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《神》の古具使い  作者: 桃姫
終焉編
300/385

300話:アーサーVSアーサーSIDE. Arthur

SIDE. Arthur(The King)


 わたしは、目の前の騎士を見てどうしようか考えあぐねていた。強気に出てきたはいいものの、本物のアーサー王相手に、わたしの力量がどこまで通じるか。旭日君みたいに、目覚め立てのアーサー王ならまだしも、これまで戦い抜いてきたアーサー王ともなると、わたしが勝てる相手じゃないんじゃないの?


「貴殿も、騎士と見た。剣の名は聞いたが、貴殿、名は何と言う」


 さて、名を名乗るのはどうするべきかしら。偶然にも同じ名前になったとでも解釈するんでしょうけどいいのかしらね。いえ、まあ、ここは、騎士道に則って名乗るべきでしょうから名乗るんだけどね。


「オレは、アーサー・ペンドラゴンと言う」


 わたしの名乗りを聞いて、アーサー王はどこか驚いたような顔をしていたけれど、そこまで大仰な驚きではなかったわ。意外に思った程度の驚きかたね。


「ほう、ペンドラゴンと言う称号を得たとうことは我の父同様に龍を従えたということか。しかし、アーサー、我の国では男の名なのだが、貴殿の国では違うのか?」


 いや、あんたがモデルなんだけどね。しかし、どうしたものかしらね。このまま、戦うしかないんでしょうけど。わたしは鎧も無しに剣だけだけど。まあ、機動力が上がってる分、先手を取れるって考えましょうか。ポジティブに、どうにかこれを切り抜けるわよ。


「我のことは知っていると思うが、騎士の矜持に従い名乗ろう。アーサーと言う」


 そして、槍を構えるアーサー王。わたしは、《C.E.X》を構えて、それに対峙する。ドクンと、心臓が跳ねるよう感じがしたわ。まるで、あの時のように。そう、《C.E.X》を手にしたときのようなそんな感じ。今にもあの呑気そうな神の声が聞こえてきそうね。


――呑気そうって僕、そこまで呑気でもないんだけどね


 ゾッとした。そういえば、セイジ曰く、この神は、この塔で死んだって。まさか亡霊とかそんなのかしら。割と怖いんだけど。


――さっきまで一緒に……ああ、まあ、その話はいいや。()としては、それが本物にどこまで通じるかっていうのが気になるだけだしね


 何よ、物見遊山の気分で見に来たってこと。死んだ神様も暇なのね。わたしとしては、今この状況をどうにかできる必殺技でも授けてほしいんだけど。まあ、そんなもんないって言われたらそこまででしょうけど。


――う~ん、うん、ないね。僕が君にできるのはあくまで《古具》か《聖剣》に関する自称だけだから


 あ~、自分が創ったものしかいじれないみたいなことかしら。ならしかたがないわね。本気で、剣を振るうっきゃないでしょう?


「こないのか?ならば我から行こう」


 アーサー王が槍を後ろに引いた。突撃の構えね。なら、受け流してから切りかかる!


――あ~、無理だと思うけどね


 神の言葉、無理とか勝手にいってなさいっての。わたしの横を通りすぎる槍。よし、今、このタイミングで、弾き逸らせば……


「ハァッ!!」


 なっ、このタイミングで力を入れる?!わたしは慌てて《C.E.X》を身の横で構えて足にい力を入れてふっとばないようにする。


「踏ん張りが甘いッ!」


 チッ、流石に急にあのタイミングで攻撃に合わせられなかったわね。軽く飛ばされたけど、うん、そこまでダメージはない。これなら……いける。


「セイッ、ハッ!……そこっ!」


 飛ばされた状態から立て直すことなく、隙をつくように下から切り上げて、そのまま横に薙いで、切り下ろした。ちょうど逆三角形を描くように、ね。


「なるほど、思い切りがいいようだ」


 アーサー王はセクエンスを抜いて、わたしの剣を弾く。これは……まずいかも。痺れるくらいに強い打撃。片手でこの威力とか反則でしょ。男女で差があるとはいえ、そんなレベルじゃないわよ?これが戦い続けないと生きれない時代の人間と、平和ボケした人間との差ってわけ?


「だが、威力は今一つ。だが、まだやれるだろう?」


 ったく舐めてんじゃないわ。でも、簡単に挑発に乗っても負けるでしょうね。どうしましょうか。わたしの力押しじゃあ、あの槍の特攻力と横に薙ぐ幅の広さを攻略できない。さらに間合いを詰めればセクエンスによる接近戦。ホント、隙が無いわね。


――う~ん、じゃあ、1つ知恵を与えるよ。その《聖剣》は少々特別でね、まあ、僕の力を使って生み出したんだけど、……まあ、七界に似た能力を持った子がいてね、その子は《科力》と呼ばれる力を附随していたようだけど、僕は、《古具》に近い力を付属させてるんだよ。尤も、僕が許可しないと使えないようにロックがかかってるんだけど


 じゃあ、ダメじゃない。と言うか、早くロックを解きなさい。とんだ隠し玉があったものね。でも、なんで、そんなものを……。


――あ~、ロックを解除しろって言われても、その剣はとっくに解除してあるんだよ。あの時に、ね


 あの時って、まさか、《C.E.X》になった時ってこと。ならその時にその仕組みについて行ってほしかったものよね。で、どんな力があるの?


――それは僕にも分からないんだ


 ……はい?今、なんて言ったかしら。わたしの聞き間違いじゃ分からないって言ったように聞こえたんだけど。この剣は貴方が創ったものなのよね。


――確かにね。でも、他の剣たちは僕の作った原典(オリジナル)のままなのかも知れないけど、君のそれは龍神の改良が加わっている上に、2つの《聖剣》を融合させた未知の剣だからね。僕のあずかり知らないものになっていると言っても過言じゃない……と、そろそろ、僕は引っ込まないとまずいね


 え、引っ込むの、なぜ?と言うか、本物に通じるか見るために来たんじゃなかったの?今引っ込んだら見れないわよ。


――うん、まあ、そうなんだけど、上で少々厄介な事象が起きてね。第三階層の時に近いかな。意識を分散していて説明できるほど()はできちゃいないんで、勝ったか負けたかはこの塔の後で聞くとするよ


 意識を分散?どういう意味なのかは分からないけど、この神の方にもいろいろ事情があるみたいね。でも、上の階ってことはセイジたちの方……?


「決闘の最中に考え事か、龍を統べし者(ペンドラゴン)


 チッ、考え事をさせてくれそうにはないわね。何か力があるって言っていたけれど、この《C.E.X》にそんな力があるのかしら。今まで使っていた時にそんな兆候は一切なかったんだけれど。


「少々、気合を入れるタイミングと言うものを考えていたんだよ。オレがお前を倒すためのなッ!」


 そう言いながら間合いを詰める。この剣にどんな能力が秘められているのかは分からないけど、とにかく攻撃をしながらそれを見つけ出さないと、防戦していたら押し切られるわ。


「ほう、まだ隠し玉があると見た。騎士の決闘は全てを出し尽くして行うものだ。出し惜しみはしない方がいい!尤も、我も人のことは言えないがなッ!」


――ガンッ!


 剣と槍の衝突と共に、衝撃波が広がって、周りの木々や湖面が揺れる。その時、《C.E.X》がうっすらと黄金の光を見せた様な気がした。まさか、兆候?


「ほう、いい当たりだ。心なしか、先ほどよりも威力が上がったような気がするが、本気で来たか?」


 今のは……、何が起こったのかは分からないんだけど、《C.E.X》が軽くなったような……。何なのかしら、一体。


「ならば、今度はこちらから行かせてもらう!」


 アーサー王が踏み込みながらセクエンスで、こちらに切りかかってきた。後ろによければ槍でついてくる。横によければ槍を薙ぐ。前へ進めば剣の餌食。なるほど、逃げ場がないって訳ね。でも、だからこそ、突っ込む!


「ハァッ!」


 踏み込みざまにセクエンスをからめるように弾く。運が良ければ弾かせられるかな、程度の思いでやってみたけど見事に吹っ飛んでくれたわね。地面にセクエンスが突き刺さる。


「なるほど、今ので前に踏み込んでくるか。先も言ったが思い切りは相当いいようだな」


 そう言って、アーサー王は、《聖槍・ロン》を地面に突き刺し、手から放したわ。でも、諦めてくれたって訳ではなさそうね。ってことは、さっき言っていた隠し玉ってことかしら。


「なればこそ、貴殿にはこれを見せるだけの強さがあるということだ。ゆえに、見せよう。来い、精霊よりもらいし、我が魂の剣!

 ――《聖剣・鋼を斬る者(エクスカリボール)》ッ!」


 エクスカリボール……、あれが、つまり《聖剣・エクスカリバー》。それも本物ってことよね。それは美しい金色の剣。常に黄金を身に纏い、輝き続けるその様は、アーサー王自身をあらわしているようだった。


「行くぜ、《コールブランド・エクスカリバー》ッ!」


 《C.E.X》が眩い光を放つ。これが……《C.E.X》の力、なの?まるで、黄金の光がわたしを包むように広がって……


「ほう、それが奥の手、ということか龍を統べし者(ペンドラゴン)


 アーサー王が、感嘆の声を漏らした。今、発動している力、わたしにはその名前が分かる。おそらく《古具》使い達が言う、名前が感覚で分かるというのはこういうこと何でしょうね。


「《黄金の螺旋ゴールデン・スパイラル》ッ!」


 体を包む黄金の光が、鎧と……兜、籠手、全身の武具になっていく。それらに重さはなく、逆に、体が羽のように軽い。


「行くぞ、ハァッ!」


 踏み込みと同時に黄金の斬撃が飛んでくる。それを籠手で受け止める!大丈夫、受けきれる。なら、次はこっちの一撃!


「ハァアアッ!」


 こちらも黄金の斬撃ッ!衝撃波を生みながらアーサー王に迫る。避けられないと判断したのか、わたしと同じように片手を……剣を持っていない手を斬撃に向かって突き出した。


「――《聖盾・聖母の盾船(ブリウエン)》ッ!」


 あ、あれは、ブリウエンッ!持っていないと思ったら、エクスカリボールと同じように取り出したのね!


「中々にいい一撃だった。しかし、これで終わりだ……。斬り飛ばせ、《鋼を斬る者(エクスカリボール)》ッ」


 なっ、まずい!完全に反応が遅れたわ。本気の一撃を放った疲労感とブリウエンに対する驚き、それらの虚を突かれて反応で来てないッ!


――グワァアアンッ!


 まるで耳元でシンバルを鳴らされたかのような金属を叩く騒音、それに脳が揺れて、もう……。薄れゆく意識の中、アーサー王がわたしに言ったような気がする。


「いい勝負だった。我も久々に本気を出した。ふむ、貴殿に免じ、これより、この剣は、《鋼を斬る者(エクスカリバー)》、そして、あの剣を選定の剣(コールブランド)と呼ぶことにしよう」


 ああ、神様には、本物には勝てなかったって言うしか、ない……わね……。

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