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《神》の古具使い  作者: 桃姫
聖剣編 SIDE.GOD
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32話:金色と紅色

 翌朝、朝の4時過ぎに起きた俺は、まだ母さんも起きてなかったので、自分で軽く朝食を作り、ついでに母さんと姉さんの分として目玉焼きとトーストとサラダを用意して、家を出た。朝の5時に待っている、と言う連絡だったので、間に合うように、いつもよりも断然早めに家を出たのだ。


 早朝の住宅街は、いつもの登校風景と違い閑散としていて、所々で、調理音や排水音などの生活音が聞こえる程度の静けさだった。人も(まば)らだ。いつもなら登校途中の学園生が居るのだが、今居るのは、ごみを出しに来た近所のオバサンやジョギング中のおっさんなどである。


 清々しい朝なので、俺は深呼吸しながら、ゆったりと学園への道を行く。割りと気分がいい。


――トスン


 しかし、欠伸して伸びながら進んでいると何かにぶつかってしまった。俺は慌てて謝ろうとするが、周囲に人影は無かった。

 何だ、と思ったが、一瞬、俺の視界にノイズが走ったように見えたのだ。そのノイズの軌跡をたどるように、そこへ手を伸ばした。


 ふにゅり。そんな柔らかい感触が俺の腕に伝わった。下の方が少し硬いのはブラをつけているから地の感触が伝わっていないだけだろう、とまで考えてから、それが女性の胸であることに気づいた。


「あ、悪い」


 つい、口から出た。そして、手の先を見ると、この6月だというのにマフラーを巻いた、髪を右側の下で三つ編みのおさげにしている少女だった。髪の色が水色だが、どうやら染めたものらしい。制服を見る限り、ウチの学園生だ。タイの色からして先輩。


「気をつけるべき」


 そういいつつ頬を朱に染めているあたり、恥ずかしかったのだろう。しかし見たことの無い先輩だ。


「……、この本を貸すので読むべき」


 この人「~すべき」って言葉が好きなのか?そう思いながら俺は差し出された本を見る。題名は、「神々の図鑑~神様は女の子~」と書かれた、いわゆる萌えキャラ化させて説明する図鑑のような本だった。


 しかし、このタイミングで、「神」の図鑑はありがたいが……、何でだ?本を裏返すと貸し出しようのバーコードがある。ウチの学園の図書室のものだ。


 そういえば、昔……つっても一年生の頃か。あそこで、よくいろんな本を借りたものだ。それこそ、文学から図鑑から。そういえば、最後に借りてたのは、これの系列の「魔物共~可愛い魔物っ娘~」だったか。それの続編なのか?じゃあ、俺がこのシリーズ借りてたのを知ってたのか。


「シリーズは全部読むべき」


 やっぱり、俺がこのシリーズを読んでいたのを知っていたのか。何なんだ、この先輩は?


「本は人に安らぎを与えるから、皆、もっと注目すべき」


 本好きなのだろうか。ウチの図書室……もとい、図書館は広いからな。10万冊以上あるとか言う蔵書のせいで、蔵書点検は大変だとか。


「では、いずれ図書館で会う、べき」


 そう言って、気がつけば彼女の姿は無かった。一体誰なんだ?いや、今はとりあえず放っておこう。学園に急がないとファルファム先輩との約束の時間に遅れてしまうからな。








 早朝の学園には、ほとんど、と言うか、全く人がいなかった。廊下の電気も教室の電気も一切点いていない。上がりかけの太陽が、窓から眩しく光を差し込んできて非日常な雰囲気を醸し出していた。


 時刻は4時53分。ファルファム先輩もまだだろうから、俺は、そのまま生徒会室のドアを開ける。


 その瞬間、目に飛び込んできたものを見て、俺は息を呑んだ。


 美しい、そう思った。


 眩い朝日が金色の髪に光を当て、幻想的に輝いていた。白い肌は、金の光の中でも負けずに綺麗で、そして、胸の双丘は激しく主張をしている。視線を下げれば、細くくびれたウエスト、そこから続くヒップライン。


 太陽の光にも負けない黒紅色の瞳が、全体の明るい色の中に()える。


 そして、右脇腹から乳房にかけて紅い紋様があった。右脇腹から上へと伸びる(いばら)(つた)と右乳房(おっぱい)に咲くように見える紅薔薇(あかばら)


 それら全てを踏まえて、まるで、幻想の天使のように美しい女性。それは、なぜか一糸纏わぬ姿で生徒会室にいたファルファム先輩であった。


「……」


 俺は、無言で、思わずファルファム先輩の肢体をその目に焼き付けた。

 甘美な香りがファルファム先輩の方から流れてくる。甘い花のような、爽やかな香り。


「これはね……」


 俺が室内に入ったのをチラリと確認するように見てから、ファルファム先輩は、静かに語りだす。右脇腹から上へと紅薔薇をなぞりながら、語りだす。


「あたしに、生まれつきついていたものなの……」


 ファルファム先輩は、悲しげな顔で、何かを思い出すように、目尻に涙を浮かべながら話し続ける。


「この()の色とこの薔薇は、あたしが生まれたときから神様から(たまわ)った物だ、って、(マミー)が言ってた」


 確か、ファルファム先輩の出身はイギリスだったよな。なら、まあ、宗教とかもあるからおかしな話ではないな。


 そもそも、日本人が無頓着なだけで、割りと各国では、熱心に宗教を信奉しているところが多い。日本のように八百万の神だったり、あらゆる国からの影響を受けて様々な宗教がごったになっているようなところとは違うのだ。


「生まれた時から、あたしは、……神に遣わされた者だ、と持てはやされたの……。最初は、嬉しかった。けど……」


 一気にトーンが沈む。場の空気が重くなる。勝手に持て囃すのは、いつの時代も変わらない。大人は、期待を押し付けるのだ。


「あたしは、次第に嫌になったの。自分を抑え込まされて、《聖王教会(せいおうきょうかい)》で神遣者(シスター)をやらされて」


 自分を殺して生きてきたんだろう。それが、どんなに辛いことかは、俺には分からない。自由に生きてこられたからだ。でもファルファム先輩に自由など、無かった。


「そんなある日、ね。聖騎士王様が《聖王教会》に帰ってこられてね」


 聖騎士王?教会なのに騎士の王が居るのか?よく分からないな。まあ、話を聞けば分かる、のか?


「聖騎士王、アーサー・ペンドラゴン様。今、《聖王教会》を取り仕切る最高責任者のことなんだけど」


 アーサー・ペンドラゴン、ってアーサー王伝説のアーサーか?

 でもペンドラゴンは、アーサーの父、ユーサーが賜った称号でアーサーは名乗っていないはずだが?


「この世界にある《聖剣》の中の1本、《C.E.X.》……《Collbrande. Excalibur.》を持っている方なの」


 コールブランド・エクスカリバー?

 コールブランドもエクスカリバーも同様の剣だと言われていたはずだが、それが1本として現存しているってことか?


 まあ、アーサー王が王の選定のときに岩より抜いた剣、とすることもあれば、選定の剣が折れた後に、湖の精より貰った剣とされることもあるな。


「あたしは、その人に呼び出されて、そして、解き放たれたんだ……。そして、聖騎士王様と交友があったセイジって人に連れられて、あたしはこの三鷹丘に来たの」


 セイジ……?俺のじいちゃんと同じ名前だな。まあ、単なる偶然か。それこそセイジって名前の人間はごまんと居るだろうしな。


「でも、あたしは、この体のことは、誰にも話そうとは思わなかったの……。それこそ、体育で着替える関係から、親友だったユノンには話したけどね」


 そこまで言われて、俺は、昨日のお礼の意味に察しがついたのだ。俺の発言とファルファム先輩の境遇なら、分からないでもない話だ。


「でも、シンジ君は、昨日、あたしの体に興味を持ってるって言ってくれたし、刺青まみれでも構わないって言ってくれた。だからね、あたしは嬉しかったの……」


 そう言って俺に抱きついてくるファルファム先輩。むにゅりと弾力のある感触が伝わってくる。今朝の先輩も相当なものだったが、ファルファム先輩はそれを超えていた。


 弾力が段違いなのである。「たぷたぷ」と「ふにふに」の入り混じった様な柔らかさ。中には硬い部分も有るのだが、それは、周りと比べて少し硬い程度であり、決してシリコンなどではない。


 どうでもいい話だが、男には、カップの定義がよく分からない、とは田中の弁であった。かく言う俺もよく分かっていないのだが、姉さん曰く「トップとアンダーの差であって、決して大きさだけのことを言ってるんじゃないのよ!」とのこと。


 さて、一糸纏わぬファルファム先輩のトップもアンダーもさらされているわけだが、俺には測る術がない!


 いや、ここは、この感触を心行くまで堪能しておくのが吉か……。それとも、色々、眼に焼き付けるべきか……。


 結論として、俺は、感触を楽しみながら、眼に焼き付けることを選ぶっ!


 そっと、ファルファム先輩の背に腕を下から回しつつ、軽く尻を撫でながら、背中の感触も確かめる。すべすべしていた。


 何か、何かないのか、と俺は、目だけを器用に動かして、何かを探す。男は、ピンチのときとエッチなことをするときだけは何でもできる、とはまたも田中弁。


 そして、目に付いたのはファルファム先輩の脱いだであろう制服と、下着。ブラがひっくり返してあり、タグが見えている。お、大きい!ブラをパッと見ででかいと思うことは初めてだな。姉さんが割りとでかいから、他のは、あんま変わんなかったり小さかったりするのに。


 そして、タグに記されたEの文字。バスト、アンダーバストと書かれたその下に「E」としっかりと記されていた。なお、ブラは日本製の模様。


 Eカップ、だと……。なんていうことだ……。確か姉さんはDカップ(自称)だったはずだから、それよりも上、だと。


 無論、さっきも言ったようにカップはトップとアンダーの差で決まるから、一概にドーンとでかく見えるわけではないのは知っているのだが……、姉さんよりもかなりでかく見える。


 これが外人の凄さかっ!


 いつもの足元の露出の高さで分かっていたが、脚が長いのも明白だし、スラッとしてて、ボン、キュ、ボン。まさしく理想の金髪美女。


「シンジ君」


 ファルファム先輩は、抱きついたまましばらく離れることは無かった。俺は、ファルファム先輩の背をさするように、感触を感じながら抱き返す。


 そのまま、俺とファルファム先輩は、朝の予鈴がなるまで、抱き合っていたのだった。……ということは、2時間近く抱き合っていたことになるな。時間が流れるのが早く感じたのは、ファルファム先輩と一緒にいたからだろうか……。

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