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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
304/385

304話:白羅VS血塗れ太陽SIDE.BYAKURA

SIDE.BYAKURA(With Ice Dragon)


 さてはて、どうしてこうなったのかしら。私の目には、懐かしい兄のように慕っていた人物が見えていたわ。その黒髪と黒い瞳、それが赫く染まった時、それは、その頭脳が最大まで回転しているということ。二階堂家の《赫》と呼ばれるのがその赫くなった状態よ。二階堂と言えば、三神の1人、篠宮無双の夫としても名高い二階堂(にかいどう)緋緒(ひお)が有名ね。


 この人の凄いところは、それ以外にも大量に力を持っているところにあるわ。まさに血の奇跡とでも言うべき存在なのよ。まず勝てない、てか、この人と互角に戦える人物なんているのかしら。


「ん、おお、白羅か。あの後無事だったようで何よりだな。それに【蒼紫の力場】の女と我が輩の龍(ベリオルグ)を秘めし女、久しぶりだな。お前らにとっていつ振りかは知らんが、俺にとっては、そうだな……2年ぶりと言ったところか」


 暗音ちゃんと煉巫にそう言ったわ。すると、あの時の……煉巫と暗音ちゃんが初めて会った時のように煉巫の手の甲に紋章が浮かぶ。


「久しいな、我が主が友よ。あの戦ぶりか」


 低くくぐもった龍の声。紅炎龍・ベリオルグ。その強さはかなりのものと聞いている。紅蓮の王とか言うのが戦って勝った後に、その紅蓮の王の中に宿ったとか言ってたかしら?


「その声、ベリオルグか。懐かしいな。しかし、【紅蓮の王(やつ)】はどうした?果てたか?」


 果てた……つまり死んだかってことよね。なんちゅーこと聞いてんのよ。死んでたらどうするって、まあ、おそらくこの人のことだから死んでいないのを知っていてそう聞いているのでしょうけど。


「死んではおらぬよ。今頃、異界で学生でもやっておるのではないか?呑気なものさ、妻に己の記憶と力を封じられても、【彼の物の眷属(てんし)】の夫だけあって【彼の物】の加護は十分なようだしな」


 【彼の物】の加護……ようするに神様の加護ってことよね。紅蓮の王って何者よ。天使だのなんだのって話まで出てるし。


「だろうな。噂は聞いているよ。今は【紅蓮の王】ならぬ【真紅の将軍】なんてよばれていやがることもな。しかし、力を封じていてもアレとは恐れ入るよ」


 そう言ってから、ため息をつくと同時に《赫》く染まる髪。どうやら二階堂の《赫》を発動したようね。


「おや、それはとうさ……二階堂緋緒と同じ《赫》のようですね。なるほど、天性の才、天に愛された人間と言うこと。よもや、これほどの天賦を持つ者が旦那(あなた)様やかあさ……篠宮無双のほかに居ようとは。いえ、これ、歴々の英雄以上の天賦。よもや、メダカの子が龍であろうとは誰が思いますか。いえ、メダカでは失礼過ぎるので、覇龍が神龍を生んだというのが一番しっくりきますか?」


 紳司君の連れの女の子がそんな風に言う。そして、まるでそれが何を意味しているのかを分かっているかのように、この人は笑って言った。


「俺は神龍なんて立派なものじゃないさ。そもそも、この場には、その神龍を宿したのがいるだろうしな。そのほかにも、あのシュピードの馬鹿の弟子っぽいメイドもいるし、面白い奴らだな」


 その言葉と共に、紳司君のメイドがやや警戒気味になったのと、清二の横に聖が姿を見せたわ。神龍を宿したって、まあ、ジ・エンド・オブ・ワールドのことでしょうね。あの忌々しい終焉龍。


「あら、わたしのこと?まあ、と言ってもわたしが死んだ日から会ってないから相当久しぶりになるのかな」


 まあ、そうでしょうね。基本的に誰とも会っていなかったはずだし、会う機会もなかったでしょうからね。


「はぁ……大叔母さんが、あのくっだらない龍の祭りをあたしに擦り付けないで、参加してれば会えたかも知れないわよ?」


 暗音ちゃんが肩を竦めたわ。まあ、あの主催者も元々は聖を呼ぶつもりだったって言ってたものね。


「何それ、わたしは関与してな……あ~、その辺はきっとわたしの中の龍が勝手にやったのよ。責任はそっちにあるから文句はそちらへ」


 政治家かっ?!まあ、いいわ。それにしても聖は変わらないわね。いえ、変われないのかも知れないけれど。


「聖、お前は孺子(じゅし)の頃と変わらんな」


 じゅし?聞いたことのない単語なんだけど、周りを見回しても何人かは少し分からなげだからわたしが無知ってわけじゃないわよね?


「あら、それは変わらず青二才ってことかしら?」


「おいおい、変にひねくれて取るなよ。元の意味のまま、つまり子供の時から変わってないなってことだよ」


 どうやら孺子(じゅし)には青二才とか子供とかって意味があるっぽい。てか、よくそんな言葉知ってるわね、聖。歩く図書館はやはり遺伝性なのかしら。


「あら、あなたも変わってないわ。いえ、少しだけ余裕ができたけど、その奥に悲しみもある。母の死を憂いている……と言うわけでもないでしょう?」


「まあな、あの人なら生き返るだろうし。クローンで予備作っとくとか常識はずれを平然とやってのけるからな。心配なんてしちゃいないし、憂いてもいないさ。俺の悲しみと言うのは、きっと、【鴉】のやつの件だろうな……」


 何の話かさっぱり分からんわ。聖はどうやら、会っていなかったけどそれなりにこの人のことを知っているようだったわ。


「あら、それは義妹の件、と言い換えたほうがいいんじゃないかしら?」


 聖の言葉に、流石にこの人もたじろいだわ。しかし、義妹っていうと雷璃おねえちゃんかな、黒霞お姉ちゃんかな?


「そう言えば【鴉】とあなたの義妹は同じ世界の住人だったのよね。他にも天魔の餓狼とかグビルガンとかもそうだけど」


 暗音ちゃんがそう言うけど、暗音ちゃんも詳しいのね。てか、何なのよ、青葉家って……。妙に外界のことに詳しすぎない?それも清二や王司君ならともかく、この年の暗音ちゃんがここまで詳しいのは異常だわ。


「……チッ、詳しいのがいるとやりにくいな……。まあ、いい。それで、この運命の塔とやらに導かれた俺は、ゲートキーパーとかフロアボスみたいな役割なわけだが、確か……相対する業の持ち主とだけ戦えばいいんだよな」


 流石にこの人もこの塔のことを知っているようね。まあ、そこそこ有名なものらしいし、当然なのかもしれないけど。


「ええ、そして、おそらくこの中で該当するのは、白羅でしょうね」


 暗音ちゃんが言う。まあ、そうでしょうね。あと、縁があると言えば聖くらいで、そのほか、辛うじて暗音ちゃんと煉巫だものね。同じ氷龍を宿す者としてまあ、業と認識されてもおかしくはないわ。


「ま、だろうな。あー、面倒だな……。いろいろと言われてる俺だけどさぁ……苦手なもんもあるわけでさー」


 へぇ、この人に苦手なものなんてあったのね。それで、何かしら。私が関係してるってことは、家族に手を挙げられないとかかしら。


「知ってるわよ、手加減でしょ?」


 暗音ちゃんの答えに、すんなりと頷いた。はぁ?つまり何、私は、手加減して相手しなきゃいけないくらい弱いってこと?!


「そう言うこった。シュピードの馬鹿くらい互角に殴り合えれば文句はないんだけどな……。あ~、ホント、面倒くせぇなぁ……」


 互角に殴り合えなくて悪かったわね。てか、この人と互角になぐり合える化け物がいたのね。そっちの方が驚きだわ。


「シュピードが強いってのはともかく、殴り合いだけなら互角でも、全力でやれば敵じゃないでしょ?」


 聖の言葉に、苦笑して肩を竦めていた。そうして、一通り話も済んだのか、皆が、移動を始めたわ。


「じゃあ、そろそろ行かせてもらうわよ。……殺さないように注意してあげてね?」


 聖も余計なことを言うわね。いえ、まあ、注意はしてほしいけれども!してほしいけれども!大事なことだから二回言ったわ。


「ああ、おそらく、そう時間はかからんがな。どれだけ威力を殺した一撃が撃てるか、そこだけが問題だ」


 どんだけ私のことをなめてるのよ。いえ、まあ、勝てるとは思っていないけど、それでも手加減しないと消し炭になるほど弱くはないわよ。……ないわよね?


「そう言えば……、そこの、薄ら赤髪の女……。まさかとは思うが、……いや、そんなわけがないか。すまん、なんでもない」


 秋世に話しかけた……?どうかしたのかしら、秋世は、うちの戦力でも低いっていうか、攻撃系の《古具》じゃないから、ほぼ無力なはずなんだけど。そんなのにこの人が声をかけるなんて……。

 それに、何、あの紳司君と暗音ちゃんと紳司君の御付きの子の顔は……。まるで、何かを憂いている……?いえ、どちらかと言うと懐かしんでいるようにも見える


「秋の世は、次に来る■の……毒々しくも妖しい■きの■となる、か」


 一部、声が聞こえなかったけど紳司君がそんなことを言っていた。意味は分からないし、そのまま、次の階へと進む階段へと向かっちゃったし。


「さて、と、そいじゃ、始めるとするか?」


 この人が、やる気のない声で戦闘開始を告げるのは、私が弱いからかしら。ならば、全力で当たって見返すだけってもんよ。


「――果て無き氷の奥、死をも凍り付かせる極寒、


 ――幾千もの時、幾万もの帝、遷ろいしものを見続ける華あり、


 ――其は《氷千帝華》」


 私の全力、極寒の雪地獄。さて、この人はどうするのかしら。どんな魔法でコレを打ち砕くのか、それが気になるわ。


「なるほど……いつまでも孺子(がき)じゃあねぇってことか……」


 そんなつぶやきが聞こえたわ。してやったりとばかりに笑おうとした、その瞬間に、あの人の手に現れたのは、槍か薙刀か、よくわからない武器だったわ。


「三国志くらい……流石に知ってるよなぁ……」


 そりゃあ、まあ、知ってるけれどそれがどうしたのよ。あの劉備だとか曹操だとか、関羽とか孔明とかが昔の中国でわちゃわちゃするやつでしょ?


「呂布が使っていたとされる方天画戟(ほうてんがげき)って武器だ。尤も、三国志の時代に、こんな武器があるはずもなく、後付け設定って言われてるけどな」


 そう言って、一振り、ただその武器を振るった。目の前の極寒の雪地獄が、空間ごと裂かれていくわ。……そう、私の一撃なんて、魔法を使うまでもなく……龍の力に頼ることもなく容易く消せるものなのね……。そして、その空間を裂く攻撃の衝撃が私を襲い、そこで私は気絶する。


「強くなって、龍の呪縛を断ち切ったし、王子さまも迎えに来たようだが……、まだまだだな。じゃあ、また会おうぜ。あと、龍神によろしく言っといてくれ」


 そんな声を耳にしながら。ったく、この腐れ馬鹿兄は……。でも会えてよかったよ、響兄。

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