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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
318/385

318話:深紅VS無双SIDE.TGM

SIDE. The Three Gods of MUSOU(a Strongest GOD)


 んで、私が深紅の業を担当するわけだけれど、……一言で簡潔に言っていい?超面倒。このバカ、火力一辺倒だから面白みないし、属性変わったところで、「それで?」だし。ぶっちゃけ、戦っても面白くないタイプなのよね。ウチの代の烈火隊なら、春夏(はるか)が一番戦ったら面白くて、次点で面白さだけで言うなら千陰(ちかげ)かしら。あと、柚葉(ゆずは)ね。あの辺は、戦い方が独特だから、その分面白いのよ。それに比べて、私も人のことを言えないけど、火力一辺倒だと、それを上回る火力でごり押しするか、罠にでもかければすぐに終わるもの。


 あ~、嫌ねぇ……。この感じ、ぶっ放せば終わってしまうでしょうから。ただの刀だけど、それでも、深紅に負けるなんてことは起こりえないわ。でも、どのくらい強くなったか、見せてもらおうじゃないの。


「行くぜッ、無双ッ!!」


 深紅は、黄金の鎧をまとうわ。あの時と……烈火隊に入隊した、あの日を思い出すような光景ね。あの日もこうして深紅と戦ったわ。でも、だからこそ、今回は、お互い全力で行かせてもらうわ。今回は手加減なんて生易しい真似はしてあげないわ。……と、言ったものの、そう言って最初に踏み込めば、私の勝ち確定なのよね。


「《龍王の遺産(ドラゴン・グリッター)》ッ!」


 それと同時に深紅の髪は黒く変色しだして、瞳も黒色へと変わるわ。この感じ、やっぱり、あの時よりも本気ってわけね。あの時は赤髪のままで戦っていたもの。さて、それで、どのくらい強くなるのか、楽しみね。


「《炎龍の劫火ドラゴニック・ブレイズ》ゥウッ!」


――Blaze(ブレイズ)


 黄金の鎧に埋め込まれた紅の宝石が、眩い紅光を放って、瞬間、炎が沸き起こる。その劫火は、地面をうねるように進み四方へと広がって、視界を即座に火の海へと変えたわ。まるで地獄の炎みたいね。でも、この程度の炎なら、刀を使うまでもないのよッ!


「ハァアッ!」


 私は、刀を2振りとも地面にぶっ刺すと、拳を握り、思いっきり前へと突き出すわ。深紅にぶつけないように気を付けながら、ね。


――ブォオオオン


 おっと、ちょっと、力加減を間違えたかしら。拳圧と衝撃で、全部の炎を吹き飛ばしたところまではよかったんだけど、強すぎたのか、壁にへこみを作っちゃったわね。まあ、それで塔が揺れもしなかったから、相当頑丈なのね。前の時とは違うってのがよくわかるわ。


「おいおい、マジかよッ!」


 深紅が少し驚いてるけど、あんた、知ってるでしょ?私が、どれだけ規格外かってことは、長い間一緒に居たんだから。こんなことで一々驚いていたら、どうしようもないってのよ。


「なら、これでどうだよッ!」


 そう言うと、今度は翠色の宝石が、翡翠を通したみたいな透き通る翠の光を放ったわ。今度は風系統なのね。いいわ、受けて立つわよ。


「《嵐龍の劔舞ドラゴニック・ハリケーン》ンッ!」


――Hurricaneハリケーン


 竜巻、それも、風の1つ1つがかまいたちのように鋭い風。それがこっちに向かって勢いよく迫ってくるわ。でもねぇ……、この程度なら、拍子抜けってもんよ。やっぱり刀はいらないわ。


「こんなもの……拳一つあれば平気だもの」


 不敵に笑い、迫る竜巻に一歩踏み出して、竜巻に拳をぶつけて粉砕する。霧散する竜巻は、私の拳も身体も傷つけることはできなかったわ。


「おいおい、嘘だろッ?!くっそ、相変わらずチートってか、ぶっ壊れた性能してやがるッ」


 酷い言いぐさだけど合っているから言い返せないわね。確かにぶっ壊れているでしょうね。ステータスってもんがあるならカンストオーバーの特殊能力持ちみたいなもんだもの。呆れてものが言えないってのが普通よ。


「本当に、篠宮の血はどうなってやがるんだよ。本家、篠宮よりも血を分けた青葉の方が強い奴がポンポン生まれやがるし、それでも篠宮にも化け物もいる。お前の血は、入った一族を最強にする遺伝子でも組み込まれてるんじゃねぇのか?」


 あながち間違いでもないのかも。ただ、蒼天の馬鹿の家系に強いのが多いのは、単純に元の資質が高いのと、「剣の一族」、「蒼刃の特性」、「蒼天の神性」、「無双(わたし)の神性」と言う要素の混じり合った結果でしょうけどね。二重神性属性の時点で、強くて当然だもの。

 うちの家は、元々、死宮の家系だからこそ強いんでしょうけどね。


「ま、今の篠宮にいるのは、そこまでぶっ壊れちゃいないけどな。真琴も真希も普通ってほどじゃないけど、そこそこって評価がいいとこだし、今回来ないってことは、真希の娘もそこまでじゃないんだろうしな。まあ、あの雷無ってのはヤバイが」


 あら、深紅の目ってのは随分と節穴なのね。いえ、まあ、はやて本人に会ったことが無ければ、こういう反応になるのかもしれないけど、潜在能力だけなら、あれは超一級よ。それに、西野の方でも王戯がいるし、(あか)なんかも時期に生まれるでしょうしね。東雲には佳美弥がいるし、彰も生まれてくる。


「じきに、分かるわよ。雷無どころじゃないわ。異常なのは山のようにいるんだもの。【彼の物を起こす者】の眷属もうちの家系に生まれるしね」


 さて、と、おしゃべりはこのくらいにして、戦いの続きをやらないと、いつまで経っても終わらないわよね。そろそろ、刀を使わなきゃいけないくらいの攻撃をしてきてほしいんだけれどね。


「んじゃ、行くぜッ、もう一発デカいのをよぉッ!」


 へぇ、楽しみねぇ……、どんな攻撃が来るのかしら。今度は、……黒色の光が、視界を覆うわ。黒、なるほど、土の上位互換ね。


「《地龍の破砕ドラゴニック・ブレイカー》ァアッ!」


――Breaker(ブレイカー)


 へぇ、地面を割るように伝わって、地面を割るのね。まあ、この塔だから割り切ってないけれど、結構ヤバイし、そのうえ、割った地面から欠片を飛ばしてきている。なるほど、地面を割って、相手を動けなくして、破片で攻撃するって技なのね。珍しくパワー特化じゃないけど、それでも、面白みに欠けるわね。だって、こんなもん、鎧なんて使わなくても、真似できるじゃない。


「こんくらい、かしら、ねッ!」


 声に合わせて、地面に拳を叩きつけるわ。割れた地面の横の地面をたたき割って、飛んでくる破片に割った地面の欠片をぶん投げる。ようするに、深紅の魔法を相殺したってところかしらね。


「おいおい、この馬鹿力がッ、どこまで化物だよッ!」


 そう言って、次は、蒼い光を放つ。水系統、最上位となると氷かしらね。氷ってのは、まあ、散々、見てきたものとして、どのくらいの物なのか気になるわよね。刀を使わなくちゃならないほどの氷ってのは、どのくらいのか知っているから、直感だけで分かるわ。あ、これ、しょぼいやつね。


「《氷龍の冷界(ドラゴニック・アイス)》」


――Ice(アイス)


 瞬間、世界は凍り付く。へぇ、中々じゃない?でもやっぱり、抱く感想はしょぼい、よね。あの子の出力の10パーセントにも満たないもの。火で溶ける氷は氷じゃないわ。


「知ってるかしら、根性と気合があれば大抵のことはどうにかなるのよ?そう、どんなに分厚い氷が張ろうと、どんなに寒かろうと、ね」


 そう言って、少し、気合を入れるわ。根性論、気合と言う非論理的なもの、でも、私は、それがあるってことを知っているわ。どうにかなるってこともね。今までもそうだったもの。あの子や春場君は、論理思考だからこういった考えが苦手だったみたいだけど。


「まあ、こんな感じかしらッ!無双流、何か適当に氷砕くやつッ!」


 気合と共に、一気に力を高める。すると、部屋が揺れ始めたわ。そして、その揺れで氷はどんどん砕かれて落ちていく。うん、こんなところね。


「え、ちょ、何だ、そりゃ。技名も適当だし。……本当に気合でどうにかしたってことか?」


 驚く深紅。あんた、いい加減に慣れなさいよ。昔も、気合で夜の魔法を破ったことがあったでしょうに。そのほかにも大体気合でどうにかしてるんだから。


「こうなったら本気でぶっ飛ばす。《霆龍の雷霆ドラゴニック・サンダー》ァアッ!」


――Thunder(サンダー)


 宝石の黄金の光が、鎧全体に伝わっていくわ。これは……雷、よね。でも、今までのどの技よりも強く感じるわ。それぞれの属性の宝石も黄金へと色を変化させていっているし。黄金の鎧と黄金の宝石は本来セットだったのかしら。


 怒号を響かせながら、迸る稲光。ふへぇ、まるでケラノウスね。こいつは、流石に素手で受けたら感電しそうだから、刀を使うしかないわね。


「無双流・双剣術……奧伝。【御雷鳥(おかなみどり)】ッ!」


 まっすぐに、時速150kmくらいで突っ込んでくる雷を、二本の刀で払うように裂く。【御雷鳥(おかなみどり)】は、本来、御金海鳥と書くけれど、故あって【御雷鳥(おかなみどり)】となった技よ。わざわざ、無双流・双剣術と言ったのも、無双流の完成形自体は二刀流が必須だったけれど、元は太刀術、棒術、剣術、双剣術、槍術、薙刀術、短剣術、魔剣術からなるもので、あの子の雪美流とも似ているけど、これには忍術や体術、魔術の要素はなく、剣と棒を基本とした間合いの違う剣術をメインにしていたものだから。んで、完成形からは消えた技だからわざわざあの頃の名前を引っ張り出してきたの。

 雷を刀で受け、その力が伝わるのを外へ払うことで逃がし、雷の通り道を作ることで、雷を裂く技なのよ。


「ふぅん、面白い技も使えたんじゃないの。それとも使えるようになった、なのかしら?」


 そんなことを呟きながら、でも、全然ダメだとも思うわね。ふむ、じゃあ、このくらいでとっとと終わらせますか。でも、この刀で無双流は無理ね。さっき雷を流したせいで結構ガタが来てるわ。無双流の振りに耐えきれない。あ、ここで言う無双流は完成版って話よ。完成版だと、刀身に魔力だの気合だのをぶちこんで混ぜてるから。


「しゃーない、無双流・太刀術……中伝。【否覡鳥(いなみこどり)】っと」


 【否覡鳥(いなみこどり)】は、伊那巫女取りと書くんだけど、【否覡鳥(いなみこどり)ってなってるのよ。取りが鳥になったのは語呂合わせのようなものだけどね。

 太刀術の中でも異質なのがこの技。伊那の巫女取りの伝承がもとになった技で、伊那……私の世界の地名だけど、そこに高名な巫女がいて久式と紺蜂と言う2つの国が彼女を奪おうとしていた。そして、戦争が起こり、多大な犠牲のもとに、巫女を攫おうとするんだけど、第三勢力の男が巫女を颯爽と奪い去っていったという話。漁夫の利みたいだけど、その攫い方が特徴的なのよ。


「ぐがっ……」


 深紅の右肩にぶっ刺さる刀。ボロ刀な上に鎧に当たった衝撃で全然ダメージが通らないからほとんど意味ないでしょうけど。致命傷どころかそんなんダメージのうちに入らんくらいよ。

 それで、昔ばなしの続き。攫った方法は、巫女の服に蹴とばした太刀で貫きとおし、そのまま遠くの山小屋に磔みたいにする。戦場をかけて、巫女の元へ行き、そのまま連れ去った、ってこと。だから、この技は、相手に向かって太刀を蹴り飛ばしてぶっ刺す技なのよ。いえ、本来の用途としては、牽制と相手の武器を弾き飛ばせたら上々って感じだけど。


「んじゃ、もう1人の私のこと、頼んだわよ。ま、あんだけチート性能なら、あんたに頼まなくても自力でどうとでもできちゃうでしょうけどね。ホント、怖いわよ。私ながらね」


 私の言葉に、深紅は最初、意味が分からなかったのか、キョトンとしたが、理解したらしく、慌てて言う。


「まさか、もう1人のお前って……」


 その言葉を最後まで聞くことなく、私は、塔からいなくなる。さて、と、この後は、どうなるのかしらね。

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