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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
324/385

324話:世喰いVS桜子&零桜華SIDE.ZSH

SIDE.0 SAKURA NO HANA


 あたしが、階段を昇り終えると、そこに居たのは巨大な化け物だったわ。まず、そいつが目に入って、そして、周囲を見渡して気づく。ここは、A支部とB支部の間にある荒野よ。莫大な広さの土地の一部。そこによく似ているというより、そのものをごっそり持ってきたみたいで気味が悪かったわ。そして、目の前に、これ見よがしに抜けと言わんばかりに地面に刺さっていたわ。


 ――魔装大剣トツカと魔装大槍ボルセルク。あたしがかつて使っていて、「千年蟲」と戦った際に砕け散った思い出深き2つの魔装武装。本来、害蟲と戦うのに、魔装武装以外の物を使うのは非効率的で、それこそ、ただの「カタナ」なんかじゃ、奴らに傷1つ負わせられないわ。よほどの達人なら、雑魚相手に死闘を繰り広げられるでしょうけど、まず、普通は一発目で当てた瞬間に「カタナ」が折れるもの。


 【宵剣・ファリオルーサー】はその中でも特別で魔装武装でなくても、魔力を纏って戦ってくれていたけれど、実際のところ、魔力を刃に通す効率では、機関をきちんと持つ魔装武装の方がダントツでいいわ。だから、今ままで、あたしが、使っていたのは2つの武器が半分になって手数が半減し、魔力の効率が悪くなって、さらに半減。それが、全盛期まで戻れば、だいぶマジになるってもんよ。


 空に浮かぶ、巨大な化け物を見て、あたしは、その2つを抜いたわ。しっくりくる。間違いない、あの時に失ったあたしの武器。手に馴染むわ。体の一部とまで言っても過言じゃない。長年持っていなかったはずなのに、体はやっぱり覚えているものなのね。


呪詛(じゅそ)は纏ってないみたいね。まあ、『零の一』がいないから『呪魂(じゅごん)』が発動していないのは納得。そのおかげで、あの時ほどは難しくないでしょうね。ただ、あれを倒すにはやっぱり、黎明の王の奥義、『麒麟(きりん)』を越える技が必要よ」


 黎明の王、世界を救った大英雄。黄羅(きら)。人類が希望を見出した切欠となる人物よね。その男の必殺技と同等の技を使わないと、あれが倒せないのは道理よ。


「ええ、何とかしてみるわ。父さんたちは先に行きなさい。こっちも切り札が無いわけじゃないから。そうでしょ、母さん?」


 どうせ隠し玉を持っているでしょうから。ウチの母親は、そう言うところのある、やや腹黒だって評判だったし。てか、それくらいないと、ここまで自信満々なわけが……ないとも言いきれないのがウチの母だけど。


「何を勝手に言ってるの。まあ、あるんだけど。切り札とまでは言えないよ。零桜華の方がいろいろとありそうだけど?」


 そう言いながら、母さんはデュランダルを……魔装大剣・デュランダルを構えたわ。ったく、まあ、確かに、あたしの切り札もあるんだけれどね。ほいほい、あたしも構えりゃいいんでしょ?行くわよ、トツカ、ボルセルク!


「じゃあ、頼んだわよ。死なないでね」


 父さんはそう言って、走っていくわ。あたしは、ボルセルクを前に、トツカを後ろに引いた構えを取る。槍主体の我流の構え。そして、あたしの最も得意とする構え。


「さて、と、ほんじゃ、試しにいってみましょうかね」


 魔装大槍・ボルセルクの魔力収束回路が唸り声をあげて、槍の中心から溢れるように出る力でガチガチと音を立て始める。そして、魔力伝達回路が眩い光を上げるわ。さあ、一発目、ぶっ放しましょうか。これがどこまで通用するかで、勝負の行方も変わってくるでしょうからね。


「我流・八鬼四葉千(はっきしようせん)……其ノ四(そのよん)ッ!」


 貫くように槍先に集まった魔力。それを思いっきり槍を振るう要領で吹っ飛ばす。斬撃となって世喰いへと突っ込んでいくわ。避ける気配はなし。と言うか、動く気配すらないわ。巨大な目は、ただひたすらに真下を見ているだけ。手のような足のような触手を動かす気配はない。このままただ動かないでいてくれると嬉しいんだけどね。


――ドゥウンッ!


 触手のようなのにぶち当たった瞬間、ギロリと巨大な目がこっちを見たわ。それと同時に、あたしがたった今、貫き斬った触手が一本地面に落ちる。どうやら、通じるようね。よかったわ。ただ、今のでターゲティングしたのかしら、他の触手が動き出した。一発目で一本切っただけマシね。そうじゃなかったら襲ってくる触手が一本増えていたんだもの。


「こっちにも来たわッ!さて、私の方がどのくらい通じるかしら、ねッ!!」


 母さんは、来た触手をデュランダルで受け止めるわ。巨大な……それこそ、自分の身長と同じくらいの直系を持つ触手が叩き潰すように迫ってきたのを切り返せればいいんでしょうけど、流石にそうもいかないみたいね。ただ、弾ければいいのに、そこまでは無理っぽいから、母さんはダメージを受けそうね。こっちに、もうちょい攻撃を集中させた方がいいっぽいわ。次の攻撃、行くわよ!


「我流・六葉九天(ろくようくてん)……伐鬼(ばっき)ッ!」


 今度は、魔装大剣・トツカに魔力を全力で注ぎこむわ。魔力収束回路がガガガがガッと壊れるんじゃないかってくらいに悲鳴を上げる。魔力伝達回路が青白い光を纏う。行くわよッ。


――ギュルルルルルッ!


 九つの斬撃が六角形とその中をアスタリスクの形に区切ったように飛んでいく。特殊な剣の振り抜きでどうしてもその形になってしまう斬撃は、触手を二本斬り飛ばしたわ。ただの九天伐鬼の八の斬撃、一の横薙ぎとは違うのは、六葉だから。残りの触手は十本くらい。はてさて、どうしたもんかしら。結構魔力を喰うのよね。本体へのとどめのことも考えて、あんまり無駄遣いはできないんだけど。……あ、また、母さんの方に触手が!


「ハァアッ!」


 母さんの短い声。そして、触手を弾き返した(・・・・・)わ。さっきは受け止めただけのはずなのに。今度は対応できている。どうなってんのよ。そう思っていると、また、母さんの方に触手が……


――ざしゅっ!


 今度は、切れた……?!僅かだけど、あの触手に切れ込みが入ったわ。どうなってるのよ。っと、こっちにも来てるわね。ああ、もう、あれが隠し玉ってやつかしら。


「我流・八鬼四葉千(はっきしようせん)……其ノ一(そのいち)ッ!」


 穂先に魔力が溜まる。さっきよりも弱いわ。回路もうならない。けれどそれでいいのよ。槍を突く、その瞬間に斬撃が飛ぶ。その次の瞬間には、もう、魔力が装填されている。素早くもう一度、放つ!5秒間に十二発。それにより、触手は弾きながら切り裂かれる。


「次で、いけるわッ!」


 母さんが叫んだ、その瞬間、母さんに触手が降ってくる。それを母さんは、一振りで斬りさいた。なぜか母さんの周りには、無駄に地面に切り傷が走っているけど、どういうことなのかしら?


「《切断の付加デュランダル・バースト》ッ!!」


 そう、それが母さんの《古具》って訳ね。なるほど、だからこそ、地面に切れ跡が……。斬る度に切れ味を増す剣。それが母さんの《古具》ってこと。だから、最初は受け止めるだけだったのが、徐々に跳ね返し、切って、斬って、と威力を増していったのよ。


「我流・六葉八絶(ろくようはちぜつ)……神鬼(じんき)ッ!」


 大ぶりの斬撃が触手の根元を切断するように断ち切る。三本落ちて、残り六本。その六本がまとめて、母さんの方へと迫る。チッ、ここから叢雲流でまとめてッ……


「見様見真似、叢雲流・奥義【布都之御霊(ふつのみたま)】ッ!!」


 え……?母さんのデュランダルの魔力収束回路が悲鳴を上げて、魔力伝達回路が白金の光を放つわ。あれは間違いなく、叢雲流・奥義【布都之御霊(ふつのみたま)】!でも、デュランダルだと、武器の練度が足りないから難しいって言ってたはずじゃ……


「正真正銘隠し玉ってやつだよ。こういうのは本当にやばい時まで取っとかなきゃ、ねッ!」


 流石母さんね。六本の触手全てを一閃の斬撃で消し去ったわ。しかし、まあ、血のにじむような努力で習得した身としては、見よう見まねでここまでされると結構気分が悪いんだけど。まあ、武器の所為か、見様見真似の所為か、あたしや父さんの半分程度しか威力が出てないから勘弁してあげましょう。


「さて、と、んじゃ、残る本体は、あたしが決めるとしますかねッ!」


 両手の……魔装大槍ボルセルクと魔装大剣トツカに全力で魔力を注ぎ込むわ。さっき、母さんを助けるために叢雲流使っていたらこれはできなかったでしょうね。だから、ラッキーと言えばラッキーね。さっきから後先考えずにバカスカ打ってたから、危うくガス欠で、とどめさせなくなるところだったわ。一応、気を付けてたのに。


「我流・八鬼四葉千(はっきしようせん)六葉七剱九天ろくようななつるぎくてん五ヶ祀(ごがまつる)一二三之刀(ひふみのとう)】ッ!!!」


 ボルセルクもトツカも、どちらの魔力収束回路も、ギチギチギチギチッと悲鳴じみた唸りを上げて、魔力伝達回路が虹色の輝きを放つ!この槍剣術の最終奥義ともいえる技。総集奥義と言い換えてもいいわ。全てがつぎ込まれている技なのよ。


「ハァアアアアアアアアアアアア」


 あたしの絶叫と共に、まず、手前に構えたボルセルクを、魔力を纏わせたまま、体をねじるようにして後ろに引く。そして、トツカが前に出る。そのねじれを元に戻すようにボルセルクを投げ飛ばす。その瞬間、体のひねりに応じて剣を振り抜き、トツカの斬撃を一気に飛ばす。


「もって頂戴よ、トツカ。あんたにはもうちょい、無茶させるからッ!」


 そう言って、再びトツカの魔力収束回路に魔力を叩き込む。魔力伝達回路が光を放つ!これで、完全に決めるわッ!


「叢雲流・奥義【天之羽々斬(あめのはばきり)】ィイイイ!」


 二閃の斬撃が先に撃ち放ったボルセルクと斬撃を追うように飛ぶ。そして、それらが合わさった。大きな塊となって、ボルセルクがそれらの斬撃を纏うように全てを貫かんとする勢いで世喰いへと突っ込んだ。


――グォオオオオオオ!


 そんな音を立てると同時に「■■■■□■■□」とそんな風に世喰いは叫びながら消えていく。地面に切り落とした触手も含め、全て消えていくわ。後に残ったのは、地面に深く突き刺さったあたしのボルセルクだけ。……終わった、のかしら?

 え~、念のために現状を。割とこの章がここまで長かったので、あと誰が残っているのかとかが分かりづらいので、ちょっとだけまとめています。

十八階層まで突破

残りのメンバー、紳司、暗音、清二、美園、真琴、秋世、静巴、刃奈、ユノン、ミュラー、由梨香、鳴凛、律姫、タケル、紫炎(残り計15人)


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