丈夫だった?!」


 聖女が慌てて駆け寄ってくる。彼女は、セーベルレインの聖女見習いで、少々騒動に巻き込まれたせいでセーベルレインに帰れなくなっているという、少し厄介な事情を抱えている。まあ、主に俺の所為だが。それの所為か、俺を妙に慕ってくれている。


「ああ、大丈夫大丈夫。でもようやく終わったな……」


 そこに戦士が、次いで狙撃手、そして魔法使いが合流した。そして、故郷、剣帝王国(アルレリアス)へと凱旋するために進んできた旅路をひた戻る。





 狙撃手、戦士、魔法使いはそれぞれの故郷で別れた。聖女だけが帰れないので俺と共に剣帝王国(アルレリアス)へとやってきていた。


「やっと帰ってきたなっ!俺の国に!」


 俺の言葉に、通行人の何人かがこっちを見ていたが、どいつもこいつも知った顔。慣れたもんで、素通りだ。俺は聖女に問う。


「どうだ、この国は!」


 そんな問いに、聖女は、微笑みながら答える。


「ええ、良い国よ……相変わらず」


 ぼそりと、最後に言ったのは「相変わらず」と言う言葉に聞こえた。だが、それはおかしい。セーベルレインの聖女は国から出ることができない。その禁を破ることになったから帰れなくなったわけだし、今までに来たことがあるはずないんだ。特に、生まれながら聖女の命を受けていたからな。


「来たことが……あるのか?」


 俺は、少々疑問に思って、聞いてみる。すると、聖女は首を横に振って、いつもの笑みを浮かべながら言った。


「いいえ、残念ながら知っての通り他国にはいけない身だったもので」


 そんな会話を交わしながら、俺たちは、俺の家の前へとたどり着く。少しばかりボロいのは、なんでもうんと前からある家を改装しただけだからって母さんが言っていたな。母さんがこの地にやってきたころからっていうけどそれがいつごろかは知らない。何せ、随分前の王の時代から王家に面識が有るらしいからな……。


「ちょっとボロいが俺んちだ。昔っからある家を改装したらしくてな、見てくれは悪いけどいい家だから」


 俺がそう言うと、聖女は、家を見つめどこか懐かしさと悲しさのこもったような眼をしていた。あまりにもボロいから俺を不憫に思っている、とかそんなことはないはずだ。


「ええ、本当にいい家なんでしょうね。本当に……、嗚呼、この場所は本当に変わってないわ。あの傷も、あの隙間も……」


 またも、「変わってない」とか来たことがあるかのような発言だけど、もしかして、一回、抜け出して遊びに来たことがあったとか、そんなだろうか。聖女は確か俺よりも数歳年上だからな。俺が生まれてすぐとかに来ていたら、俺が知らないのも納得できるし。


「とりあえず入るか。ただいま~」


 俺は、とりあえず思考を切り替えて家に入っていく。そのあとをついて聖女も入ってくる。すると、昼間だってのに相変わらず酒を飲んでいる母さんがこっちを見た。


「あら、ナーシェ、帰ってきたのね」


 うちの母は相変わらずこともなさげに言うが、どれだけ大変だったと思っているんだよ。ため息をつきたくなるなぁー、全く。


「まあ、暗黒王ごときに後れを取るとは思ってなかったし、実際大丈夫だったでしょ?」


 はぁ……、あのな、仮にも最強の王と呼ばれてた十王の1人なんだぞ?それをよくもまあ、雑魚みたいに言ってくれるよ。


「俺一人じゃあ、ヤバかったよ。特に、こいつがいなかったら」



 そう言って聖女を見る。聖女はと言うと、母さんの方を何やら意味深な表情で見ていた。そう言えば、初めて会った時に聖女は俺にこんなことを言っていたか?


「いえ、私の好きだった人に似てるなって。懐かしくなっちゃって」


 俺が似ているなら母さんもその人に似ているとかそんな感じだろうか。そう思っていると、聖女が唐突に口を開いた。



「まさか、子孫とは思っていたけど、息子とは、ね。久しぶり、ナナナ」


 母さんに笑いかける聖女。どういうことだ、この口ぶりではまるで母さんと面識がある、それもかなり親しいように聞こえるんだが。


「まさか、アルデンテ……ううん、マモリ、なの?」


 母さんも心当たりがあったのか、その名前を呟いた。そう、聖女の名前は、「マモリ・クロムヘルト」と言う。でも、どうしてそれを母さんが知っているんだ?それにアルデンテってなんだよ。


「ええ、そうよ。本当に、久しぶりね」


 母さんと聖女……マモリが抱き合った。しかし、どういうことなんだろうか。俺の知らないところで知り合っていたのであろう2人の関係が全く分からない。


「そうだ、あんた、絶対驚くわよ。これからうちの主人も来るんだけど……」


 父さんも来てるのか。珍しいな。しかもよく俺とタイミング被ったよな。偶然ってすげぇな……。しかし、なんでマモリが驚くのか。


「そりゃ、ナナナの婚約者だもの、まともなはずないわ。ユリウス皇とかその辺かしら?」


 ユリウス皇……ああ、ジーグレッド団長のことか。母さんとも父さんとも昔なじみで、昔、剣の稽古をつけてもらったこともあったくらいだ。懐かしいなー。

 そんなとき、狙ってか、偶然か、家のドアが開いた。ギィイと軋む音を立てながら開いたドアから入ってきた父さんに、マモリは、動きを止める。そして、マモリの頬を涙が伝う。声が出そうなのを必死に手で押さえるも漏れ聞こえる声。信じられないものを見た、と言うような、愛する人と再会したような、そんな顔をしていた。


「なんで……、嘘……、そんな……」


 いつも理論派で、言葉をしっかり口にするマモリだが、今は「嘘」と「なんで」と「そんな」をひたすら繰り返して呟いている。


「よぉ、アルデンテ。鍛冶場、アリガトな。ナーシェ、お前も帰ってきてたか。しかし、世界は余程狭いと見えるな……」


 なんか、俺、ついで扱いじゃね?しかし、父さんもマモリの知り合いだとは……。どういうことなんだろうか。


「シンジ……、シンジッ!」


 父さんの名前を呼びながら、抱き付いた。え……えぇ……、何これ、どういう展開だよ。


「ははっ、しかし、ナーシェ。お前も存外たらしだな。この堅物を物にして帰ってくるとは」


 と、抱き付かれながら言う父さん。いやいや、あんたほどたらしじゃねぇよ。どうなってんだこの人。父さんの周りには女が勝手に惚れる成分が常に散布されているんじゃなかろうか。


「しかし、まあ、むかし、お前は俺のことを父親みたい、と言っていたが、ナーシェと結婚するならば、本当に父親になることになるのか。感慨深いな……」


「それを言ったらあたしがマモリの母親になる方が感慨深いってものさ」


 父さんと母さんとマモリで話が進むが、俺はついていけない。一体、何がどうなってるんだよ。誰か説明してくれぇええええ!

 え~、できてるものからどんどん更新していくスタイルで、ということで、できていないのは後回しにしています。あと、登場人物紹介もまだまだかかりそうなのでお待ちください。

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