334話:リッカVS鳴凛SIDE.MEIRIN
SIDE.MEIRIN
はぁ……どうしてこんなことに……。舞子さんになんかいろいろ言われていたけど、まあ、個人戦になるようなことはないと思っていたのに、何か、親友と戦う羽目になって、しかもその親友は、教え子の知り合いで、特殊な感じだった、と言う事実にわたしはどうすればいいんでしょう……。
「鳴凛、貴方と戦うことになるなんて思っていなかったですけど、鈴嵐立夏ではなく、リッカ・ベル・テンペスト=デュリエットとして、貴方の前に立ちはだかります」
リッカ・ベル・テンペスト=デュリエット、って名乗られても、いまいちわからないんだけど……。わたしは、鈴嵐立夏ちゃんとしての彼女しか知らないもん。
「そもそも、立夏ちゃんは……、なんなの?」
わたしの疑問。今まで普通に接していた彼女はいったい何だったのか、それを聞きたいの。別に咎める気はないし、その辺は、立夏ちゃんなら分かると思うんだけど。言葉のニュアンスっていうのかなぁ?
「何って……う~ん、難しいんですけどねぇ。て、天然記念物みたいな?」
天然記念物……?それってトキとかゲンジボタルとか、マリモとかイリオモテヤマネコとかそんな感じの?それにしては愛嬌がな……ううん、なんでもないよ?
「てか、デュリエット。元の姿にいったん戻ればいいんじゃないのか?」
元の姿……?!つまり、今は変身後?!でも、昔は、わたしと同い年だっただけあって、子供の姿とかだったけど、その頃から変身してたのかなぁ?
「それもそうですね」
そう言って、立夏ちゃんは、光輝いた。なんていうか、……思ったよりもだいぶ地味?変身のエフェクトがしょぼいというか……。
そして、光を抜けて現れたのは、なんていえばいいのかな……、難しい、形容しがたい何かなんだけど……う~ん、ユニコーンに近い感じはあるけど、なんていうのかな、角の生えたナマズ?
「鯨麒麟なんて呼ばれかたもするが、まあ、簡単に言っちまうと、角付きナマズかな?鯨ってのはイメージ通りで、麒麟は動物の麒麟じゃなくて空想の方の麒麟な」
あ~、なるほど、ビールの方の麒麟ですね!あ~、だから鯨にひげと角と背びれがついている感じなんですね。鯨と麒麟が合体して失敗した感じ?
「キモイって言われるからあんまりこの姿になりたくないんですよ!私達テンペストは人間になれますから。私としては可愛い姿だと思うんですけどね」
うわっ、気持ち悪い!この気持ち悪いのは、立夏ちゃんがじゃなくて、こんなでっかい不気味な外見なのに、声が立夏ちゃんと変わらないから、そのアンバランスさに対するものだよ?大丈夫、立夏ちゃんはきもくないよ?
「と、まあ、それはさておき、鳴凛こそ、この人と一緒に行動してるなんて、軍隊に入ったんですか?騎士団?それとも、愛人?」
光って、元の姿に戻った立夏ちゃんがいきなりそんな爆弾発言をしてきたので、わたし、おもわず、吹いちゃったじゃん。
「軍隊、騎士、愛人、ナンデ?!」
わたし、教師。軍人でも騎士でも愛人でもないよぉ?ていうか、軍人も騎士も非現実的で、唯一現実的なのが愛人ってヒドいせんたくしだよね!
「え、じゃあ、天使ですか?」
わぁい、わたし、天使だよぉ!ってそんなわけないでしょ!せんたくしがおかしいんだもん!なに、天使って!本格的に、天然記念物の頭の調子が心配になってきたよぉ……。
「教師と生徒の関係だ。俺は、今は完全に引退状態にあるから一般人だと思ってくれていい。だから、こそのただの高校生とただの教師だよ。……まあ、ただの、と言うには色々とあったがな」
今は完全に引退状態にあるから一般人って、前々から思っていたけど、青葉君って何者なのぉ?軍隊の隊長?騎士団の団長?愛人を囲っちゃうような人?死人?って、あ、転生してるっていってたから死人でもおかしくはないよね。でも転生前は鍛冶師だって言うし。
「へぇ……そうなんですか。あ、そう言えば、一般人と言えば、大和も元は一般人らしいですね。あの強さで元は一般人っていうのが末恐ろしいところですけど。元の場所で何をやってたんでしょうねぇ?」
「あ~、あいつの場合は別。元の世界が例外だらけだったから。自然現象とか揶揄される奴が4、5人いる世界じゃ、あいつでも、常人の壁を越えた程度だろうよ。東雲の名を継ぐ前……兼次の時だけどな。東雲の名を継いで大和になってからのアイツなら、あの世界でも十分にやっていけるだろう」
なんかよくわからない話をしているので、わたしは蚊帳の外。「かねつぐ」って直江兼続?って、なんか、語感からして違うっぽいんだよねぇ。
「さて、おしゃべりはこの辺にしておくか。上の階にもヤバイのが現れた。てか、この時点で、いることが分かるのが、化け物さを表してやがる。そうだよな、由梨香」
え、桜麻先生?次は桜麻先生の関係者と言うことなのかなぁ?心なしか、桜麻先生がふるえていたような気もしたけど。
「はぁ……、よりにもよって、と言うよりも予想通り、か。じゃあ、橘先生、ここは任せますから。俺たちは先に行きますよ」
「あ、うん」
思わず生返事で、そのまま答えちゃったけど、え、わたし、これでどうすればいいの?立夏ちゃんを倒せばいいのかなぁ?
「さて、と。それじゃあ、鳴凛。私達もやりましょうか」
やるって……戦うってことだよね。はぁ……どうしてこうなったんだろう。わたし、特に援護くらいしかやるきなかったのに。
「【天使の輪】……、力を、……貸して」
仕方がないから、この子に頼るしかないよ。【天使の輪】。舞子さんが貸してくれた武器……。
――システムインフォメーション……、非マスターの要請と判断しました。ブラッドタイプ……DK。ドラゴンキラーを確認。マスターとの血縁を承認。パワースーツ、アシストシステム、起動します
え……、ちょ、何、え?わたしが困惑している間に、目の前が薄緑に染まって、体が、少し軽くなるけど、キツイ感じがある。これは……?
「おぉ……、すっごい、SFとか未来系のやつに出てくる感じですね!」
立夏ちゃんが興奮気味に言っていたのが分からなくて、疑問に思うと、耳にも違和感。そして、耳に声が響いてくるよ。地味に音デカい。
――パワースーツ、アシストシステムを起動しました。外見変化を表示します
そんな音声アナウンスの後に、薄緑の視界の端っこにわたしの前身写真が表示された。何か、ぴっちぴちのボディスーツにブーツ、それからなんか近未来っぽい、えっと……へっど……?へっどまうんとでぃすぷれい?とか言うのを付けた状態みたい。手には、【天使の輪】が装着されている。
「これが、戦闘服?」
少年漫画は全然読まないからわっかんないけど、流石に、何かこんな感じのがあるのは知ってるけど、どちらかというと、ライダースーツ的イメージが近いかも。一色のじゃなくて、何か、白色で、線が入ってて、ところどころ青とか薄紫とかになっているやつ。
すんごく噛み砕くと、白いスクール水着っぽい感じ?ただ、腕も足もだからダイバースーツかな?
――本機、WS-450【天使の輪】は、本来、対人用の無力化兵器です。しかし、目の前の対象に対して、有効な無力化ができないと判断します。
あ、じゃあ、駄目じゃん。そう言えば、青葉君もあの時、精神攻撃と実装備を兼ねているって言ってたし、メインは精神攻撃なのかなぁ?
――よって、補助兵装のみでの攻撃が行えます。危険度A。危険に対抗するために、自動修復機能を使い、武装を最大限生かせるようにします。
「さて、そっちは準備が終わったようなので、私から行きますよ!」
うわ、立夏ちゃん、気が早い。昔からおとなしそうに見えて、意外と短気なんだよね、この天然記念物っ!
「まずは、初撃っ!」
――アシストシステム、推進力による移動の補助。前方向にバリアタイルを展開しつつ後退。手を前へと出してください
うわっ、体が勝手に動く。何か、バリアみたいのも張ってるし!えっと、手を前に出せばいいのかなぁ?
――動作、確認。攻撃をします
え……?
――炎夜・死暗による辞世の句
【天使の輪】が勢いよく炎を噴き出して、立夏ちゃんに襲い掛かる。って、ちょっと待って、え、ナンデデスカ?!
「くっ、……でも私はッ!私はッ!私は第三風帝ですッ!」
ふわっ?!炎を拳で掻き消しちゃった!よく見ると、手の周りに風が渦巻いているから、それを使って掻き消したんだね。
――炎系統は風によって掻き消されると判断。次の攻撃に移行します。
――雷夜・痺れ燃える心の響き
――なお、技の名称は全てマスターが考えたものですのでAIのネーミングセンスに疑念を抱かないでください
誰も技名がダサいとか思ってないからぁ!そんなことよりも、うわ【天使の輪】から勢いよく雷がぁー!
「東雲流鬼剣術!【爆裂!燃え上がれわっちの拳ィイイイ】!ちなみに技名を考えたのは楪さんですからッ!」
見えないけど、たぶん思いっきりどうやってか殴った立夏ちゃんが雷を爆発でかきけしちゃった!てか、そんなに、技の名前を自分で考えたと思ってほしくないの?恥ずかしいの?そして剣術なのに拳とは如何なものなの?
「そして、東雲流鬼剣術!【猛烈!あいつの心を射抜く激烈キッス!!!】。これも考えたのは楪さんですから!」
猛烈なのか激烈なのか、そして、剣術なのに射抜くとは如何な物なの?てか、キッスってキスしてどうするの?
と思ったら、飛んできたのは投げキッス。でも、あれ……?
「今のは隙を作る技ッ!最後に、東雲流鬼剣術!【熱烈!わっちの心がぴょんぴょんせんのじゃ~!】!これも考えたのは楪さんですから!」
その時、わたしの眼前を覆っている……へ、へっど?ヘッドマウントディスプレイは衝撃の映像を捉えた!な、なななんと!ものすごい勢いで拳を連打する立夏ちゃんの姿がスーパースローで映ったのです!
――タイミングの解析を済ませました。
――雪夜・心に降り積もる寂しさと言う名の雪
――なお、技の名称は全てマスターが考えたものですのでAIのネーミングセンスに疑念を抱かないでください
なんと、猛烈な吹雪が、激烈な感じに、爆裂するように立夏ちゃんを熱烈に襲ったのだ!それも、拳と拳の間を縫うように手が差し出されて、体に直接当たるように!
「うっ……きゃあああ!」
あ、猿みたいな声、……とか思ってないよ立夏ちゃん。うん、ゴメン、思った。うっきゃって喚く猿みたいだったよ。
「誰がサルですかッ!」
あ、吹っ飛びながらもそれだけ叫べるなら十分元気だねぇ、よかった。それでもそのまま、立夏ちゃんは姿が掻き消えていっちゃう。
「ふぅ……やっと戦いが終わったみたいですねえぇ……。鳴凛、次に会うのは塔の外、元の世界で、と言うことです。そして、……蒼き神よ。貴方に加護があらんことを」
え~、遅くなりました。そして、鳴凛のキャラが崩壊しきってます。かつて、鍛冶編のプロローグあたりでも、鳴凛は書き慣れてないキャラだから書けない、もう書くことはない、と言った記憶がありますが、こうして書いて結果、「誰これ」状態です。はい、すみません。




