341話:ニルドVSタケルSIDE.VVV
SIDE. Vanquish varnishing valvadia(The Gods of Valvadia……to Farnoeyar)
っつーことで、ボクらは次の階へついたッス。正直な話、薄々勘付いてはいたッスけど、やっぱりニルドが今代の「ファルノイア」だったッス。ああ、嫌だ嫌だ。面倒なことこの上ないッス。そも、ファルノイアとヴァルヴァディア、ネストラーゼの力は反発し合うって決まってるッスのに、わざわざその反発する相手に憑りつくのはバカだとおもうんッスよねぇ……。まあ、いいんだけどッス。
「おっと、久しぶりッスねぇ、ニルド。……ううん、もはや、ファルノイアってよんだほうがいいッスかねぇ?」
ボクの言葉に、ニヤリと人のものならざる笑みを浮かべるニルド。やっぱり、呑まれてるぇ。奇怪で厄介とはこのことッス。
「流石は気づくかのう……。しかし、よもやヴァルヴァディアの方につけぬとは、よほど酷骸とならんと言う意思強きものだったか」
もはや口調も跡形もないッス。完全に呑まれきってるッス。これが、呑まれた者の末路ですかぇ。父上はこうならぬために自害したそうッス。まあ、それが最良だったのかも知れないッスねぇ。
「白蛇水災、蜿蜒地陀、話すことは無駄じゃからのう。早う戦おうぞ、ヴァルヴァディアの小娘よ」
訳の分からんことをのたまわるッス。まあどうでもいいんッスけど。ボクもそろそろ本気で戦おうッスかねぇ。
「フルアップチェンジッス」
ウチの他の魔法少女たちの言うところのクラスアップッス。ボクは昔からコレを使ってたんで、魔法童女として戦う公の場以外ではこっちを使ってるッス。
「ほう、クラスアップを使えるのか。神がモノにあるまじきものだな」
そうッスね。でも、【右の腕】の4分では高速回復を使う相手に殺し切るのは不可能ッスからね、そう言った点でも別の力を手にせざるを得なかったんッスよ。それゆえに、ボクは魔法童女へとなったんッスから。いくら【神呪】と反発すると知っても、それ以外の力を手にできるならしなければ救えない命が多かったのですから。
「不変の悪神たるこのファルノイアに『魔』を向けるか。いいぞ、かかってこい、小娘ェッ!」
かかってこいってどこの三流の小物のセリフッスか?雑魚っぽさ丸出しで逆に関心するッス。こういうのって絶対に倒される敵のセリフッスよねぇ。
「魔法童女ゆるたる∥たるとぱい、敵を撃破するッス!!」
杖を振るうッス。ボクの得意な魔法は幻覚と幻惑と魅惑と蠱惑、ぶっちゃけて搦め手ッスよねぇ。さて、どうしたものかぇ……。
「愚者直進、猪小娘がッ!」
もう、ボクは魔法を突っ込むための威力増進と緩衝材代わりにしか使って無いッス。正面突破、それがこの相手に使うべき正しい判断ッス。
「覇王戯布千!」
カウンターッスね。魔法と魔力の奔流、ぶつかり合って、勝ち残ったのは向こうだったッス。まあ、魔法のおかげで大したことにはなってないッスけどね。
「クハッ、小娘、クラスアップしてその程度かッ?所詮は小娘、弱い、弱すぎるぞッ!」
手当たり次第にものを壊すかのように魔弾をぶっ放すファルノイアッス。さてはて、困ったッスねぇ。こうなった以上、多少無茶をしてでも止めるっきゃないッスよねぇ。
「――御先祖……ヴァルヴァディアの神に告げる……。
――我が身と御身、遥かに穢れたこの身を御身へと至るように、我は跪拝する。
――古の空は美しき、人々は猛り生まれ、そのすべてはヴァルヴァディアの贈物也。
――その輝かしき栄光を秘めた負神が力の宿りし【右の腕】を今ここに開放する。
――【神呪】解放ッ!」
【右の腕】を解放したッス。しかも……魔法童女の状態で、ですぇ。魔法童女の状態とはすなわち、体内の魔力を限界まで解放した状態ッス。それは神の御力たる【右の腕】とは超反発するッス。だから、4分よりも儚い限界、刹那の限界ッス。
「来たか、ヴァルヴァディアの女が力ッ!」
魔弾の威力が跳ね上がったッス。つまり、本気……ッ!このまま押されっぱなしはまずいッスねぇ……。
「瑪瑙、揺葉、楯無、鳳雛、雪奔」
【右の腕】を守護する六星に呼びかけていくッス。今は五星まで、そして最後の一星へと呼びかけるッス。
「星雲母」
空に輝く星は宝石のようで、空へと舞う葉、人の身に着けた鎧、将来空にはばたかんとする幼き鳳凰、空から降り注ぐ雪、空に輝く星々の塊、それら、ヴァルヴァディアの恵んだものが守護をするッス。
「空と人……美しき空、猛る人々、故に、ボクは空美タケルと名乗ったッス。だからこそ、ボクの身は、ヴァルヴァディアと共にあるッスよ!」
【右の腕】が輝きを放つッス。神性が魔力と反発して、体の内側からバラバラにしようとしてくるッス。バリ痛いッスよ!
「ヴァルヴァディア決戦技……夜玉の鼎」
三条の光の筋がファルノイアに降り注ぐッス。秘儀にして奥義、そして決戦の技。これが効かなかったらどうにもならないッスよね。
「ハッ、ぬるいわッ、小娘ェッ!」
拳一つで決戦技を打ち破ったッス。まあ、なんとなく予想をしていたとは言え、かなりまずくないですかぇ?
「これでどうしようもないとなると、手がないッスよ」
諦め、そんな思いがよぎった時、ある声が聞こえてきたッス。強い思いのこもった声が……。
――ヴァンキー、あきらめは肝心だけど、あきらめが速いのはよくないよ
影が……よぎる。それは、目の前にいるファルノイアのはずのニルドの声。なんで、そんなわけがないのに……。
――大丈夫、負けないって、……。勝てるよ。この私は、たった今、神の子から人の子になる、覚悟が決まったの……。だから、ヴァンキー……、ううん、ヴァンキッシュ、貴方に全てを託す。さあ、唱えましょう。
「――御先祖……ネストラーゼの神に告げる……。
――我が身と御身、遥かに穢れたこの身を御身へと至るように、我は跪拝する。
――古の海は深き、大地は轟き生まれ、そのすべてはネストラーゼの贈物也。
――その輝かしき栄光を秘めた負神が力の宿りし【左の腕】を今ここに開放する。
――【神呪】解放ッ!」
それは、ネストラーゼ【神呪】。ニルドの左腕に宿りし【左の腕】がいつの間にかボクに宿ってたッス。
――私の追い出された神としての力を全て、、ヴァンキーに譲渡したの
ボクに譲渡、ッスか?そんなことをして……いや、だから人の子に戻るってことッスね。でも、普通はそんなことをしちゃいけないッスよ。禁忌ッスからね。でも、それでもしたってことは、それだけの覚悟があるってことッス。
「摩訶奇怪、それはこの身体のネストラーゼの女の物ではないかッ」
不思議がるファルノイアにはニルドの声は届いてないみたいッス。正負をその身に宿し、我が身を神と化したボクは、もう、負けるわけにはいかないッス。例え、相手がファルノイアでも、かの悪神であったとしても。
「――Drive overflow…….。Master?Change the form!」
ボクの杖が叫ぶ声が聞こえるッス。容量がオーバーしたからボクにフォームを変えろって言う要求みたいじゃないッスか。なら、応えてやるッス。
「瑪瑙、揺葉、楯無、鳳雛、雪奔、星雲母、――【右の腕】を守護する六星よ!
海月、隆起、風化、潮海、麒麟、海瑠璃、――【左の腕】を守護する六海よ!
ボクは、全ての力をこの杖に……!」
そうして、ボクは……、ボクは……ッ!
「上位転身ッ!」
ボクの周囲に集まる力……。それが、ボクを包んで、そうして分かるッス。これは……、もう、ボクの今までの力とは異なる新しい何かッス。
「颯爽見参!夢と神の使者、魔法神女ゆるたる∥たるとぱいッス!」
本来反発し合うはずの力同士が混じり合って、そうして、ボクは魔法神女になったッス。魔法少女独立保守機構に多くの人が居て、中には魔法天女や魔法天使なんかもいるッスけど、流石に神と一体になったのはボクが初めてですぇ?
「ネストラーゼ・ヴァルヴァディア決戦技……冥明玉の鼎【崩常鬼】」
杖から出、十二条の閃光が崩爆を伴いながらファルノイアへと進むッス。これは、もはや技から概念へと、神の御力へと昇華したものッス。だから、ファルノイアには防ぐこと叶わぬッス。
「意味不明、何をした小娘ッ!!」
「呪いだか、悪神だか知らないッスけど、神と魔法、その2つを有するボクは、もはや神の領域を踏み越えたッス!」
おそらく、これこそが究極力場到達点ってやつッス。そうなんッスよね、愛美ちゃん。我らがCEOもきっと至ったはずのこの位置。負けるはずがないッス。
「呪呪不滅!呪いは……呪いは消えんぞッ!!」
そんな声を聴きながら、ボクは最後の一撃をファルノイアにぶち込んだッス。これで、本当に全部終わりッスよ……。長きにわたるボクらとファルノイアの闘いは終わりッス。
「……終わったっぽいね、ヴァンキー」
最後に、人となったニルドがそう言ったッス。もう……終わりッスよ。安らかに眠れッス、ファルノイア。




